【今週の主な政治日程】
▼26日(月)2001年度予算成立
▼29日(木)衆院選挙区画定審議会
▼30日(金)2月の完全失業率、有効求人倍率発表
【政局の焦点】
●大混乱なら「森続投」も
政局の焦点は、日米、日ロ両首脳会談も終わり、森喜朗首相の正式退陣表明を待つばかりとなった。しかし、後継首相の最有力候補だった野中広務前幹事長と小泉純一郎元厚相の2人がいずれも出馬しない可能性が急浮上、後継争いはますます渾沌としてきた。野中、小泉両氏が出ないとなると、橋本龍太郎元首相や麻生太郎財政担当相ら「第3の候補」の擁立が模索されることになるが、後継選びが混乱した結果、半ば時間切れの形で野中氏が再浮上してくる可能性も否定できない。また一部では、株価がこのまま持ち直し、後継も決まらなかった場合、そのまま森首相が続投するのではないかという冗談のような見方までささやかれている。
●派内の支持得られない野中、小泉両氏
野中、小泉両氏の不出馬説は、橋本派幹部の青木幹雄参院幹事長が「2人ともやる気がないんだから、そんなことになるはずがない」と漏らしたことで一気に現実味を帯びてきた。森首相も周辺に「小泉は出ない。野中もない。青木が嫌だから」と言明、この情報の信ぴょう性を裏付けた。野中氏は、青木氏をはじめ橋本派幹部の支持を得られなかったことが最大の失敗。青木氏らが高齢の野中氏では参院選に勝てないと判断、同選挙敗北の責任を橋本派が取らされることを極度に嫌ったとみられる。小泉氏も派閥横断的に若手の間には待望論があるものの、森派幹部は一様に小泉氏の出馬に難色。橋本派が強く反対する郵政3事業民営化を掲げて参院選に負ければ、森派が非主流派に追いやられることを懸念したためとみられる。
●平沼、高村、野田3氏は脱落
「第3の候補」としては前述の橋本、麻生両氏のほか、平沼赳夫経済産業相、高村正彦法相、堀内光雄元通産相、野田聖子副幹事長らの名前が挙がっている。このうち平沼氏は、所属する江藤・亀井派の中から亀井静香政調会長を擁立する声が上がっており、同一派閥から2人の出馬は不可能。高村氏も外相、外務政務次官としての経歴が外務省機密費事件に災いし脱落。野田氏は扇千景保守党党首と同じく、女性候補のいわば、彩りとして取りざたされただけの可能性大。
●麻生氏には「未知数」の期待感
残る橋本、麻生、堀内3氏のうち、橋本氏は首相経験もあり、今回のような緊急事態には適任だが、3年前の参院選で破れ退陣した記憶が生々しく、また現在の不況の原因と目されていることがどう評価されるかが最大のポイント。一時期、永田町で急激に盛り上がった堀内氏待望論は現在では沈静化。経営者としての手腕が高く評価されるものの、地味すぎて参院選の顔にはならないとの評がもっぱらだ。麻生氏は血筋はいいものの、ガラッ八的直言居士の部分が内外でどう受け止められるか。行政手腕にも未知数の部分が残されている。ただ同じグループの河野洋平外相が機密費問題で総裁レースから完全に脱落したことは麻生氏にとって好材料。
●なおも消えない「最後は野中氏」
こうした中で「最終的にはやはり野中氏」との見方が消えないのは、第1に、新総裁の選出方法がまだ確定しておらず、その決定権限は野中氏の腹心の古賀誠幹事長が握っている。第2に、都道府県連票が1票から3票へと拡大しても、橋本派のほか、堀内派の支援も受けられる野中氏が有利。第3に、亀井静香政調会長が「今回は野中氏。9月の総裁選では亀井氏」との密約を野中氏と交わしたとみられる。第4に、連立のパートナーの公明、保守両党と創価学会が依然、野中氏を支持しているーことなどが挙げられる。
野中氏の総裁選出馬に対する意欲について、加藤紘一元幹事長は「非常にある」、小沢一郎自由党党首も「一生懸命(根回しを)やっている」と、野中氏が最初で最後のチャンスをそう簡単にはあきらめていないとの見方。ただ小沢氏は、野中氏の「裏に回って脅す手口に皆怒っている」と、投票になった場合、予想外に票は集まらないとみている。
●与党は参院選で「歴史的敗北」か
ところで7月の参院選は27ある1人区での勝ち負けが全体の勝敗を決する。このうち野党間で選挙協力が成立したのは19選挙区に上っており、野党勝利の可能性が大きくなってきた。自公保の与党3党は改選議席76のうち64取れば、過半数を確保できる。しかし現在の状況では、自民党は参院に比例代表制が導入されて以来最低だった1989年の36も下回り、35程度に止まる可能性がある。その場合、公保両党を合わせても46議席と過半数を18も下回る歴史的敗北となる。
25日に行われた保守王国・千葉県知事選で無党派候補が長野、栃木両県知事選に続いて勝利したことで、自民党など与党への逆風がさらに強まった。参院選に先立つ東京都議選では、自民党候補が全員脱党するのではないかとの情報が繰り返し流れている。また、参院選でも自民党の支持率がこのまま回復しない場合、党公認を返上する候補が出てくる可能性がある。
●「石原新党」が一大旋風巻き起こすか
参院選で与党が大幅過半数割れの事態となれば、参院では重要法案が全く通らず、閣僚は常に問責決議案可決の恐怖にさらされる。このため、民意を改めて問うため、年内の衆院解散・総選挙実施の可能性がぐんと高まる。もちろんその場合でも、与党がばん回する見込みは少なく、民主党を主軸とした連立政権に移行する可能性が高い。さらに踏み込んでいえば、「新しい保守の結集」を目指して自民党が分裂、これに誘発されて民主党も分裂、新党が結成される可能性がある。つまり政界再編である。その場合、石原慎太郎都知事を党首とする「石原新党」がどういう状況にあるのかがキーファクター。一大旋風を巻き起こしている可能性は十分あると言ってよい。
[政治アナリスト 北 光一]
FINANCE Watchでの掲載は、今回で終了となります。ご愛読有難うございました。(編集部)
2001/03/26
09:45
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