情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●「ゴメン」ですむなら・・・
きのうから森首相の施政方針演説などに対する各党の代表質問が始まった。
「首相改めて陳謝」と産経が大見出し。他紙はトップ扱いではないが「首相『KSD』で陳謝」(読売)、首相「公党として」謝罪(毎日)、「首相、一転して陳謝」(東京)、「首相、一転『KSD』謝罪」(朝日)。
毎日は支持率調査で「森内閣、最低14%」と報じている。何が「最低」なのかと言えば、昨年末実施した前回の15%よりもさらにポイントを下げたからだ。
朝日は証人喚問に応じることになった村上正邦議員の秘書の給料を数年間にわたってKSDの関連会社が負担していたという致命的な記事。
まさか、「謝罪」するだけで、KSD事件、外務省機密費流用疑惑などをあっさりと切り抜けようとしているわけでもないだろうが、そう言えば、筆者が駆け出しの頃、うっかりミスをして上司に深々と謝ると、「ゴメンで済むなら警察はいらない」と怒鳴られたものだった。
◇その警官・検事察も頼りにならないご時世。福岡高裁判事の妻の電話脅迫事件をめぐり、福岡地検は、容疑者の夫である判事に捜査情報を漏らした山下永寿次席検事を「刑事事件の捜査対象にする」、と東京が特ダネ報道している。
この事件、これまでマスコミも判事を匿名にしていたが、東京は「古川竜一」と実名に切り替えた。判事は公人であることも踏まえてだが、検察幹部が情報を漏えいした上、刑事事件の捜査対象となるのは極めて異例。あきれた事件だ。
◇富士山上空付近の日航機ニアミス事故究明の報道合戦もネタが尽きたか、きょうは小休止気味。同じ富士山でも読売が「富士山の噴火予測に着手」とまったく別の話題。富士山が危ない話はマスコミでもしばしば取り上げられてきたが、気象庁の私的諮問機関、火山噴火予知連絡会がようやく重い腰を持ち上げることになった。富士山が火を噴けば三宅島の騒ぎではない。
◇きのうの東京株式市場の平均株価は318円安、今年最大の下げ幅を記録した。先週末の米国の株価大幅下落などが響いているという。その米国は、ブッシュ大統領が記者会見し「10年間で1兆6,000億ドルの減税案を米議会に提案する」と正式に発表した(日経)。これで米国は景気刺激のための政策手段がほぼ出そろったことになるが、ブッシュ新政権になって、まだ1カ月も過ぎていない。素早い対応、日米のこの差はどこに・・・。
【経済・IT】
●数字のマジックはこわい
野村證券(8604)が平成12年度第3四半期(10~12月)の決算を発表。経常利益が大幅に落ち込んで「野村、経常利益87%減」(日経)「大手証券も沈む」(朝日)など、各紙とも経済面で業績悪化を報じている。ところが、産経だけは「増収増益、野村独り勝ち」「法人に強み、収益力に格差」という超派手なゴマすり見出し。産経は第1、第2四半期を含めた数字をカウント。誤植ではないがセンスを疑う。数字のマジックはこわい。
◇NTTドコモ(9437)が今月実施する46万株を上限とする新株発行について、1株当たり206万6000円台と決定(毎日)。ちなみに5日終値は213万円だった。ルールに基づき3%割り引いて算定したものだが、発行総額は9503億6000万円。久々の大型発行、注目を集めそうだ。が、相変わらず市場が低迷しているようでは・・・。
◇国内のパソコンの年間出荷台数が初めて1,000万台の大台を超えた(朝日)。米国ではパソコン需要に鈍化の兆しが出ているが、国内では消費者向け市場が依然として好調なため「まだまだ伸びる余地がある」と業界団体の声。ただし、日経は「今年の伸び率は前年を10%も下回る」と冷静な判断をしている。先日、IT戦略会議のメンバーになっている某社長を取材したが「時間がなくて、自宅では・・・」と語っていた。家庭で茶の間のテレビ並に普及するには?
◇そんなパソコンの先行きに不安材料。パソコンをインターネットに接続しようとすると、登録したプロバイダーのセンターにはかからず、間違い電話になるトラブルが、NEC(6701)など大手パソコンメーカーで共通して起きていることがわかった(産経)。内蔵モデム装置がソフトの設定によって誤作動を起こすものらしい。筆者も知人のススメで、無料のプロバイダーと契約したが、間違い電話ではなくメールが届かないトラブルに巻き込まれた。自動車だって少し前までエンストばかりしていた。パソコンはまだまだ発展途上、トラブルはやむを得ないのか。
【トピック】
● 「電子申告」漏れも深刻?
来週16日から始まる確定申告を前に、巨人軍の松井選手が、キャンプ地の宮崎で、電子申告に挑戦した(読売ほか各紙)。もっともこの日はデモストレーション。国税庁は確定申告をパソコン通信で行う「電子申告」を2003年度までに本格導入するという。現在のパソコンでは接続トラブルやエラーが発生するようでは「申告漏れ」が心配ですが?
◇東京・世田谷で他人の飼い猫を洋弓銃で撃ち殺した日本興業銀行のエリート行員。動物愛護法違反容疑で逮捕された。各紙はきのう5日夕刊で報道、今朝はテレビのワイドショーが騒ぎ立てている。筆者宅から目と鼻の先、容疑者をよく見かけたが、「まさか・・・」あの男がと疑いたくなるほどマジメそうにみえた。人間、いつ豹変するのかわからなくなってきた。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm
2001/02/06
09:09
|