金融庁は4月から、自己資本規制比率の算定方法を厳格化する。証券会社の経営健全化を進めるのが狙い。証券監督者国際機構(IOSCO)の基準を採用することで、国際的に遅れている、日本の証券会社のリスク管理の適正化を図る。新基準導入を機に、「外部監査すら入れていない、経営が不健全な中小証券の淘汰」(同庁中堅幹部)も進める考えだ。
●株含み益の算入に制限
証券会社の自己資本規制比率は、市場動向に経営を左右されやすい証券会社が、リスクに見合った自己資本を確保しているかを示す指標。分母にリスク相当額、分子に固定化されていない自己資本を当てはめて算出する。「早期警戒水準」である140%を割り込むと、金融庁への報告が義務づけられ、120%割れだと業務改善命令、100%を割り込めば3カ月以下の業務停止命令か登録取り消し命令を受ける。
今回の新基準では、「分母」について、市場リスク相当額が厳格に算出されるよう改定したほか、「分子」では「従来、100%算入を認めていた持ち合い株などの含み益の算入比率を60%に下げる」「劣後ローンの算入額に制限を加える」―ことを盛り込んだ。
新基準は今年4月から適用されるため、4半期決算を導入している大手証券などは、4-6月期決算から新基準を反映させる必要がある。ただ、一部項目では中小証券に配慮した経過期間が設けられるため、非上場も含めたすべての証券会社に、新基準が完全適用されるのは今年9月中間決算からとなる。
●“警戒水域”に入る証券も
自己資本規制の厳格化は、株価低迷による売買手数料減少に悩む証券会社を、一段と厳しい経営環境に追い込む。上場証券各社は、手数料収入の減少などから、2000年4-12月決算で軒並み減収減益に陥った。現状では、新基準を当てはめても、140%を下回る証券会社はないもようだが、市況低迷が長引けば、警戒水域に入るところが出てきそうだ。
4月からは、顧客資産と自己資産を区別する「分別管理」を怠った証券会社が破綻した場合、顧客資産の補償額に上限が設定される。このため、顧客による証券会社の選別が一層厳しくなるとみられ、中小証券は、手数料頼みの収益構造の改善やリスク管理体制の見直しを迫られている。
■URL
・証券会社の自己資本規制に関する内閣府令等の改正案(金融庁)
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/syouken/f-20010221-2.html
・本格化する中小証券の淘汰~相場低迷などで収益急減
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/02/14/doc1986.htm
(小城高雄)
2001/02/26
16:52
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