情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●止まらない…止まらない株安
株安に歯止めがかからない。12日、東京市場の平均株価がバブル崩壊後安値を更新したのに続き、アジア市場もほぼ全面安の展開。ニューヨーク市場でも、米店頭市場ナスダックの総合指数が取引開始と同時に2年3カ月ぶりに2000の大台を割り込み、「株安連鎖に歯止めがかからない世界同時株安の様相を見せてきた」(東京)。
株安を招いている米国経済の減速は、輸出や生産活動の鈍化という形で日本企業を直撃。「企業収益の改善→設備投資増加→賃金上昇→消費喚起」という景気回復シナリオに黄信号が点滅、信号が既に赤(景気失速)に変わったと指摘する向きもある。
螺旋階段を転げ落ちるように株安の連鎖が続けば、「世界同時不況」の恐怖が現実のものとなる。ナスダック指数の2000割れを、毎日、産経、東京がトップで報じている。
◇景色は急に変わったのだろうか。日経によれば、全上場企業の2001年3月期の連結経常利益予想は前期比24.5%増。IT関連企業の好調が企業業績を牽引した。
が、それも昨年末まで。今年に入り、米景気の減速やアジア向け輸出の変調などを背景にIT関連企業の伸びが鈍化しており、2002年3月期の業績予想は単独ベースで7.7%増、連結でも収益の拡大ペースが鈍化する見通し。
IT頼みの企業収益回復シナリオが揺らぎ始めている。それでもなお、増益基調は維持される見通しだが、米景気の回復が遅れれば、「来期シナリオが揺らぐ」可能性も。寒の戻りが堪える。体力が落ちてきたのだろうか。
◇10日の自民党5役との会談で退陣を事実上表明した(ことになっている)森喜朗首相。しかし、12日の参院予算委員会では「辞意表明ではない」と否定、自民党総裁選の前倒しを指示したからといって「事実上の退陣表明」にはあたらないと釈明した。この理屈ははたして成り立つのだろうか?
読売によれば、4月に行われる総裁選について自民党が、「新総裁の任期は森首相・総裁の残任期間の9月までとし、その段階で改めて党員・党友投票を加えた総裁選を実施するとの方針を固めた」という。読売の記事は、国会議員と地方県連代表だけの“臨時選挙”と、党員・党友を加えた正式の選挙と、総裁選が2度行われるということしか書かれていない。
これに対し朝日(3面)は、森首相の総裁選前倒し指示が<やっぱり辞任前提>と報道。自民党執行部がこれまで、「秋の総裁選を繰り上げ実施する」とだけ説明してきたのは、「首脳退陣を当面あいまいにしておく目的だった」と断じている。
あまりにも姑息。自民党は国民だけでなく、身内の自民党員までをも欺いたことになる。これで党大会はまるく収まるのだろうか。
◇朝日のトップ記事は司法制度改革。「参審制」の導入で裁判官と一緒に審理に加わる市民を「裁判員」と名付け、その権限を裁判官と同等にすることになるらしい。
【経済】
●デフレに突入した日本経済
「“気の抜けた”プラス」(朝日)、「10~12月期あだ花か」(毎日)
前期比プラス0.8%、年率換算で3.2%成長となった昨年10~12月期の実質GDPについて11日の朝日と毎日夕刊はこう論評。他紙も厳しい見方を示している。
個人消費が4期ぶりにマイナスに転じ、唯一頼りにしていた設備投資も今年に入って減速の兆しが出てきた。前述したように、政府の景気回復シナリオが揺らぎ、足元が崩れ始めている。そんな時に、「過去」に浮かれても何の意味もないではないか、というわけだ。
名目成長率はプラス0.2%。実質成長率を大きく下回っているのだから、「日本経済は深刻なデフレ状態にある」(読売)。
良かったのは年末まで。1月以降の経済指標が軒並み悪化しており、「早くも2001年度の政府経済見通し(1.7%成長)の下方修正が視野に入りつつある」(毎日)。
きょうの各紙経済面もGDP一色である。
◇日本政府の「デフレ」の定義は、「物価下落を伴った景気後退」。ところが、国際機関や欧米の経済学の教科書は、デフレを「2年以上の継続的な物価下落」と定義づけている。
ならば、日本も欧米に合わせる形で定義を改めようと、内閣府が16日の月例経済報告閣僚会議に新しいデフレの定義を報告、関係閣僚に周知徹底することになった(朝日、東京)。
新定義は、「物価下落が2年以上継続している状態」。もうお分かりと思うが、日本の消費者物価は1999年、2000年と2年連続で下落しており、経済の現状は「デフレ」ということになる。今さらの感もあるが、政府が現状をデフレと公式に認めたことで、追加的な金融緩和を求める声が一段と高まることが予想される。
【トピック】
●付ける薬がない
前述したように12日の参院予算委員会は、森首相の「事実上の退陣表明」を巡って審議が紛糾、野党側は首相に「即時退陣要求」を突きつけた。が、当の首相は、強烈な逆風をものともせず、言葉には言葉で言い返した。
意気消沈かと思われたのだが、予想外に元気なのである。が、その元気さが災いして、「私はガード下から拾われてきた赤ん坊じゃない」と口を滑らせた。やっぱり、この人には付ける薬がないようだ。
◇アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンが、予告通りバーミヤン石窟の大石仏を破壊した。その時の模様を伝えるCNNの映像を、朝日、産経、東京が1面に転載している。
イスラム社会も加わった国際的な批判の声を無視した暴挙。タリバンにもまた、付ける薬がない。
[メディア批評家 増山 広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm
2001/03/13
09:16
|