IT関連分野の好調に支えられ、辛うじて「緩やかな上昇傾向」という基調が堅持されている―。30日発表された7月の鉱工業生産動向は、依然、景気の本格回復に向けITしか頼るものがない日本経済の弱々しい実態を改めて印象づけた。
鉱工業生産指数は、景気の先行きを占う上で不可欠な経済指標。しかも、日銀がゼロ金利政策を解除した直後の発表だけに、今回の発表が注目されていたが、結果(前月比▼0.7%)は市場の予想を裏切り、3カ月ぶりのマイナスとなった。
●マイナスの要因は「反動減」
マイナスの背景について通産省は、「前月実績の反動という要素が大きい」と強調する。たしかに、7月統計で低下した主な業種である建設機械などの「一般機械」(▼6.6%)、自動車をはじめとする「輸送機械」(▼3.5%)、アルミサッシなどの「金属製品工業」(▼2.6%)は、6月統計ではそれぞれ5.9%、6.9%、1.7%の上昇と、正反対の状況だった。これら反動減の影響さえなければ、プラス基調を継続できたのは事実だろう。
しかし、これらの業種は、6月と7月の対比に限らず、かねてから浮沈を繰り返す不安定な状況を続けている。かたや、7月統計で大幅に上昇した「化学工業」(+4.9%)にしても、6月統計では▼0.8%となっており、7月が良かったからといって今後の動向に全幅の信頼を寄せるわけにはいかない。
にもかかわらず、通産省が7月も「鉱工業生産は緩やかな上昇基調にある」との判断を継続できたのは、ひとえに好調なIT関連産業が他の業種を引っ張るというベースが崩れていないからだ。
●高水準で推移する「電気機械工業」
携帯電話やパソコンなどのIT関連産業が含まれている「電気機械工業」は7月統計でも+1.1%(138.2)と好調を維持。指数が100を下回る業種が多い中にあって水準の高さが際立っている。
一方、8月の製造工業生産予測指数は、+3.9%と大幅な上昇が見込まれているが、これについても「電気機械工業」(+8.6%)の寄与度が大きい。ITという”新型エンジン”ひとつに頼った鉱工業生産活動の動向は今しばらく変わりそうにない。
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・7月の鉱工業生産0.7%低下~買い材料にならず
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/08/30/doc280.htm
■関連URL
・通産省
http://www.miti.go.jp/
野崎 英二
2000/08/30
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