FINANCE Watch
与党3党の株価対策~市場インフラ整備策の未完成品に

  自民、公明、保守の与党3党は9日、株価対策の中間報告をまとめ、夕刻、森首相に提出する。金庫株(自社株取得・保有)解禁で今国会中に関連法案提出を明記、また、今年3月末に期限切れになる土地再評価法の1年延長も盛り込まれる。しかし、証券税制見直しを含む一切の税制論議を今年末以降に封印したことで、“仕掛け人”の亀井静香自民党政調会長が当初見込んだほど迫力ある効果も期待薄。まさに、証券市場インフラ整備策の“未完成品”に終りそうだ。

  ●市場介入・量的緩和派の重鎮たちの挫折
  与党3党は、9日午前10時の作業部会に続き、午後3時にも作業を再開、株価対策の中間報告案を最終調整した上で、森首相に提出する。昨年末に亀井氏と相沢英之前金融担当相らが想定した株価対策、証券市場改革案とは大きくかけ離れ、市場に対する「政治の非力さ」を見せ付けるだけの惨めな結末になるのは必至だ。

  3党の議論を事実上リードした亀井氏の自民党特命委員会は、同党の旧金融問題調査会(金問調)で、日銀に禁じ手といわれる量的緩和を強硬に求めてきた市場介入派の重鎮が主体になっていた。しかし、実際に3党のプロジェクトチームが発足すると、公明、保守ともに、「共同証券組合(仮称)」による持合株買上げ構想や、銀行に注入した公的資金の持合株による償還といった公的資金を活用する案を断固拒否する姿勢を示した。

  この結果、3党の議論の中身は個人投資家を株式市場に呼び込む証券市場インフラ整備にシフトしていったが、各種施策とコインの裏表の関係を成す税制項目はすべて「検討」の文字がつき事実上、結論を先送りした格好だ。

  ●株式等価交換、土地再評価法延長も後退
  対策の目玉と注目されていたのが、(1)金庫株(2)持合株の等価交換(3)3月末で期限切れになる土地再評価法の延長(4)ESOP(自社株企業年金基金)―などだ。あとは、枯れ木も山の・・・のようなもの。実現に道が開かれるのが金庫株の解禁と土地再評価法の延長だが、商法改正案を今国会中に提出しても“3K問題”で揺れる中で、3月期決算までに成立するかは微妙な情勢だ。株式交換も、ESOPも方向性を認めても、譲渡益課税の取扱いは調整できずに「検討」課題として明記するのがやっと。

  自己資本増強と自社株消却の一石二鳥の効果を持つ土地再評価法は、一部の専門家の間で、与党の対策でもっとも効果があると指摘されてきた。土地再評価益をオンバランス化して資本に組み入れ、そのうち3分の2で自社株消却する手法は、いずれ自社株を市場に放出する金庫株に比べて確実な効果が見込める。だが、この制度も評価益と株式評価損の相殺する税制上の措置を切り離しての1年延長だ。制度として後退した内容でもある。

  ●量的緩和要望に自民の焦り
  自民党の“元金問調族”が固執した「金融の量的緩和」要望も、日銀の独立性の観点から消極的な公明、保守の反対もあって、除外する方向に傾きかけている。それでも、与党作業部会座長の相沢氏は「日銀の量的緩和要望については、反対もあるが、報告の中に是非盛り込みたい」と、午後3時からの作業部会を前に最後の調整に意欲を示す。

  自民の金問調といえば、新日銀法の議論の叩き台を作った政調の組織として知られる。その重鎮たち自ら関与した新日銀法で保証する「中央銀行の独立性」すら否定しかねない「量的緩和」要望の動きは、3K問題を抱えて政権基盤が揺らぐことへの自民党の焦りを象徴しているかのようだ。

■URL
・尻すぼみの株価対策~やる気なくした特命委
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/26/doc1789.htm

(北見優)
2001/02/09 14:17