FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~きょうも疑惑“満載”

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●逃げる方も必死ですゾ
  「ノンキャリの星」による機密費流用疑惑で、外務省はきょう、内部調査の結果を公表する。が、その内容は(きのうも指摘したが)、空疎かつ曖昧模糊。存在感ゼロ、外交手腕にも疑問符の付く「河野洋平外相の陳謝で一件落着」というのが、首相官邸と外務省の描くシナリオだ。大山鳴動鼠一匹の、しまらない結末である。

  すべてを白日の下にさらせば、外交機密費の杜撰な使い方はもとより、政治への流用疑惑が絶えない官房機密費の実態をも表に出さざるを得なくなる。「ハイジャック犯やゲリラへの身代金も、実は機密費から支払われていた」なんてこともバレてしまうかもしれない。

  だから、適当なところでお茶を濁そうというわけだが、それほど機密費の「機密」が重要なら、最低限、外相のクビは不可避。「外交上、どうしても明かせないことがあるので、私のクビと引き換えに許して下さい」と、河野外相が閣僚を辞任、ついでに議員も辞職して隠遁生活に入るくらいの覚悟が必要だが、「減給10の1」とは笑止千万だ。

  野党は、逃げる与党をトコトン追いかけ、徹底追及の構えをみせているが、こっちもあまり期待できない。新聞記事くらいしか材料のない、手ぬるい追及では「機密保持」に必死の官邸と外務省を追い込めまい。

  このニュース、きょうも読売、毎日、産経がトップで報じているが、そろそろネタも尽きてきたようだ。

  ◇朝日と東京は、森内閣が抱える「もうひとつの火種」、KSDの政界工作事件をトップに持ってきた。朝日は村上正邦参院議員、東京は亀井静香政調会長が“主役”だ。

  東京によれば、厚生労働省の局長がきのうの参院決算委員会で、KSDが推進した「ものつくり大学」設立のための補助金増額について「平成11年(1999年)11月末に亀井政調会長から指摘を受けた」と答弁。亀井氏から働きかけがあったことを明らかにした。

  亀井氏は、自民党の江藤・亀井派の領袖。KSDによる5億円の党費肩代わり疑惑が持たれている村上氏も同派の長老だ。職務権限と対価の因果関係が立証できなければ、単なる疑惑に終わるが、はたして逃げ切れるか。

  一方、「ものつくり大学」で辞任に追い込まれた額賀福志郎・前経済財政担当相は、最大派閥である橋本派の所属。森内閣を支える両派がKSD事件の直撃を受けたことで、御輿に乗る森喜朗首相の命運は?

  ◇日経が実施した有力企業の「社長(頭取)100人アンケート」の結果によると、収益環境について「横ばい」「悪化」と回答したトップは、前回(昨年10月)の6割強から8割強に増加。多くのトップが、収益環境の見通しに慎重な見方を示していることが明らかになった。

  このアンケートで、与党が検討を進めている株価対策については、約7割が「支持」。予想通りの回答だが、企業自身が投資価値を高める努力をしなければ株価の本格回復は期待できない。“お上頼み”のトップの皆様、この点はよおくご存知ですよね。

  【経済・IT】
  ●リストラで株価急騰
  今後は、「ソフト事業に専念」(産経)。失地回復を狙った「ドリームキャスト」が振るわず、家庭用ゲーム機から撤退する方針を固めたセガ(7964)と、筆頭株主のCSK(9737)の株価が24日、急騰した。

  撤退に要する費用は「500億円」(日経)。4期連続の赤字決算が見込まれるセガにとっては大変な出費だが、市場は「良いリストラ」と同社の決断を評価した。

  儲からない分野を切り捨て、儲かる分野に経営資源を集中する「コアコンピタンス」の重要性を、身を以て体験したセガ。株価回復の決め手は、やはり自助努力なのである。

  ◇読売によれば、上場企業が昨年、株式消却のために行った自社株買いが過去最高の330件(9億5,115万株)に上ったという。

  「金庫株の導入を」と大騒ぎしなくても、“できる”企業は自社株を買い支える「自衛手段」(読売)に出る。言わずもがなの「自明の理」である。

  ◇3月末にかけて金融システム不安が高まるのでは、との懸念が広がっているが、速水優日銀総裁は24日の参院決算委員会で「金融システム不安が起こることを心配する必要はない」と言明した(日経)。信じていいんでしょうね、速水サン。

  【トピック】
  ●新聞も読まず、テレビも見ない?
  記者「自民党宮城県連のテレビCMが問題になっているが?」

  首相「なんだ、それ」

  きのうの森首相と番記者のやり取りである。番記者が話題にした宮城県連のテレビCMとは、「こんなんだったら、私が総理大臣になった方がましよ!」と主婦が電話でがなり立てる奇抜な政党CMで、テレビでは“ニュース”として何度も放映されている。しかも、きのうの新聞には古賀誠幹事長が県連の代表を呼び「差し止め」を求めたことが報じられている。

  おまけに、CMでやり玉にあげられているのは、当の首相自身。なのに、「なんだ、それ」はないだろう。

  [メディア批評家 増山 広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/01.htm

2001/01/25 08:59