【今週の主な政治日程】
▼22日(月)
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橋本龍太郎行革担当相がスイスなど欧州3カ国訪問(27日まで)
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アナン国連事務総長が来日(25日まで)
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▼25日(木)
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河野洋平外相が訪米(28日まで)、鳩山由紀夫民主党代表がダボス会議出席(29日まで) |
▼26日(金)
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森喜朗首相がダボス会議出席(28日まで)
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【政局の焦点】
●参院選は与党惨敗必至の見方強まる
ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)からの資金提供問題で額賀福志郎経済財政担当相の辞任が確定的となった。首相官邸は当初、小山孝雄参院議員の逮捕で同事件は「これ以上広がらない」と判断、額賀氏の辞任についても「本人に説明がつくのなら必要はない」(福田康夫官房長官)との立場だった。しかし自民党橋本派の幹部が額賀氏から直接事情聴取した結果、「国民に説明がつかない」(青木幹雄参院幹事長)とみて、額賀氏に早期辞任を求めることを決めた。
このまま31日からの通常国会に臨んだ場合、閣僚である額賀氏が予算委員会で野党から連日攻撃を受け、新年度予算審議にも大きな影響が出かねないと判断、傷口が小さいうちに辞任することにしたものだ。しかし、外務省機密費流用事件と合わせ、省庁再編で新たにスタートしたばかりの森政権にとって大きな痛手となったことは確実で、今夏の参院選も与党惨敗必至の見方が次第に高まっている。
●村上氏らの職務権限の有無が最大のポイント
小山議員の逮捕をめぐり、東京地検特捜部の今後の捜査方針について(1)これ以上の政治家の逮捕はなくなった(2)この逮捕を基礎にもう一段の上の政治家逮捕をめざす―の両説があるのは事実。首相官邸サイドも前者の楽観的見方をしていたとみられる。
しかし額賀氏と小山議員のかつての上司、村上正邦前参院議員会長についてはKSDからの資金提供と職務権限の関係が立証されれば、逮捕が絶対ないという保証はどこにもない。額賀氏の場合、官房副長官時代の故小渕恵三首相の施政方針演説への関与と資金提供の関係、また全額返したと言いながら、政治資金規正法としての処理が全くなされていないことが今後、問題になる可能性は十分ある。
村上氏の場合は小山議員と同様、国会質問と資金提供のタイミングが問題となる。いずれの場合も職務権限の有無が最大のポイント。
●新たに閣僚経験者の名前浮上の可能性も
このほか、これまでマスコミで全く報道されていない閣僚経験者の名前が浮上する可能性も一部で取りざたされている。
●何としても村上氏を守りたい青木氏
小山議員の逮捕と額賀氏の辞任は橋本、江藤・亀井両派に衝撃を与えた。橋本派にとって額賀氏は「将来の首相候補」。同氏は防衛庁長官時代の1998年にも同庁の汚職事件で引責辞任しており、将来に大きな傷がついたことは間違いない。同氏を「弟分」とする青木氏がそれでも切らざるを得なかった背景には、参院選への悪影響回避のほか、村上氏が森政権誕生の際の「5人組」の1人であり、「村上氏に及ぶことを何としても止めなければならない」と青木氏が判断したことにある。「5人組」
の一画が崩れることは、とりもなおさず現政権誕生の不透明さが白日の下にさらされることを恐れたためだろう。
●相次ぐ逮捕に焦る亀井氏
江藤・亀井派にとっても中尾栄一元建設相の逮捕に次ぐものだけに、何としても村上氏の逮捕だけは免れたいところ。同派の実質的領袖である亀井静香政調会長にも依然、許永中事件の影がつきまとっており、いつ司直の手が伸びかねない状況が続いていると言われる。これ以上、同派から逮捕者を出せば、同派の存続そのものが危うくなる。亀井氏が公共事業見直しや株価対策に人一倍熱心なのも、政調会長をはずされれば、検察・警察がどう動くか分からないとの不安からの焦りとの有力な見方がある。
●クリーンイメージ傷つき公明党は大不満
一方、KSD事件などによって看板のクリーンイメージを傷つけられた公明党には自民党に対する不満が高まっている。神崎武法代表ら幹部は21日、自民党に厳しい態度で臨む方針を表明、村上氏らの証人喚問にも応ずる可能性を示した。同党が最も懸念しているのは、参院選で与党が惨敗した結果、早期の衆院解散・総選挙に追い込まれること。これはとりもなおさず新進党参加で苦汁をなめさせられた小沢一郎自由党党首の戦略に乗ることを意味する。同党首脳は参院選で与党が過半数を10議席以上割り込めば、年内にも総選挙との見方。
しかし公明党がクリーンさを維持するため、野党の挑発に乗る形で村上氏らの証人喚問に応ずれば、与党3党の結束が乱れ、さらに参院選では不利な状況に追い込まれるというジレンマに陥る。
●野党はあくまで森首相で参院選の作戦
逆に、民主党をなど野党各党は、首相の額賀氏任命責任の追及や村上氏らの証人喚問などで与党を攻撃、森政権の弱体化を狙っている。しかし、前回指摘したように森政権の早期退陣要求は建て前だけで、あくまで森喜朗首相を参院選まで引きずり込む作戦。自民党内にも「どうせ参院選は負けるのだから」と、早期に森首相にとって代わろうという声は全くと言っていいほど出て来ないのが実態だ。
●ウルトラCで加藤氏再登場
にもかかわらず、森首相が新年度予算の年度内成立と引き換えに辞任するのではとの見方が消えないのは、誰かに無理矢理引きずり降ろされるというより、株価と支持率の下落に歯止めがかからなくなって政権を放り出すケース。それは森首相自身だけでなく、自民党そのものが手のほどこしようがないほどのぼろぼろの状態に至った場合だ。こういう時こそあるいはこういう時のみ、森首相に反旗を翻し、いったんは潰されたものの構造改革には熱心な加藤紘一元幹事長の名前が再登場する可能性がある。
[政治アナリスト 北 光一]
2001/01/22
09:32
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