中小証券会社の淘汰が本格化する。株式相場の低迷で売買委託手数料が減少している上、手数料自由化に伴う引き下げ競争も激化。2001年3月期には大幅減収に追い込まれる中小が相次ぐとみられる。金融庁も中小証券に対する監督を強化する方針で、“退場宣告”される証券会社が出てきそうだ。
昨春、ネット関連銘柄の騰勢に乗り、2万833円まで上昇した株式相場は、ネットバブルの崩壊を機に急降下。今年に入り、米株式市況の悪化や企業業績の下振れ懸念、株式の持ち合い解消売りなどが重なり、2月8日には1998年10月以来となる1万3000円割れの事態となった。景気の底割れ懸念も囁かれる中、市場では「年内の株価の上値は1万7000円台がやっと」(大手証券研究所)と悲観論が支配的だ。
●第3四半期で大手も赤字続出
こうした相場を反映し、証券各社の昨年4-12月の決算は、手数料収入の落ち込みから減収が相次いだ。特に、株価がバブル後最安値に迫った第3四半期で各社は苦戦。最大手の野村証券(8604)は、第1、第2の四半期でそれぞれ1,000億円超の経常利益を稼ぎ出したが、第3四半期には142億円に急減。大和証券グループ(8601)や国際証券(8615)などの有力証券も経常赤字となった。2001年3月期通期では、一段と厳しい決算が予想される。
一方、1999年10月の株式売買手数料の自由化以降、顧客獲得のための手数料引き下げ競争が激化。株式相場のネットバブルが剥げた2000年9月中間期以降は「手数料以外の収益源の有無が決算内容の明暗を分けた」(大手証券役員)。
●4月に証券版ペイオフ
さらに、証券界ではここ数年、経営強化のための合併・再編が相次いだが、「肝心のリストラは一向に進んでいない」(中堅証券幹部)。例えば、ユニバーサルや太平洋など中堅証券4社が合併して発足したつばさ証券(8621)は、最大手の野村を支店数で上回っている状況だ。
今年4月には「証券版ペイオフ」がスタートする。破綻した証券会社が、顧客資産と自社資産を区別して保管する分別管理を怠っていた場合、保護対象となる顧客資産が「1,000万円まで」に制限される。
しかし、「中小証券の一部は外部監査も導入していない」(金融庁幹部)のが実態で、これまでもずさんな財務処理や法令違反の表面化があった。このため、同庁は、中小証券の経営健全化確保のため、検査・監督を一層強化していく。
■URL
・ネット証券が地場証券を囲い込み~準大手・中堅と激突へ
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/29/doc1814.htm
・大手は反攻、中堅以下は3重苦~兜町に秋の陣
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/26/doc513.htm
(小城高雄)
2001/02/14
11:27
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