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次の10年のテーマ?
ナノテク銘柄急騰!
[経済リポート一覧]
 材料に乏しく一進一退が続く東京株式市場で、このところナノテクノロジー(ナノテクと略される)関連銘柄が急伸し、市場の話題をさらっている。ナノテク銘柄と呼ばれ、株価にも影響が出ているのは、グンゼ産業、昭和電工、日本カーボン、ノリタケカンパニーリミテドなど。

 その中でも、特に際立った動きをしているのがグンゼ産業だ(図1)。もともとグンゼ系の繊維商社である同社の株価は3月16日に103円だったが、6営業日後の3月27日には450円まで急騰した。実に4倍以上に跳ね上がったわけだ。

 ナノテクと言ってもまだまだ一般的には知名度が低いが、ナノとは「10億分の1」を意味し、つまり10億分の1メートル単位という極めて微小な世界のなかで、物質を構成する分子や原子を自在に扱う技術の総称である。特にIT、バイオ、医療、環境、エネルギーといった分野の基盤技術として期待されている。

 もちろん、ほとんどの技術はまだ研究段階で、実用化にはほど遠いというのが現状だが、米国は今年、ナノテク関連に5億ドルもの国家予算を投入すると見られており、「米国は株式市場の次の10年をにらみ、ナノテクをITに代わる新しい主役ととらえているのではないか」(三和証券の斎藤満調査部長)との声もある。

 ここで重要なのは、日本はITでは常に米国の後塵を拝していたが、ナノテクでは遅れを取るどころか、世界をリードする技術を持っていることだ。たとえばカーボンナノチューブなど、事業化のめどがつき始めた技術もある。カーボンナノチューブとは炭素原子を円筒状につなぎあわせた新素材。導電性、熱伝導性に優れており、強度は鋼鉄以上。ディスプレイ、照明器具などに使用すると、従来のチューブより明るく、かつ消費エネルギーが少なくてすむ。もちろん用途はそれだけでなく、ガラスやコンクリートなどに混ぜると紫外線遮蔽性や強度が増す。また燃料電池のエネルギーとなる水素を貯蔵する素材としても期待されている。

 昭和電工(図2)は昨年12月、国内研究機関と共同で開発したカーボンナノチューブの量産プラントを稼働させた。グンゼ産業は3月22日、米ベンチャーと共同でカーボンナノチューブの新タイプを量産する技術を実用化したと発表した。すでに企業の製品開発用にサンプル出荷を開始している。またノリタケは、子会社の伊勢電子産業がカーボンナノチューブを活用した薄型ディスプレーの試作品を開発している。

 今、東京市場で人気を集めているナノテク銘柄は、いずれもカーボンナノチューブ関連である。ノリタケは最近の株価の動き(図3)を見る限りではあまり影響がないようにも取れるが、「ノリタケは昨年4月に日経225種の採用銘柄から外されたオールドエコノミー銘柄。その直後は400円割れまで売られたのに、今年に入ってからは700円にも迫ろうとしている。これは明らかにナノテク効果だ」(三和証券の永田昌寿アナリスト)。

 ただし日本カーボン(図4)については、「ナノテク関連の技術で先行しているわけではない。カーボン大手のなかでは一番出遅れていた銘柄だったのが、最近の円安が追い風となった。ナノテク買いの流れから思惑で買われている」(永田氏)ため、「長続きしないだろう」(同)という。

 つまり簡単に言うと、(1)いよい米国が本気になった、(2)次の10年はナノテクの時代!?、(3)日本はもともとナノテク先進国、(4)一部では事業化が進み始めている、(5)具体的な材料が昨年末から3月にかけて出た、という流れで、日本のナノテク銘柄に火がついたのである。欧米ではまだナノテクを材料に買われる銘柄はなく、株価への評価、という意味でも日本は先行しているようだ。

 では今、ナノテク銘柄は買いなのか。これについて永田氏は「ナノテクは5年後に商業ベースに乗るかどうか、という段階で、今は期待先行。これからまだまだ時間がかかるということがはっきりすれば、期待はいったんはげ落ちる。さらに買い上げていくには、明確な実体を伴うことが必要だ」と見ている。

エコノミスト編集部記者 福永 大悟

「e株net」

2001/3/30
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