【今週の主な政治日程】
▼26日(月) 額賀福志郎氏に関する衆院政治倫理審査会
▼28日(水) 参院予算委で村上正邦元労相の証人喚問
▼3月2日(金)2001年度予算案衆院通過(予定)
【政局の焦点】
●自民党大会は新総裁で
政局最大の焦点となっている森喜朗首相の進退問題は、今週3月2日に予定される2001年度予算案の衆院通過後、同13日の自民党大会までの間に、首相の退陣表明がある見通しが強まってきた。党大会で参院選候補者を紹介する際、森総裁(首相)が激励のあいさつをすれば、同じ総裁の下で選挙を戦わなければならないためで、党大会で採択される運動方針案からも「森総裁」の名前が削除されている。野党の内閣不信任決議案の提出時期や森首相が退陣にあくまで抵抗した場合は、不測の事態も考えられる。しかし首相が権力を維持するための外堀は既に埋められており、最終的には森首相もこれを受け入れざるを得ないものとみられる。
●村上氏は喚問直後に逮捕か
首相退陣をめぐっては、内閣支持率や株価などいくつかのメルクマールがあるが、森内閣の支持率は各種調査とも軒並み既に危険水域の10%を割り込んでおり、日本TVやフジTVなどの民放調査は歴代内閣最低の5%台を記録している。また東証平均株価は先週、バブル崩壊後最安値を一時更新しており、企業の3月期決算を控え上げ材料が全く見当たらない状況。このため、「首相退陣こそが最大の株価対策」との皮肉が真顔で語られるほど。また昨年4月の森首相誕生に深く関わった「5人組」の一人である村上正邦前参院議員会長の議員辞職と自民党離党は、首相続投に重大な影響を投げ掛けている。村上氏は28日の証人喚問直後、東京地検特捜部による逮捕も予想されている。
●「名誉ある撤退」は予算成立後か
ことほどさように首相が続投するための条件は内堀も外堀も埋め尽くされているのが実態。もし首相がこれにあくまで抵抗しようとすれば、予算案の衆院通過後に内閣不信任案が提出され、公明党あるいは自民党の一部からも同調者が出る可能性がある。森首相としてもこうした混乱だけは避けたいものとみられ、実際の退陣は日米、日ロ首脳会談をこなし、予算が成立する4月初めとするなど首相の「名誉ある撤退」が図られるものとみられる。
●後継は野中氏が依然最有力
森首相の後継は、先週もお伝えした通り、自公保連立政権を前提とする限り野中広務前幹事長の優位は変わらない。この点から、世論調査などで最も人気が高い小泉純一郎元厚相は与党3党の統一候補とはなり得ない。仮に小泉氏がなれるとしたら、森首相が粘りに粘って、参院選まで時間がなくなった場合や、若手を中心に総裁選前倒し論が高まり、急きょ実施された場合など。それでも党内最大派閥の橋本派が同氏の擁立に反対している以上、この線は非常に薄い。ただ現在のところ最有力候補の野中氏が固辞した場合は大きな混乱が予想される。その場合、橋本龍太郎元首相の再登板も考えられるが、青木幹雄参院幹事長が橋本氏の起用に繰り返し難色を示していることがどう作用するか。
●年内解散追い込み狙う小沢氏
一方、野党各党は頻繁に党首会談を開くなど、森内閣打倒に向け、結束を強化している。特に自由党の小沢一郎党首は民主党の鳩山由紀夫代表や菅直人幹事長、社民党の土井たか子党首とも会談、参院選の候補者調整や同選挙後の政局に向けた動きを活発化させている。小沢氏は参院選での野党勝利を第一の目標に、自由党候補の取り下げまで提案するなど同選挙に並々ならぬ意欲をみせている。同氏としては参院選で与党を20議席以上の過半数割れとし、年内の衆院解散・総選挙に持ち込みたい考え。最終的には自民党を政権党から引きずり下ろし、同党分裂にまで追い込みたい意向だ。
●一時は額賀氏逮捕の情報も
ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)の政界への資金提供事件をめぐっては、“本丸”の村上正邦氏の逮捕がほぼ確実視されている。東京地検特捜部は当初、額賀前経済財政担当相など複数の政治家の逮捕も検討したとみられるが、福岡の高裁判事の妻への情報提供問題などが予想外に大きく影響したとみられ、今回の政治家の逮捕は村上氏一人に絞られたもようだ。一方、外務省の機密費横領事件は当初、検察側が立件に難色を示したこともあり、警察による捜査が難航しているようだ。また機密費が官邸や外務省以外の各省庁にも存在、それぞれが複雑に連関していることも捜査の進展を妨げているとみられる。
[政治アナリスト 北 光一]
2001/02/26
09:30
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