先週のゲーム株は、株式相場全体がお盆休みで市場参加者が少なく閑散の商いのなか、総じて軟調に推移した。個別銘柄を見ても、特に材料らしいものも見当たらず株価は先々週の流れを引き継ぐ展開となった。特に、他のゲーム株が軒並み下落するなか先々週に買収が報じられたジャレコ(7954)だけが大幅高となり、値動きの良いものや話題性のある銘柄にだけ資金が集中するというかたちとなった。
一方、8/26に発売されるエニックス(9684)の「ドラゴンクエストVII」は株式市場ではあまり材料視されていないようであり、また、一部の外資系証券会社が株価目標を7500円から9500円に設定している角川書店(9477)などはワーストパフォーマンスとなった。これは閑散相場のなかでも市場参加者による銘柄選好がはっきり現れた結果と解釈できる。いずれにしても、これから秋から冬にかけてゲーム業界が再編されるような大きな動きも予想されるため、「嵐の前の静けさ」のようにも感じられた1週間だった。
●値上がり率“NO.1”
先週1番上昇率が高かったのはやはりジャレコだった。香港のネット関連企業PCCW(パシフィック・センチュリー・サイバー・ワークス)と資本・業務提携することで合意したことは先週お伝えした通りであるが、他のゲーム株が軒並み下落するなかでの上昇だけに特に目立つ動きとなった。8/17には1240円の年初来高値を付ける場面もあったが、先週末(8/18)終値では950円となり、8月初旬の本格的な上昇開始以来、実に120%以上の上昇となった。それだけ、同社の手掛けるNOW(Network of the World)事業に対する期待が大きいことが伺える。
●任天堂はどこと手を組むのか?
先週、任天堂(7974)は堅調に推移した。その最も大きな理由は8/24に予定されている新製品発表説明会への”期待感”で買われたことであろう。具体的にはゲームボーイの次世代機「ゲームボーイアドバンス(GBA)」とその携帯電話用接続機器である「モバイルシステムGB」、そして次世代家庭用ゲーム機「ドルフィン」の主力3商品の”中身”に対する期待であると考えられる。
現時点ではその実体(性能や価格等)はほとんどベールに包まれており、発売を待ち望んでいるユーザーの気持ちをヤキモキさせているのが現状である。任天堂は他のゲーム機メーカーと違い、いまだオンライン事業に関する戦略を明確にはしておらず、それがかえって「他社との提携」や「インターネット事業へのコンセプト発表」といったプラス材料の思惑を呼び、期待が膨らむという結果となっているのだろう。
しかし、実際にゲームボーイアドバンスやドルフィンが発売された場合に任天堂の収益に対してどのような影響があるのだろうか。一部の専門家は次のような予想をしている。「ゲーム機本体の販売は低採算事業であり、収益は高採算事業のゲームソフトの販売に依存している。つまり、例えゲームボーイアドバンスが発売されようと、ドルフィンが発売されようとその”関連ソフトの販売量”によって収益が大きく左右される」と。
ということは、インターネットに接続可能なゲームボーイアドバンスやドルフィンを武器にしてインターネット事業に関するパートナーを明確にすることが出来れば、ソフトの売上げも期待でき、同社の飛躍的な発展は保証されたものであると考えることが出来るのである。そして、任天堂は8/25(金)から8/27(日)の3日間、幕張メッセで「NINTENDO SPACEWORLD 2000」を開催する。そこでは、ゲームボーイアドバンスの体験コーナーなどが設置され、無料で発売前のゲームを体験することができるという。ここでいかにユーザーの気持ちを捉えることが出来るかが今後の焦点となりそうだ。
●新しいゲーム株誕生!
8/29に店頭市場にKCET(旧コナミエンタテインメント東京)が登場する。同社は85%の株式をコナミ(9766)が保有する完全なるコナミの子会社であり、「ときめきメモリアル」や「幻想水滸伝」などが代表作として有名である。現在「プレステ2」向けに、フルCGを使ったタイムパラドックスアドベンチャーゲーム「shadow of Memories」を制作中であり、さらに任天堂が12月に発売を予定しているゲームボーイアドバンスにもソフトを供給する予定である。
また、同社はコナミの子会社ではKCEO(旧コナミエンタテインメント大阪、4729)に続き2番目の株式公開となっており、さらに来年にはKCEジャパンが公開を予定している。コナミグループの戦略としてこの子会社の株式公開というのは大きなウェイトを占めていて、KCETの株式公開の成功=コナミの成功という図式が成り立っている。KECOを含めてKCETの株価動向が今後のコナミグループの明暗を左右するといっても過言ではないのである。
●今週の展望
今週は任天堂の動きに注目したい。出来れば短期的ではなく中長期的に動向を見守りたい。なぜならば、やはり今後最大の焦点となるのは「提携相手はどこなのか?」ということに絞られるからである。例えばどこかと提携したことによって、ゲームボーイアドバンスによる「キャラクターのダウンロードの回数に応じた料金体系」というようなシステムをもし構築できたならば、巨大なビジネスに発展するのは間違いないだろう。しかもポケモンやマリオといった人気キャラクターを有している同社にとっては最も適した事業であることからも、将来の大変貌銘柄の候補として「今」の任天堂に注目したい。
□関連表
・ゲーム各社騰落率
・ゲーム各社先週の動きはお休みです
◆「ゲームに投資」は毎週月曜日に更新します。
フィスコ アナリスト 黒岩 泰
2000/08/22
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