コンビニ各社のeコマース関係戦略が明らかになってきた。第1は、店舗を商品受渡しや代金の決済に用いるもので、つまり「クリック&モルタル」。次に店頭に設置した端末MMK(マルチメディアキオスク)によるサービス。そしてATM設置をはじめとした金融戦略―が今のところ主なものとなる。
「クリック&モルタル」は、「セブンドリームドットコム」や「ファミマドットコム」、「ときめきドットコム」など、コンビニ各社が開設したサイトが主体となる。ただこれは一般のBtoCと同じで、商品の独自性・品揃えやサイトの使い勝手の良さがポイント。今のところセブンドリームドットコムとファミマドットコムが少し先行しているが、まだまだ充分とは言えない。
それよりもコンビニの特徴が大きく表れるのは、MMKの方だ。これは3つに分類される。セブンイ-レブン・ジャパン(8183)の「セブンナビ」、ローソン(2651)の「ロッピー」、そして5社連合の「e-TOWER」だ。5社連合とはファミリーマート(8028)、サンクスアンドアソシエイツ(7557)、サークルケイ・ジャパン(7437)、スリーエフ(7544)、ミニストップ(9946)が連合し、eコマースを中心として協力体制をとるものである。
●急がば回れ!のローソン
セブンイレブンは昨年末にセブンナビの導入を開始した。最新の機器を駆使した音楽ダウンロードとデジタルプリントは、インパクトが強い。そして旅行、ショッピング、ビデオソフトに加え、最近ではブロマイドのコピーなど次々とコンテンツを増やしている。今年度の売上目標は1,500億円とかなり強気である。
ローソンは3年も前に他社に先駆けてロッピーを導入した。その先見性は評価して良く、昨年度で400億円という売上実績もある。しかしロッピーを使ってみるとその反応が遅いのに気付く。ITの世界で3年というのはあまりにも長いのだ。
ローソンは性能で遅れをとらないよう再び資金を投じロッピーを増強する。ただ3年前の投資顎が約70億円、今度の増強は約160億円の予定だ。その負担は決して軽くない。
●ITは金食い虫?
IT化はとにかく金がかかる。例えばMMKの場合だと1台につき約200万~300万円を要すと言われている。コンビニ各社の投資負担能力はどうなっているのだろうか。この判断に良く用いられるのがキャッシュフローだ。
キャッシュフローとは簡単に言えば年間に生み出される現金のこと。特に営業活動で獲得したキャッシュフローの範囲内で、設備投資や研究開発費などが収まっていればまず問題ない。できない場合は手元流動性を取り崩すか、借入などで外部資金を調達する必要が生じるわけだ。
セブンイレブンの営業キャッシュフローは、1000億円を超える。2位のローソンになると約670億円、中位のサンクス、サークルKクラスになると100億円程度でしかない。ITでもセブンイレブンが勝ち組にもっとも近いと言われる理由がここにある。
●5社連合~新たな再編劇の始まり
ファミリーマートをはじめとしたコンビニ5社が結合したのはこのためだ。この5社連合はMMKを共有し投資負担を軽減する。投資余力に問題があった中位コンビニは、この連合によって初めてコンビニeコマースの表舞台に登場してきたのだ。
5社連合が用いる店頭端末のe-TOWERは、開発者であるトヨタ自動車(7203)のIT戦略の布石という意味もあって、格安で譲り受けている。さらにe-TOWERでは端末上部の液晶モニターを使って広告収入を獲得するなど、なりふり構わずだ。またこの5社連合は銀行と共同で「イーネット」という会社を設立し、ATM戦略についても共同戦線を採っている。
5社連合ではハードは共有されるがコンテンツは各社に委ねられる。ただ今後の情勢次第では、さらなる共同戦線も予想される。
●ローソンの切り札「ゲームボーイアドバンス」
最近インパクトの強かったのは、ローソンによる「ゲームボーイアドバンス」の先行予約だ。ロッピーで予約受付を開始したこのゲーム機は、言わずと知れた全世界で1億台販売した任天堂(7974)のゲームボーイの後継機種。そしてコンビニで「ゲームボーイアドバンス」を扱うのはローソンだけなのだ。
他のコンビニが扱う可能性はないのだろうか? ゲームに関しては、ローソンが任天堂のソフト、他のコンビニがプレステ用ソフトという構図になっている。ローソン以外のコンビニではゲームソフトの供給をデジキューブ(7589)という会社が担っているからだ。
デジキューブの親会社はスクウェア(9620)、ソフト開発・供給をめぐって任天堂と対立した企業だ。最近和解の方向に向かってはいるが、「ゲームボーイアドバンス」のような主力商品を簡単に供給するとは思えない。それに任天堂はローソンの株主でもあるのだ。コンビニeコマースもコンテンツの囲い込みが焦点となる。任天堂というコンテンツがローソンの強みとなることは間違いない。
●セブンイレブンの「財布代わり」とは
コンビニの金融戦略はどうだろうか。セブンイレブンはグループで銀行(IY銀行)を設立する。他のコンビニは何らかの形で銀行ATMを設置するだけだ。
ATMでは利用手数料が収益源となる。ただこの点で少なからず誤解されていることがある。利用手数料と言っても消費者が支払うものだけではない。例えばあなたが、A銀行のATMでB銀行の口座からお金を引き出す場合は手数料を取られている。しかし同時にA銀行はB銀行からも手数料をうけとっている。つまりATMの採算をとるには必ずしも消費者から手数料をとる必要はないのだ。
セブンイレブンは言及を避けている節があるが、自ら銀行設立する本当の狙いを推測するとATM利用手数料を無料にする公算がある。これは世間ではあまり認識されてない。IY銀行の営業開始には、まだ問題が残っているが、もしセブンイレブンのATM利用手数料がゼロ円となれば、皆さんの本当の「財布代わり」が誕生する。またしてもセブンイレブンの独走は止められなくなるだろう。
■URL
・激戦!コンビニ最前線<上>~巨額おにぎり市場の攻防
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/ note/010219.htm
・激戦!コンビニ最前線<下>~店舗縮小は業態の限界?
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/ note/010305.htm
[フィスコ提携アナリスト 松本 竜太郎]
2001/2/26
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