政府は、16日午前に開いた2月の月例経済関係閣僚会議で景気の基調判断を「景気の改善は、そのテンポがより緩やかになっている」と下方修正した。基調判断の下方修正は昨年11月以来3カ月ぶり。個人消費など7項目の個別判断を修正、とくに物価を「横ばい」から「やや弱含んでいる」に下方修正し、デフレ懸念の再燃が徐々に日本経済の足かせになりつつある現状を改めて浮き彫りにした。イタリアで17日から開かれるG7(先進7カ国蔵相中央銀行総裁会議)では、日本はこの判断に基づき政策運営の現状を説明するが、「もはや日本につける薬はない」(ジョージ・ソロス氏)ほどに経済の地盤低下が著しい日本は、討議の蚊帳の外に置かれる可能性もある。
●公需から民需のバトンタッチは正念場
麻生太郎経済財政担当相が閣議に提出した月例報告によると、1月の基調判断は「全体としては、緩やかな改善が続いている」から「景気の改善は、そのテンポがより緩やかになっている」と、判断を微調整した。内閣府によると、下方修正の一番の要因は、「米国経済の減速から輸出が弱含み、それに伴い生産の増加テンポも緩やかになっている」ことを挙げている。
個人消費、輸出、企業収益、業況判断、雇用情勢、そして物価の判断を下方修正しており、景気の牽引役だった企業部門の下振れが出始め、『公需から民需へのバトンタッチ』のシナリオは、まさに正念場を迎えつつあるようだ。
下方修正したとはいえ、「景気が緩やかに改善」という総括判断そのものは変わっていない。むしろ、注目点は物価の下落だ。とくに、個別判断で下方修正した物価では、従来の「おおむね横ばい」から「卸売物価はやや弱含んでいる」と表現を変えた。物価の判断を下方修正したことは、物価下落を需要不足に由来するものではなく、技術革新や流通革命による『良い物価下落』と位置づけてきた日本銀行の認識と開きがあり、今回の月例経済報告は政府、日銀の政策論争を予兆ともいえそうだ。
●基調判断修正でもG7で蚊帳の外に
イタリアで今週末に開かれるG7の席上、宮沢喜一財務相は基調判断を下方修正した経済の現状を説明する。従来なら、会議の中で日本に対し、またぞろ不利な政策要請が浮上するはずだが、G7内の空気も若干、変わってきたらしい。
今回の会議の最大の焦点は、減速する米国経済の展望と、オニール新財務長官の登場だ。冷戦後の世界経済を牽引した米国経済を新政権がどんな舵取りで臨むのかに関心が絞られる。一方の日本は、むしろ蚊帳の外といった感もある。1月のダボス会議で、ジョージ・ソロス氏が「日本にはもうつける薬がない」と発言したことが伝えられているが、マクロ経済政策の余地は極めて限られる。ややもすれば劇薬となりかねない金融政策の量的緩和論が再浮上するほど、手詰まりな状況にある。
月例経済報告でも取り上げられた日本の「物価の下落」に、G7の主要議題として多くの時間が費やされることもなく、各国の蔵相、総裁の視線は米国の動向に釘付けされる。政策余地もなく構造改革もろくに進まぬ日本経済で、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をするほど悠長に構えていられないというわけだ。「日本よ、勝手にしろという感じになってもおかしくない」(国際金融筋)というのが、いまのG7の空気なのだ。
政府の景気基調判断の下方修正、なかでも物価の下落については「金融政策の問題」と、G7を直前にして財務省幹部が居直りを見せるように、ゼロ金利復活、中長期国債の買切りオペといった量的緩和派が勢いづくのは必至。しかし、日本が世界経済の足手まといにならない限り、極めて国内的なコップの中の議論ともいえ、まさに世界の中で地盤沈下する日本経済を象徴することにもなろう。
■URL
・内閣府
http://www.cao.go.jp/
・総裁ダブル退陣論が浮上~日銀総裁にも早期辞任促す声
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/02/15/doc2000.htm
(北見優)
2001/02/16
09:44
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