先週のゲーム株は、ティーアンドイーソフト(9611)やセタ(4670)などが上昇。一方、翔泳社(9478)やナムコ(9752)などが下落した。9月中間決算の発表もピークを過ぎ、特に波乱材料も観測されなかったことから、全体的に落ち着いた値動きをした銘柄が多く見うけられた。
●単なるリバウンド
先週の値上がり率トップはティーアンドイーソフトが獲得した。先週1週間で出来高合計が24千株と非常に薄商いではあったものの、11月末に発表された9月決算の経常損益が前期約7億円の赤字から今期7,500万円の黒字に転換したことが評価され、見直し買いが入ったようだ。第2位のセタは、11月末に発表した今期連結経常利益が、3億6,000万円の予想から3億2,000万円に下方修正したことで、12月1日には年初来安値となる310円まで下落したが、この水準では連結PERが8.5倍であるなど非常に割安感が目立ち、押し目買いを誘ったようだ。
しかし、先週1週間の出来高合計は13千株とティーアンドイーソフトよりも低水準で、特に新規材料も観測されなかったことから、株価が下げ過ぎたことによる“単なるリバウンド”との認識をして良いだろう。
●ゲーセンがなくなる!?
先週一番材料の多かった銘柄はナムコ(9752)であった。中でも、特に印象的であったのが、東京・お台場に香港をテーマにしたアミューズメント施設「南夢宮(ナムコ)電子遊戯世界東京皮蛋(ピータン)城」を開業したのに対して、都市型テーマパークである「ナムコ・ワンダーエッグ3」を閉鎖するという、アミューズメント施設の鮮やかな“新旧交代劇”を発表したことであった。ナムコの株価は先週末時点で2495円となっており、5月26日の年初来安値の2220円に接近している。先日発表された9月中間連結損益が35億円の赤字に転落したことが尾を引いているためで、事業のリストラを余儀なくされた結果が上記の交代劇に繋がっているようだ。
ただ、アミューズメント施設事業は、家庭用ゲームソフトとの競合の絡みで、環境は厳しさを増してきており、特にナムコの場合、この分野での利益水準が低いため、一層のリストラと既存店の活性化が欠かせない状況となっている。そのような環境のなか、ナムコはインターネットカフェと漫画喫茶の複合型店「インターネット空間『知・好・楽(ちこうらく)』」の出店を始めると発表した。12日に、名古屋市内に1号店をオープンし、都市部を中心に2004年3月までに70店を展開する。店内は主に、インターネットが利用できる「インターネットシート」とDVDソフト視聴席、さらに漫画本や雑誌などを閲覧できる「オアシスシート」を備えるという。
インターネットや漫画などに全く興味のない人にとっては、単なるマンガ喫茶としての認識しかないだろうが、この事業の発展性は今韓国で大ブレークしている「ネット対戦ゲーム」を例にとって考えれば、物凄い潜在需要がある分野であると確認できる。現在ゲームをプレイする空間・場所というのは、携帯型を除けば大きく分けて2つに分類される。ひとつは「家庭」であり、もうひとつは「ゲームセンター・AM施設」である。しかし、この2つの巨大市場を駆逐する可能性があるのが、ナムコの進出する「ゲーム空間」であり、21世紀はむしろこちらの方がメインとなる可能性があると考えられる。
2010年には、快適空間であるナムコの「知・好・楽」が都会を席捲し、今街中に多数存在する“ゲーセン”は姿を消しているかもしれないと勝手な未来予想図を描いて夢見ているのは私だけだろうか・・・。
●ジャレコがソフトバンクになる日
PCCWJ(旧ジャレコ・7954)が携帯電話向けコンテンツ・プロダクション「ビーファクトリー」を買収した。「ビー・ファクトリー」は携帯電話とインターネットの各プラットフォームに対応するコンテンツの開発、制作、管理を行っているバンダイグループの子会社であり、今回PCCW(パシフィック・センチュリー・サイバーワークス・ジャパン=香港のネット関連会社)がアジア太平洋地域で展開する「NOW」(ネットワーク・オブ・ザ・ワールド)事業と共に展開されるブロードバンド・モバイル・コンテンツ・サービスの拡充に向け、PCCWJが3億円(約280万ドル)出資して同社の株式を取得した。
しかし、買収などのM&Aは今回が初めてではなく、今年9月に、PCCWJは戦略の一環として資本提携など2件を発表している。ひとつ目は、世界最大手の民間気象情報会社「ウェザーニューズ」(4825、東京都港区)の株式を10万株取得したことであり、2つ目は映画関連情報会社「カミングスーン・ティービー」(東京都港区)の第3者割当増資を100株引き受けたことである。
2001年には開始される日本でのコンテンツ配信に向け、買収・提携が着実に前進しているのだが、早くも“良い効果”が現われてきている。それは、先日出資したばかりのウェザーニューズが12月25日にナスダックジャパンに上場することが決まったからである。需要予測においての株価のレンジが1300円から1600円であることから、PCCWJのウェザーニューズ株保有における資産評価額は約1億3,000万円から1億6,000万円ということになる。決して、大きな数字ではないが、今後同社がこのような企業戦略を推し進めていけば、徐々に効果が現われてくるものと推測できる。PCCWJが、ソフトバンクのような巨大持株会社になるとまでは言わないまでも、「将来大化けする可能性のある企業」として、注目しない手はないようだ。
●今週の展望
今週は再びセガ(7964)に注目してみたい。先週1週間での騰落率は下位から数えて3番目という悪い成績ではあったが、先週末にはストップ高買い気配となるなど、再び活況となってきている。12月1日時点での信用残は、売りが4,846千株(プラス2,045千株)、買いが5,212千株(プラス895千株)、倍率1.08倍と取り組みも“抜群”であり、一発高の期待が大きい。業績が悪いだけに新規の空売りも入り易く、その結果“好取組み”になるという皮肉な結果が株価を押し上げる推進力となっている。
ということで、今週も、「セガに期待!」ということで締めさせていただくが、暴騰する株を俗に“火柱が立つ”を表現することから、セガが火柱となって株式相場の牽引役となることを願って今週は以下の呪文を唱えたい。・・・「メラゾーマ!」
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動き
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/12/11
■ゲーム関連企業リポート
・コナミ
・スクウェア
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