FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~「誤算」のオンパレード

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●“対岸の停電”の教訓
  深刻な電力供給不足に陥っている米カリフォルニア州が、とうとう計画停電の非常事態に追い込まれた。17日の停電は2時間余。市民生活への影響はさほどではなかったが、電力多消費型のハイテク企業はさぞかし肝を冷やしたことだろう。

  このニュース、産経がきのうの夕刊、そしてきょうの朝刊と連日トップで報じているが、“対岸の停電”をこうも大々的に扱うワケは?

  3面に掲載されている<日本の「電力自由化」に一石>との見出しの関連記事を読むと、その理由が分かる。

  カリフォルニア「大停電」の背景にあるのが、同州の電力自由化政策の「誤算」。長くなるので解説を省略するが、自由化の制度設計に無理があったために、発電市場が慢性的な電力供給不足に陥り、小売りを担当する配電会社の経営危機と相俟って今回の計画停電という事態を招いた。

  “対岸”の日本では、昨年春から大口の需要家を対象にした電力の小売り自由化がスタート。自由化の範囲は今後、徐々に拡大されていく見通しだが、同じように制度設計を誤ればカリフォルニアの轍を踏む恐れがある。

  産経の記事は、カリフォルニア州の失敗を「教訓とせよ」というわけだが、行政と産業界の自由化攻勢に青息吐息の国内電力業界は「してやったり」の表情。「教訓」を逆手に取ろうという魂胆がありありだ。

  ◇機密費ネコババ疑惑がもたれている外務省幹部が購入した競走馬14頭の価格は総額6,000万円(毎日)。大手3行に開設された同幹部名義の口座への入金総額は6億円超(東京)。

  連日の外交機密費流用疑惑報道でネタがそろそろ尽きてきたか。新聞の1面トップ記事が、重箱の隅をつつく“ワイドショー”並みになってきた。

  ◇日経は、きょうも業界再編ネタ。三菱化学(4010)、昭和電工(4004)、東燃化学、日本石油化学の化学大手4社が、合成樹脂の主力であるポリエチレンについて、10月をメドに事業統合する方向で最終調整に入ったという。

  朝日は、KSD疑惑の続報。読売は、司法改革(参審制)のニュースをトップに持ってきた。

  【経済・IT】
  ●ネット接続料、国際水準に
  毎月定額でインターネットにつなぎっ放しにできる定額接続料金の値下げが相次いでいる。きのうもNTT東西2社が900円(ISDN)の値下げを発表、朝日は「次第に『国際水準』に近づきつつある」と報じている。

  ◇NTTドコモ(9437)の快進撃が止まらない。同社がきのう発表した案件は2件。1つは、イタリアの大手携帯電話会社との「iモード」提携。欧州企業との提携はこれで3社目となり、ドコモの欧州iモード戦略が加速する見通しだ。

  もう1つは、ゲームなどのソフトウエアを携帯電話機に自由に取り込むことのできる新サービス「iアプリ」のスタート。いずれもiモード絡みの話題だが、筆者が使用しているドコモの携帯はレトロな「N208s」。FINANCE Watchの総括責任者(肩書きを知らないのでこう表記しておく)はiモード対応の携帯を持っているが、iモード機能は使っていないという。

  ◇<日銀は間違っている>と、日本興業銀行が日銀の「良い物価下落」論に噛みついた(朝日)。

  ユニクロ現象やパソコンの価格破壊に象徴される現在の物価下落について、日銀は企業の生産性向上による「良い物価下落」との認識を表明しているが、興銀は18日に発表したリポートでこうした評価は「困難」と反論。物価下落は、低価格の輸入品との競争激化や需給ギャップの拡大によって生じたものだと主張している。

  ひとつ言えることは、物価下落に「良い」も「悪い」もない。デフレ・スパイラルとまではいかなくとも、デフレ状態が今なお続いていることを認めたくないから「良い物価下落」という耳慣れない表現を使いだしたに過ぎない。

  日銀の皆様。言い過ぎですか?

  ◇株価対策の記事にも触れようかと思ったが、時間の無駄。省略する。

  【トピック】
  ●泣きっ面に蜂
  新聞を斜め読みし、テレビやラジオのニュースを聞き流していた人はご存知なかったかも知れないが、河野洋平外相がつい最近までロシアを訪問していた。2月下旬に予定されていた日露首脳会談の日程と内容を詰めるためだ。

  が、セットされていたプーチン大統領との会談は、「公務多忙」を理由にドタキャン。おまけに帰国間際になって「首脳会談延期」の一方的通告。「ポスト森」の最有力候補と目されている河野外相が、北方領土を巡るロシア側の本音が読めず、いったん公表された外交日程の延期を余儀なくされるという「大失態」(東京)を演じたのである。

  内に機密費流用疑惑、外に北方領土問題。河野外相の現在の心境は「内憂外患」、いや「泣きっ面に蜂」というところか。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/2001/01.htm

2001/01/19 09:05