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福井俊彦・富士通総研理事長に聞く [インタビュー一覧]
福井 俊彦理事長
 IT関連を中心にした民間設備投資の好調で、ようやく自律回復の足がかりをつかんだように見える日本経済。元日銀副総裁で政府のIT戦略会議メンバーも務める福井俊彦・富士通総研理事長(略歴)に景気の行方などを聞いた。

(聞き手 池原照雄)



――国内景気の現状をどう分析していますか。

福井:流動性の罠(わな)、つまり金利を極端に下げてもデフレ期待があるため、企業の投資につながらないという悪い局面からは、ようやく脱却して着実な回復過程に入ったと見ている。企業自身も過剰債務の圧縮など、投資のための環境整備にも取り組んできた。民間設備投資が先導する形での回復となりつつある。しかも、(情報関連など)イノベーションが先導する形なので、日本にとっては好ましい。設備投資の回復は、IT関連だけでなく素材産業などに広がりを見せているのもよい材料だ。

――回復への阻害要因は。

福井:回復過程といっても、そんなにスクスク成長するわけではない。企業の体質改善は道半ばで、設備、雇用、借金という3つの過剰の解消にまだ取り組んでいる最中だ。一方、グローバル市場での競争のなかで、コスト切り下げという課題もある。国全体としても、規制緩和で高コスト体質を改めようとしているが、これからの最大のコスト高要因として政府の借金がある。(経済再生への)条件はいっぱいある。

――つまり、財政再建途上で長期金利の上昇や増税などコスト高要因をはらむということ
   ですね。国の経済運営も、企業の経営も難しくなる。

福井:一番重要なのは(政府も企業も)資源を集中して投資することだ。日本の生産性、を高めるためにお金を有効に使うということ。企業にとって(増税などにより)外部効果が低いとなれば、投資もしなくなる。そうでなく、企業収益が回復して国の税収も上がる、それで過去の借金も返済できるという好循環の糸口をつくることだ。そのためには、資源の集中が必要となる。

――集中ということではITというテーマもありますが、政府のIT戦略会議の議論も踏まえ、
   どう舵を取るべきでしょう。

福井:戦略会議は、メンバーが共通認識をもつための論議をする場ではなく、会議の名称のとおり、すでに戦略に沿って実行を練る会議となっている。通信インフラの整備や電子政府など、実行の対象も非常にクリアになっている。ただ、各省庁がみんな光ファイバーを引くというようなアイデアでは困る。ここでも集中してお金を使う仕組みが大事だ。  IT革命ということでは、米国というテキストがある。1995年にインターネットが爆発して5年の歴史をもっている。(米国の成功は)やはり、低コストの市場には資源がシフトしていくというマーケットメカニズムを基本にしたことだろう。ネットの普及は、米国の経済や社会の変革のプレッシャーとなったが、日本でもすでに同じことが浸透し始めている。

池原照雄
2000/09/06
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