情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●ニアミスとハイジャック事件
先週1月31日に起こった日航機のニアミス事故について、国土交通省の航空事故調査委員会などによる原因究明の調査が慎重に進められている。
毎日によると「衝突回避のため管制官が、日航958便に右旋回を指示した時刻と、操縦室内の衝突防止装置が作動して警報が鳴った時刻がほぼ一致」。だが、機長らは「右旋回指示は聞こえなかった」と反論しているという。右旋回していれば、ニアミスは防げたとみられるが、管制官のミスも含めて、まだ謎が多い。各紙もそれに関する記事を載せているが、核心をついたものでなく、続報を待つしかない。
◇日航機の話題といっても読売は「よど号」乗っ取り事件。北朝鮮に渡った犯人グループ(元赤軍)の妻子5人に対し、政府は日本への帰国に必要な渡航書を近く発給する方針を固めたという記事。妻子の帰国が早ければ月内にも実現するというが、平壌に残っている犯人グループは妻子を含め32人。帰国が認められる5人以外の対応はどうなる?
この読売の記事を読んでも、「よど号」事件がいつ発生したのかなど、まったく説明がない。筆者のような安保世代の中年ならばともかく、若者はピーンとこない。読者のためにネットで検索してみました。「1970年3月31日羽田発福岡行き。ハイジャックが行われたのは富士山南側上空、犯人はそのまま北朝鮮へ。ちなみに乗客などに負傷者はなし」。読売サン、活字を大きくするのもいいが、読者に不親切な原稿は困りますよ。
◇朝日は医療科学の話題を2本。東京女子医大の研究で、ニワトリの心臓の筋肉になる細胞を特殊な培養皿で育て、薄い膜にした「心筋シート」をつくったという。臓器再生が目標のようだが「実際の治療に応用するには課題も多い」とは、別の医大教授のコメント。もう1本は、「医療ミス防止に、爪に小さなIC(集積回路)のチップを貼って患者を識別する方法」を東邦大学病院の教授らが実用化に向けて研究中、と取り上げている。
◇先週の31日、招集された通常国会。きょうから森首相の施政方針演説などに対する各党の代表質問が始まり、論戦が交わされる。野党は景気対策、KSD事件、外務省機密費流用疑惑など、徹底追及する構え。
そのタイミングに合わせて、産経はKSD事件がらみで「小山前議員のパーティー券、1,500万円を関連団体で丸抱えしていたこと」が発覚したと。
東京は「首相官邸が内閣官房機密費の領収書を保管していないことがわかった」と報じている。交際相手から手切れ金の領収書はもらえないし、「○×興産」「×○商事」など、ひと目でわかるいかがわしい遊興費の領収書だって保管したくない気持ちもわかるが・・・。
日経の1面トップは次のコーナーで紹介します。
【経済・IT】
● 何処もドコモで泣かされて・・・
「総務省がNTTドコモ(9437)の携帯電話を使ったインターネットサービス「iモード」の公正競争ルールづくりに乗り出す」と日経が1面トップで取り上げている。個人や・ベンチャーが参入したくても「ドコモの公式サイト認定基準が不透明だ」という不満の声を解消するための判断。
◇同じ総務省でも「住民票の写しや印鑑証明、納税証明書の交付が郵便局の窓口でも可能になる」と、東京が報じている。筆者の記憶では市川市などではコンビニで住民票が交付できるサービスをすでに実施しているのを取材したことがあった。コンビニの扱いはどうなるの?
◇日興證券(8603)が、子会社の日興信託銀行の株式の半分を、東京三菱ファイナンシャルグループの三菱信託銀行(8402)に売却する方針で検討中(毎日)。日興が米シティグループの傘下に入ったことで疎遠になっていたが、関係修復を狙う。やはり頼りになるのは古き仲間のようだ。
【トピック】
●「慎吾ママ」のお値段は?
「おっはー」でおなじみの慎吾ママが出演しているNTT東日本(9432)の「おさげします」というマイラインのCMが、3カ月連続で「CM高感度」ナンバーワンに輝いた(東京)。NTT東日本はベストテンに3本も。その広告宣伝費は?
◇「経営者が優れている」とビジネスマンが思うのは1位ソニー(6758)、2位トヨタ自動車(7203)、3位はマイクロソフト。日経の企業イメージ調査結果である。この調査、ビジネスマンと「一般個人」に分けて調査しているが、3位までは同じ回答。気になる4位は、ビジネスマンが日本マクドナルド、一般個人が本田技研工業(7267)を上げている。経営者と言っても会長なのか社長なのかの区別はしていないが、妥当な結果だろう。それにしても「顔の見えない経営者」が増えてきた。
◇若手で唯一顔が見えるのはソフトバンク(9984)の孫正義社長。日経の取材で「株価低迷時に逃げるのは素人。我々プロは今が絶好の仕込みの時期」と語っている。アジアのベンチャー企業向けに約1,200億円の大型ファンドを立ち上げたばかりで投資意欲も積極的。とは言うものの足元の同社の株価はピーク時の10分の1以下に下落しているが・・・。
◇中央省庁のホームページへの一連の不正アクセス事件から、1年が経過。でも「一部の省庁はお粗末」と専門家が指摘、IT革命を唱える政府の足元のもろさが透けてみえる(読売)。「すべてのパソコンにウイルス対策ソフトを導入することは理想かもしれないが、予算などの事情がある」と内閣官房セキュリティ対策推進室の弁解。松尾元室長が使い込んだ機密費のほんの一部を回すだけでも万全対策が講じられますぞ。
[メディア批評家 増山 広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/02.htm
2001/02/05
09:06
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