「現時点でできうる株価対策の駒が少ないため、結果的に『金庫株』の解禁が浮かび上がってきただけ。過大な期待を寄せるのは禁物だろう」(政府関係者)
使い道を限定せずに自社株の取得・保有を自由化する「金庫株」の解禁が、さながら株価低迷を打開する“特効薬”であるかのように脚光を浴びているが、これらムードの高まりに一線を引く、慎重な対応が政府内には目立つ。
政府が「金庫株」の解禁に踏み切れば、買い手が不足している市場の状況なのだから、確かに低迷している株価が上昇する可能性はあるだろう。しかし、実際に「金庫株」を保有しようとする企業がどれだけ出てくるかは未知数。効果のほどは限定的なものにとどまるかもしれない。
●膨大な作業と検討項目
にもかかわらず、「金庫株」を解禁する場合、実現に至るまでの作業量は膨大だ。まず、企業のインサイダー取引が横行する恐れがあり、これについての対応は万全を期する必要がある。
そもそも企業が「金庫株」を持つということは、なにがしかの自己資産を自社株というペーパーに変えて持つことになるわけで、「金庫株」の項目に限って商法を改正するだけでなく、株式会社に関する商法上の考え方を抜本的に改める必要性も出てくるのだ。
経団連は、ほぼ30年ほど前から政府に金庫株の解禁を要望し続けており、それ自体は決して目新しいものではない。それが突如、株価対策として脚光を浴びたわけだが、膨大な作業と検討すべき項目の多さを知り尽くしている法務省や経済産業省などの政府内部からは、「拙速に進める問題ではない」との声が漏れてくる。
●議員立法しかないが・・・
しかし、18日に初会合を開いた自民党の「証券市場等活性化対策特命委員会」では、「金庫株」の解禁が公的資金による株式の買い上げをはじめ、百出する他の株価対策案を押しのけ、早期解禁で一致。「金庫株」の解禁に向けた道筋は確実に開けてきている。悠長に議論している時間はなくなってきているのだ。
「3月末までに株価対策として立法化するなら、議員立法しかない。政府提案の法律では間に合わない」と、ある政府関係者はいう。
ただ、議員立法にするにしても、次期通常国会では既に株主代表訴訟制度の見直しが与党から提出される見通しで、これとの調整が不可欠。「金庫株」の解禁は、まだまだ一筋縄ではいきそうにない。
■URL
・株安で「実質国有銀行化」も~3月期控え高まる金融不安
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/18/doc1702.htm
・巨額デリバティブ清算で大波乱か?~市場が抱えるもう1つの不安要因
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2001/01/15/doc1660.htm
(野崎英二)
2001/01/19
09:40
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