情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●巨人・東電の決断
ピーク時の投資額1兆6,800億円(1993年度)。1社で電力業界の3分の1、全産業の1%強を占める東京電力(9501)の設備投資額が、22年ぶりに1兆円の大台を割り込む見通しとなった。
東電は8日、発電所の新規建設計画を凍結すると発表。電源開発の凍結に伴い、2001年度の設備投資計画(今年度1兆790億円)も1兆円未満に抑制する方針を明らかにした。
ケタ外れの設備投資で電力需要を賄い、併せて景気の下支え役も果たしてきた電力会社の新規電源開発の動きにブレーキをかけたのが、急激な構造変化だ。省エネ危機や景気低迷、人口の伸びの鈍化などで電力需要が1%台で推移。その一方で、規制緩和の進展に伴い、ガス冷房や企業の自家発電が増加、電力会社だけが発電所を作る時代は既に過去のものとなっている。
今後、電力の自由化がさらに進めば、余剰設備を抱える電力会社の競争条件は不利になる。需要の伸び悩みと規制緩和の進展が、電力業界の巨人・東電に設備投資抑制の決断を迫ったわけである。
同日発表された2000年7~9月期のGDP(国内総生産)2次速報は、民間設備投資の大幅な鈍化を要因に3・四半期ぶりのマイナス成長となり、景気の減速が確認された。最悪のタイミングで東電の設備投資抑制方針が打ち出されたことになるが、これも時代の趨勢。地域のトップ企業として君臨してきた電力会社も、ようやく「普通の会社」になったということか。
このニュース、読売が1面トップで報じ、他紙も大々的に報じている。関連記事は、日経の企業総合面がこなれている。
◇「管制官が便名を取り違える管制ミス」「機長と管制の意思疎通不足」「警報装置に対する判断の差」「急激な降下操作」「シートベルト着用のサインが消えていた」
日航機のニアミス・負傷事故は、少なくとも5つの要因が連鎖して起きた「複合事故」だった可能性が強い。国土交通省の航空機事故調査委員会が、今回の事故の原因についてこんな見方を固めた、と朝日がトップで報道。社会面に関連記事を掲載している。
「複合事故」との見方については頷けるが、原因がこの5つだけと断定されたわけでない。「とりあえずどんな感じなの?」といった取材で確認できた内容を、とりあえず記事にしたということだろう。
◇外交機密費を使用する場合、「領収書は不要」というのは「正しくない」。友人の外交官によれば、外交情報を入手するために外国人と会食する場合、事前に稟議書を上げ、決裁を得る必要があり、その額も「リーズナブルな範囲、夜なら1人1万円程度まで」。しかも、現金の交付はなく、会食した料理店から外務省の会計課に請求書を回してもらい、会計課が直接払い込むようにしているという。
機密情報を入手するため、相手に現金を渡す必要に迫られた場合は? 「領収書を切れないカネについても、予め上司の許可を得なければならず、成果を必ず求められる」という。
これが機密費の「正しい使い方」で、「管理職になる時、口頭で上司から『そうしないと、後ろから刺されるぞ』と教わった」と、高潔で知られる友人は語っていた。官房機密費を横領した元室長や、週刊誌などで報じられている“不良外交官”たちはこの教えに従わなかったことになる。
機密費関連のニュースをトップで報じているのは、毎日と東京。国会での追及は最初から期待していないが、肝心の捜査当局の取り調べも今ひとつパッとしない。立件が大幅に遅れるとの情報もあるが・・・
◇欧州の大手航空機メーカーであるエアバス・インダストリーが三菱重工業(7011)など国内の航空機メーカー5社に、超大型機「A380」の生産への参加を要請してきた、と日経。産経のトップ記事は、都立4大学の再編・統合を巡るニュース。
【経済・IT】
●1万3000円割れの衝撃
株でも為替でも大台割れに新聞は敏感に反応する。きょうの朝刊各紙も、<買い手不在の株式市場>などと、平均株価の1万3,000円割れを大々的に報じている。
きのうの株価は、午後の取引再開2分後。「わずか5分間」(朝日)の大台割れだったが、きょうは?
与党の株価対策の正式発表と、日銀の政策委員会・金融政策決定会合の2つの材料に株価はどう反応するか。
【トピック】
●もう飲みましたか?
中国の飲料水「都瑞(トゥルゥー)」を飲んだことがありますか?
昨年の2月から今年1月までに4万6,656本が輸入され、愛知県内の薬局などを中心に1本3,000円で販売されていたこの飲料水に、アノ性的不能治療薬「バイアグラ」の有効成分が含まれていることが分かり、愛知県が輸入・販売の中止と回収を指示した(朝日)。
[メディア批評家 増山 広朗]
※13日(火)は新聞休刊日のためこのコラムは休載となります。
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm
2001/02/09
09:10
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