野村証券(8604)が1年前に発売した株式投資信託「ノムラ日本株戦略ファンド」の運用実績が低迷、社内外から不満が噴出している。巨額資金を集め、鳴り物入りで始まっただけに、業界団体幹部は「業界の盟主・野村にしてはお粗末」と酷評。身内の野村グループ内からさえ「運用担当者は責任を感じるべきだ」(中堅社員)と厳しい厳しい批判が聞こえてくる。
「ノムラ日本株戦略ファンド」は、野村グループの投信会社、野村アセット・マネジメントが2000年2月に設定し、運用を始めた旗艦ファンド。投資対象は日本株で、現在は約200銘柄で運用、償還期限を設定しないオープン型だ。
●残高は8,000億円割り込む
販売当初の昨春は、ネット関連銘柄の高騰に伴うバブル相場にも乗って、1兆円を超える資金を集めた。しかし、株式相場の下落に伴い運用実績は低迷。運用実績を測る基準価額(資産残高を販売口数で割り込んだ数値)は、一時1万円超だったが、2月19日現在6,466円にとどまり、残高も8,000億円を割り込んでいる。
同社は、戦略ファンド運用のため、銘柄の選定と投資比率の決定に当たる専門の運用チームを設置。運用チームへの資産配分は、社内エコノミストやアナリストで構成するファンド専用の「投資政策委員会」が、市場環境や経済見通し、リスク管理を踏まえて決めている。
●割高な手数料が投信離れに
万全の体制を敷いたはずの旗艦ファンドの“惨状”について、前述したように顧客だけでなく、販売を担当する野村証券などグループ内からも不満の声が出ている。これに対して野村アセットは「戦略ファンドは、中長期的に資産運用を図る商品。相場がこんな状況では、短期的運用実績に影響が出るのも仕方ない」と反論している。
株式市場の低迷は「個人資産の流入が本格化しないことが根本にある」(中堅証券幹部)。株式投信は、個人資産を取り込む有力ツールのはずだが、相場低迷で運用実績が上がらないことに加え、実績の良し悪しにかからわず支払う手数料に顧客は割高感を感じている。
先にまとめられた与党3党の株価対策にも、投信販売手数料の引き下げが盛り込まれた。これに対して業界では反発も出ているが、「投信育成へ議論を活発化する好機」(業界団体幹部)でもあり、証券業界がどこまで踏み込めるかに投信の将来もかかってこよう。
■URL
・野村証券
http://www.nomura.co.jp/
・本格化する中小証券の淘汰~相場低迷などで収益急減
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/02/14/doc1986.htm
・与党3党の株価対策~市場インフラ整備策の未完成品に
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/02/09/doc1955.htm
(小城高雄)
2001/02/20
13:03
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