先週はこの“ゲーム業界ウィークリーリポート”がお休みでしたので、今週は2週間分合わせてお送りしたいと思います。そしてその期間中(12月25日~1月5日)最も上昇したのはKCE東京(4780)、次いで上昇したのはPCCWJ(7954)であった。両社とも特に新規材料は観測されておらず、それぞれ12月21日、12月22日に安値をつけてからの上昇であること、また出来高の増加を伴っていないことなどから、売られ過ぎによる“自律反発”であると考えることができる。一方、アルゼ(6425)やタイトー(9646)は下落した。特にアルゼは年末に悪材料が頻出し、決して良い年越しとはならなかったようだ。しかし、最も注目すべき材料は、“任天堂(7974)によるセガ(7964)の買収”である。このニュースが流れた12月27日は、株式市場に“戦慄”が走り、市場参加者の間ではそのニュースに対する“驚き”と“疑い”が交錯した。
●任天堂がセガを買収!?
「任天堂がセガを買収」。このニュースが流れた瞬間、「7964」の銘柄コードを叩く。もう既に「1054円のストップ高買い気配」(直後に売買停止)となっていた。「情報が伝わるのはこんなにも早いものなのか」情報の最先端に居座ると自負する我々が、日進月歩の高度情報化の波に取り残されたと感じる瞬間でもあった。しかし、売買停止となった銘柄をいつまでも指をくわえて見ていても何も始まらない。
ここからは、株の世界独特の“連想ゲーム”のスタートである。「任天堂がセガを買収ということは・・・」。任天堂が“4期連続赤字の企業”を背負うわけだから、“任天堂売り”という極めて単純な発想を思い付く。そこで「7974」と任天堂のコードを叩く。しかし、こちらも既に株価は下落していた。それでもメゲずに次なる“連想”を行う。「重荷となっていたセガがなくなるということは・・・」。セガの親会社である“CSK買い”という結論が導き出せる。そこでCSKの銘柄コード「9737」を叩く。しかし、こちらも、時すでに遅しである。ストップ高買い気配となっていた。
そこで、セガが筆頭株主である「トムス・エンタテインメント」やCSKが筆頭株主である「ベルシステム24」などの株価を叩く。いずれも上昇はしているが、このニュース自体の信憑性が怪しいときに、「これらの銘柄を買ってもしょうがない」という冷静な判断がようやく自分の頭の中で下される。「そうだ、良く考えてみたら任天堂がセガを買収なんて有り得ないんじゃないか?」それからしばらくして、両社の買収否定報道が発表された。
しかし、買収否定報道がなされてもCSKだけは株価が元に戻らず“ストップ高買い気配(200円高の1661円)”のままで推移している。非常に奇妙な買い物である。もし、買収が実際に行われないとするならば、このストップ高の水準を売りにいけば、着実に株価は下落し短期間で儲かるハズである。しかし、実際“買い気配”という文字を見ると自分が今行おうとする“売り”という行為自体が、相場の流れに反しており、怖じ気づいてしまう。「買収は事実だったりして・・・」と疑心暗鬼になるのである。
翌日、「買収報道は事実無根」ということから、セガ、CSK、トムス、ベルは下落。任天堂は、今年発売予定の「ゲームボーイアドバンス」や「ゲームキューブ」の販売拡大と来期前提レート1ドル=108円に対して円安が進行しているということなどから、見直し買いが入った。しかし、「火の無いところに煙は立たない」わけで、大川会長の体調不良説もあり“セガ身売り”の火種くらいは、まだ燻っているのではなかろうか。
●やはり恐怖の大王は降ってきた
西暦2000年12月27日。公正取引委員会から独占禁止法違反に当たる恐れがあるとして警告を受ける。同日、国税局から約40億円の所得隠しを指摘される。
20世紀もあとわずか5日を残すばかりとなった27日。アルゼに“恐怖の大王”が2人まとめて舞い下りてきた。公取委と国税。儲かっている成長企業にとってはこの2人が最初で最後の“恐怖の大王”なのであろう。アルゼ側は、公取委の警告に対してこう答えている。「当社は、このご指導を真摯に受け止め、お客様からの更なる信頼を頂戴できるよう、遵法精神のもと、公正な取引をもって業界の発展に寄与する所存でございます」と・・・。
つまり、指摘された「抱き合わせ販売を認めている」ということになる。しかし、国税局の指摘に対してはこう答えている。「当社としては指摘内容を不服として異議申立ての手続きを進めたいと考えています」。さらに「当社としては特に大きな問題とは考えておりません」と締めくくっており、“我関せず”の態度である。しかし、追徴課税額は重加算税を含めて約16億円に上ると見られ、避けては通れない関門となりそうだ。
だが、年が明けて新世紀に入ると、アルゼにもグッドニュースが舞い込んできた。それは、12月のゲームソフト販売(デジキューブ発表)で「パチスロアルゼ王国4」が1位に輝いたからである。しかし、なぜこんなにパチスロのソフトが売れたのだろうか。パチスロに興味がない人にとってこんな不思議なことはない。結論から言ってしまうと、現在のパチスロが技術的に非常に難しくなっている、ということなのである。言い換えると、素人と玄人の差が明確に現われるゲーム性となっているからなのである。
もう少し詳しく説明しよう。つまり、パチスロに必要な技術とは所謂“目押し”であり、要は目押しのやり方如何によって、ボーナス時に獲得する枚数に雲泥の差が付くということである。この技術を一般的に“リプレイはずし”というのだが、この「パチスロアルゼ王国4」を購入する大半の人たちが、このソフトでセッセと目押しの練習をしているのである。「単価5800円のソフトで練習し、ホールでそれ以上儲かれば良し」と考える不況大国ニッポンの庶民の私生活を描写した好例であると言えよう。
しかし、「パチスロ機の販売で儲けると同時に、ゲームソフトの販売でも儲ける。アルゼのビジネスモデルは何と素晴らしいものなのか」とひとり感動してても、やっぱり国税はやってくるのだ。
●今週の展望
先々週、思い切って取った「第2位の法則(先週の騰落率で2位だった銘柄を今週の注目銘柄にするというもの)」作戦が成功した。コナミが約4%上昇したからである。よって、今週もその流れにのって「第2位の法則」を有効に利用したいと思う。先週の第2位はPCCWJ(パシフィック・センチュリー・サイバー・ワークス・ジャパン=旧ジャレコ)であったので、よって今週はこの銘柄を注目銘柄としたい。
先週末、5日移動平均線と25日移動平均線がゴールデンクロス寸前でストップ安で引けたものの、12月22日の安値(581円)の下値サポートラインを割り込まなければ充分リバウンドが期待でき、“押し目買い”が通用する場面であると考える。出来高が少ない分、値動きが非常に良く、大幅上昇も期待できるのでは・・・。
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2001/1/9
■ゲーム関連企業リポート
・コナミ
・スクウェア
・バンダイ
|