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激戦!コンビニ最前線<上>
~巨額おにぎり市場の攻防
[経済リポート一覧へ]

 セブン―イレブン・ジャパン(8183)がおにぎりの値下げを実施した。値下げ幅は約10円から20円で、平均約8.5%。たかが、おにぎりと侮ってはいけない。セブンイレブンで販売されるおにぎりは、年間約800億円。ファミリーレストランで言えばデニーズの年間売上高に匹敵するのだから驚きだ。皆さんはそれだけコンビニおにぎりを食べているのだ。

 しかし、なぜ値下げなのだろう。コンビニは便利さが売り物だから、スーパーやディスカウントストアが繰り広げる“価格競争”とは無縁と思われてきた。だが、巷には平日半額バーガーや値下げキャンペーン中の弁当が溢れている。これではコンビニも価格競争と無縁と言っていられないのだ。

●胃袋が広がった?
 昨年末、セブンイレブンがおにぎり値下げキャンペーンを展開したところ、売上は約10%増加した。販売数量にすると約20%の増加だ。しかし、だからと言ってわれわれの食事の量が増えたわけではない。その20%の増加分は他から売上を奪ったことを意味している。

 このような事情を踏まえると、他のコンビニもセブンイレブンの“おにぎり値下げ”を無視できないだろう。1年前にセブンイレブンがビールの値下げをした時も、主要コンビニチェーンはすぐ追随した。少なくとも、セブンイレブンに比べて「価格が高いコンビニ」と思われるのは避けねばならないからだ。

 しかし、値下げによる経営への影響が気になるところだ。単純に値下げに追随するだけだと、粗利益額の減少が避けられない。セブンイレブンの場合は、生産拠点の集約などを通じて生産・物流コストを圧縮し、粗利益を確保する予定だ。日本のコンビニ史を見れば明らかのように、この点に関してはセブンイレブンの力量は抜きん出ているのだ。

 セブンイレブン以外では、値下げに耐えられるよう今すぐ仕組みを再構築できるところは、そう多くない。実際、粗利益率を削って値下げに対応するよりほかないと言及しているコンビニチェーンもあるほどだ。

●戦略の“王道”とは
 ただ唯一の救いは、ビールの値下げと異なり、おにぎりなど米飯ものは、各コンビニのオリジナリティーが強く、競争が価格だけではないことだ。逆に言うと各コンビニは価格と商品力、両睨みの政策運営が必要となる。

 セブンイレブンの売れ筋おにぎりは、1位・直巻おむすびとり五目、2位・手巻きおにぎりシーチキン、3位・赤飯おこわおむすび―といったところだ。商品の改廃が激しいコンビニでは珍しく、根強い人気をもつものも多い。手巻きおにぎりシーチキンは、1983年以来のロングセラーだ。もちろん、コメ、具などの原材料や調理加工法は常時見直している。根強い定番商品、改良につぐ改良、コスト競争力と値下げ・・・。王道とも言えるセブンイレブンの戦略である。

 最近あるベンダーが開発したとされる“ふっくらおにぎり”。これは今後のおにぎりの主流となるかもしれない。ふっくらおにぎりとは手で握ったような食感をもつおにぎりのこと。ご飯と空気を微妙に混ぜる製造工法によるものだが、歩留まり率が改善されるというおまけまでついてきた。つまり品質向上と製造原価低減が同時に実現したのだ。

 ローソン(2651)のヒット商品、手巻きおにぎり玉子チャーハンは、この工法によるものだ。玉子とハム、青ねぎを具材としたチャーハン風のふっくらおにぎりで安定して売れている。サンクスアンドアソシエイツ(7557)も、ふっくらおにぎりに重点を置いている。従来ものより人気は高くおにぎりの中心になりつつあるようだ。

●商品開発力で攻勢に
 サークルケイ・ジャパン(7437)は、おにぎりの人気アイテムを98円で販売するキャンペーンを実施した。 サークルKはサンクスAAと持株会社による事業統合を控えているが、店舗は統一せず商品や商品開発の共有は原則見送られる。おにぎりについても戦略が異なるようだ。

 ミニストップ(9946)も値下げ派だ。ミニストップはソフトクリームなど店内加工商品に定評はあるものの、下位チェーンで商品開発力は弱い。特におにぎりなど米飯にはそれほど力が注がれている状態とは言えないだけに、少々消極的な戦略と受け取れる。

 コンビニの価格主導権は、今後もしばらくセブンイレブンが握ることになろう。それだけに値下げ追随で防戦に回るだけでなく、優れた商品を開発できるコンビニを評価したいところだ。その意味で最近のローソンの商品開発力は注目すべきであろう。新商品店舗導入率がもっとも高く、新商品に対する意気込みも強い。ダイエー(8263)の“呪縛”から開放されつつあることも好材料で、セブンイレブンを狙うダークホースのひとつと判断したい。

■URL
・セブン―イレブン・ジャパン
http://www.sej.co.jp/
・激戦!コンビニ最前線<中>~eコマース戦略の行方は
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/
note/010226.htm

・激戦!コンビニ最前線<下>~店舗縮小は業態の限界?
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/economy/
note/010305.htm

[フィスコ提携アナリスト 松本 竜太郎]

2001/2/19

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