情報は時とともに劣化する・・・
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●「200%有り得ない」ことが現実に?
もはや泥舟と分かっていながらも、森喜朗首相とともに「森降ろし」に抵抗していた自民党森派の幹部が、「表明は1日でも早い方がいい」と方向転換(読売)。「4月退陣、総裁選実施」(毎日)の流れが固まった。
「ポスト森」の最有力候補は、「私如きが総理総裁にということは200%有り得ない」と擁立論を牽制?してきた自民党の野中広務前幹事長(東京)。来る総裁選で自民党執行部は、地方票を大幅に増やし、「開かれた政党というイメージアップを図る」(産経)という。
一方、こっちは本人が「やった」と、とっくに観念しているにもかかわらず、なかなか後ろに手が回らずにいた外務省の元室長について、東京地検が「9日にも強制捜査に着手する方針を固めた」(朝日)。「山」がようやく動きだした。
◇誰の目からみても、森首相の退陣は時間の問題だが、本人が「辞める」と言いださない限り、進退問題は前に進まない。どこの組織でも一緒だが、トップの指導力に問題があっても、力ずくで引きずり下ろすのは容易なことではない。
が、首相とは運命共同体の森派が「森降ろし」に傾けば、帰趨は見えてくる。読売によれば、週内にも辞意表明が行われるという。
となると、次は、後継首相(自民党総裁)の選出に焦点が移る。
「年なんだからこそ、命を賭けなさい」。7日夜、野中氏と会談した保守党の扇千景党首は、こう言って野中氏の背中を押したという。当の野中氏は?
「明確に否定しなかったことが分かり、自民党や公明党内でも『野中氏擁立論』が広がった」と東京が報じている。が、野中氏は「200%有り得ない」と言ってたはず。やっぱりこの御仁、稀代の変節漢だったのか。
ともあれ、自壊が進んでいることを自覚できない自民党執行部は、「野中後継」を軸に調整に入る。地方組織や若手議員が「若い人を」と声を枯らしても、腐敗した執行部の耳には届かない。
権力必腐。いずこも同じだが、建設的な批判に耳を傾けることができなくなったら、トップを代えても組織の活性化は望むべくもない。その末路は「崩壊」だが、権力への妄執は信じられないようなパワーを生む。あな恐ろしや。
◇機密費をネコババしていた外務省の松尾克俊「元室長」が、ようやく“御用”となる。
が、元室長の逮捕は事件解明の出発点。国会で追及しきれなかった官邸への上納問題や、外務省内での流用などの実態解明がどこまで進むか。と、今後の捜査の進展に注目したいところだが、解明は期待薄か。
◇松下電器産業(6752)と三菱電機(6503)が、鋼板の調達先の大幅な絞り込みに乗り出した、と日経が報じている。
【経済】
●「破局」と叫んだ「平成の是清」
8日の参院予算委員会で「わが国の財政はいま破局に近い状況だ」と答弁した宮沢喜一財務相。「今度こそ言葉の辻褄合わせでなく、これからの10年なり20年、健全な経済社会が営める(財政再建)案を作らなければならない」と補足したが、市場は「破局」に反応、円相場は1年8カ月ぶりの120円台に。速水優日銀総裁の円安容認?発言で形成された円安の流れを「平成の高橋是清」が加速する形となった。答弁の真意は?
「そうなっては困るということを言ったのだと思いますよ」。財政再建路線への転換と受け止められることを懸念する福田康夫官房長官が「火消し」(朝日)に努めたが、「是清」が今の時点でそんなことを考えているなんて誰も思ってない。森内閣の“経済評論家”として、一般的な認識を口にしたに過ぎないのだから。
ところで、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が先日、日本の長期国債を最高水準の「AAA」から「AAプラス」に1ランク格下げした際、宮沢氏は「間違っているんじゃないか」とコメント。強い不快感を表明したが、宮沢サンのコメントの方が間違っているんじゃないか。だって、財政は「破局に近い」と言ったでしょ。
◇株安と不良債権の最終処理のダブルパンチで決算対策に頭を抱える銀行界。国債や不動産の売却などで何とかしのぎ、「3月危機」は克服できそうだが、9月中間期では「時価会計」の本格導入が経営を直撃する。
朝日・経済面「日本経済『危機』の実相」のきょうの見出しは、<「3月危機」越えても「9月危機」>
【トピック】
●信頼回復のハードルは高い
「国家公務員法の守秘義務違反には当たらないが、国民への信頼を失墜させた責任は免れない」
妻に脅迫の嫌疑がかかっている地裁判事に捜査情報を漏らした福岡地検の山下永寿検事の処分は、国家公務員法上の懲戒処分としては2番目に重い「停職」となる見通し。山下検事は、不起訴と停職処分が決まった時点で依願退職を申し出、民間人からみれば過分な退職金を受け取って弁護士にでもなるつもりだろう。
が、この処分はどう考えても納得できない。仮に守秘義務違反に当たらないとしても、結果的に犯罪の隠蔽工作に加担した“罪”は、懲戒処分としては最も重い「罷免=クビ」に相当する。退職金も、当然のことながら没収。追放されてしかるべきである。
しかし、検察権力におもねる社会部ジャーナリズムに検察批判を期待するのは無理。やたらと「正義」を振りかざす社会部の記者たちも、相手が検察となるとからっきし意気地がない。そうまでしてネタが欲しいのか!
◇1万円札(日銀券)の原価は20円。子供の遊び道具(子供銀行)にしかならないが、日銀の門から外に出た途端に1万円の価値を持つ。
その価値を与えているのが日銀、つまり中央銀行の信用力。私たちが日銀を信用できなくなったら、1万円札の価値は暴落し、コーヒー1杯分にもならないことは、理論的にはあり得る。通貨価値の維持は、中央銀行にとって最も重要な使命で、「通貨の番人」と呼ばれる所以がここにある。
前置きが長くなったが、通貨価値の維持を使命とする日銀の職員が未だに、給与を現金で受け取っていることはあまり知られていない。給与の口座振り込みが定着して20年以上も経つのに、日銀は創業以来の伝統を頑なに守り続けてきた。
その日銀が、来年から口座振り込み方式に切り換えることになった。理由は、「昨年秋から2,000円札普及のため給与の一部を2,000円札で支給・・・、『現金を持ち歩くのは物騒』などの声が出て」(日経)きたためという。
時代遅れが理由ではなく、がさばるから、とは。日銀の内部改革が思うように進まないワケがなんとなく分かってきたゾ。
[メディア批評家 増山 広朗]
※12日(月)は新聞休刊日のため、このコラムは休載します。
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/03.htm
2001/03/09
09:48
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