先週のゲーム株は角川書店(9477)が大幅上昇したのに対して、翔泳社(9478)やPCCWJ(7954)、そしてKCP東京(4780)などが大きく下落した。さらに、12月20日にナスダックジャパンに新規上場を果したハドソン(4822)は、公募価格1450円に対して初値1190円と約18%安い水準で寄付き、週末には980円の大台割れの水準で取引を終了した。先週は、日経平均が一時1万3182円の年初来安値を更新するなど、全体の地合いが悪い環境のなか、ゲーム株も決して例外ではなく、29銘柄中25銘柄が下落という散々な結果となった。
●考え方ひとつで安全投資
日経平均が年初来安値を更新する最悪の環境のなか、相場に逆行して大幅上昇となったのは角川書店であった。角川書店というとそのネーミングから書籍や雑誌のイメージが先行するが、ゲームソフト(ロードス島戦記などが有名)の制作・販売や映画配給事業、そしてインターネット事業なども積極的に展開している。株価もその企業の積極的な姿勢を評価して、昨年には4万5000円の高値をつけている。
しかし、最近では2260円の年初来安値をつけるなど、9月に実施された1対2の株式分割を考慮しても、実質的な株価は約10分の1の水準になってしまっている。今回上昇のきっかけとなったのは、12月15日にクレディスイスファーストボストン証券(以下CSFB)が投資評価を「HOLD」から「STRONG BUY」に引き上げ、目標株価を3700円としたことが挙げられる。その発表を受け、翌週の月曜日、火曜日には2日連続のストップ高となり、100株単位という買いやすさも手伝って、1週間トータルでは約30%の大幅上昇となった。
また、12月18日には毎新聞社などと出資するデータ放送会社「メガポート放送(東京・千代田)」が、パソコンや携帯電話から打ち込んだメッセージを、BS(衛星放送)デジタル放送でテレビ画面に放送するサービスを開始したことが伝えられ、上昇に弾みがついた。一方、一部では今年7月に提携を発表した独メディア大手、ベルテルスマンが同社を買収する可能性を指摘する声もあり、インターネットを使った書籍販売事業が加速することも材料視された。しかし、昨今のインターネットの普及で“雑誌”そのもののが販売不振となっており、同社も「メンズウォーカー」が休刊となるなど、「追い風ばかりではない」と厳しい声も聞かれている。
ただ、同社は映画とテレビ番組を収蔵した“コンテンツライブラリー”を有しており、昨今の高まりゆくコンテンツへのニーズを評価して、CSFBではそのライブラリーの現在価値を420億円と試算している。これは、1株当たり1650円という計算となり、先週末の終値(2980円)の約55%に相当する。もし、角川書店の株を買った場合、このコンテンツライブラリーの価値分である1650円が、最低最悪時の下値メドと開き直って考えることできれば、一般的に“危険”と言われる株式投資も安心して行えるということだろうか・・・。
●CG超大作出現の可能性
コナミ(9766)の発案、みずほ証券の開発、マネックス証券(8626)による販売の「ゲームファンド ときめきメモリアル」が12月20日に募集を締め切った。ゲームコンテンツの制作に少額(最低投資額10万円)で投資できる機会を個人投資家に提供した世界で初めての金融商品である。募集上限金額は12億円であったが約7.7億円を設定し、まずまずの募集状況であったようだ。ファンドは12月21日から早速運用を開始。2つのゲームタイトルの出荷本数によって、収益の分配金額が決まる。
今回の「ゲームファンド」は、ゲーム業界全体の資金調達手段の多様化を図る目的があることや、ゲーム業界をさらに活性化し、発展させるために必要とされるクリエイティブな新規参入者が資金的に入りやすい環境をつくるひとつの手段として、将来的に有効な手段になりうるという点では非常に“画期的”である。今回、世界初のコンテンツ証券化商品の小口公募が成功を収めたことは、ある意味、新たな資金調達の可能性を飛躍的に高めたことになり、現在、制作に非常に時間やコストのかかる“コンピューターグラフィックスの超大作”を産み出す可能性を示唆していると言えよう。
「ポルシェに赤ん坊を乗せて走っているようなもの」と揶揄される現在のゲーム業界。性能抜群のハードがあっても、ソフト開発が追いつかなければ何の意味もなく、単なる“宝の持ち腐れ”に過ぎないのである。しかし、本当の成功はこの「ゲームファンドときメモ」の投資家が儲かったときであると考えられ、その動向には特に注意を払いたいものである。
●今週の展望
今週は、注目銘柄を“ある理論”に基づき選択したいと考えている。その理論とは“第2位の法則”によるものである。今回で連載も回を重ねること21回目に達しており、ある程度の経験則が生まれてきた。この“第2位の法則”の発見によって、今週からはすばらしい投資効率となることが期待される。それでは一体、第2位の法則とは何か?
それは実に簡単なことであり、「先週の上昇率第2位の銘柄を単純に買うだけのもの」である。しかし、この単純な理論にも一理あって、例えば先週の1位である角川書店ではその上昇率が30%にも達しており、短期的には多少割高感があるのである。割高な株に手を出さずに“第2位”に注目。すると、先週はコナミ(9766)となっており、その上昇率はたかだか3%止まりである。
チャートを見ても先週半ばに再び5日移動平均線、および25日移動平均線を突破して上昇トレンドに入ったと思われ、「第2位の銘柄は初動段階の株が多い」と結論づけられることから、今後の上昇が大いに見込めるのである。
よって、今週は一種のジンクスみたいなものを信じて「コナミに期待!」としてみたい。(呪文はお休み)
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/12/25
■ゲーム関連企業リポート
・コナミ
・スクウェア
・バンダイ
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