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松井道夫・松井証券社長に聞く
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[インタビュー一覧]
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株式のオンライン(インターネット)取引でトップをひた走る松井証券。8月には信用取引売買高(株数)が、ガリバー、野村証券を抑えてトップに立つなど、証券界では“小さな巨人”の動向に注目が集まる。松井証券飛躍の契機ともなった昨年10月の株式売買委託手数料の自由化後1年の評価や、ネット取引の展望などを松井道夫社長(略歴)に聞いた。
(聞き手 池原照雄)
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松井道夫社長
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- ――売買手数料の完全自由化から丸1年が経過しました。
証券界はどう変わったのでしょう。
- 松井:米国に遅れること四半世紀で自由化されたが、同時にインターネットの急速な普及ということも重なって波が押し寄せて来るといっていた。しかし、その衝撃は予想をはるかに上回るものだった。私は自由化論者だったし、手数料は3分の1くらいまで下がると言っていたが、それどころか(個人=リテールのネット取引では)10分の1になった。
ところが、神様は意地悪で自由化前後は相場が活況を呈し、証券会社の業績も回復、自由化もネット取引も大したこと無かったよと思っている経営者は少なくない。しかし、それもつかの間、今までの伝統的なビジネスをやってきたところは、そのままだとやがて致命傷を負うことになろう。
- ――ネット取引の現状は。
- 松井:リテールのうち、まだ1割程度でしかない。だから全体でいえば手数料はほとんど下がっていないことになる。日本の10倍の個人投資家を抱える米国ではほぼ半数が、また韓国では3年前の金融危機後に大手証券がこぞってオンライン取引を積極化したことから、その比率は70%にも達している。これらの国と日本が決定的に違うのは、日本の場合、お年寄りに資産が集中し過ぎているということだ。パソコンでネットを使いこなすというのも苦手ということになる。
- ――しかし、ネットへのアクセスも容易になります。当面、リテールではどの程度まで
ネット比率は行きますか
- 松井:日本だけが特異のままではいられない。iモードなどにより、お年寄りも徐々に、ごく普通にネットを使うようになる。だから、この1年はもっと激動になろう。2001年中には50%を超えると見ている。なぜなら、ネット取引には手数料が10分の1という「実利」があるからだ。
ただ、若い層はネットに馴染んでいるからといって、ネット取引にどっと来ることはないだろう。保有資産の問題です。韓国で比率が高いのは、所得分布が日本より均一的という背景がある。
- ――ネット取引の比率が急速に増えるなかで、松井証券を含む勢力図は
どうなるのでしょう。また、大手は積極的ではありませんね。
- 松井:当社は10年かかって(店頭販売の停止など)手を打ってきた。しかし、大手は大量の営業要員を整理しないと、入ってこれない。大手の経営者にはインターネットは営業で使う電話の代わりと思っている人がいるようだが、そうでなくてネットは営業マンの代わりだ。だから、やるとすれば営業要員を切らねばならない。また、情報力で顧客を囲い込めるという人もいるが、情報がフリーなのがネットの特質であるのに分かっていない。
ネット取引の現状では当社が30%程度でトップ、あとマネックス、オリックス証券、DLJさんを合わせた4社で合計7割という寡占状態だが、この構図は当面変わらないだろう。顧客のコストを減らすインターネットは、まさに顧客本位のシステムだ。証券会社にはきついかも知れないが、これが商売であり、これに勝たないと生きていけない。
■URL
・松井証券
http://www.matsui.co.jp/
池原 照雄
2000/10/13
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