情報は時とともに劣化する・・・

　 【1面トップ】
　 ●動機がわからない
　 鳥取県米子市の病院から生まれて間もない新生児が連れ去られた事件で、29際の女性が逮捕され、事件発生後6日ぶりに幼児を無事に保護。朝日、産経が1面トップで取り上げている。

　 一方、年末に起こった東京・世田谷の一家4人殺人事件の捜査は、未だ有力な情報が得られないまま暗礁に乗り上げているが、鳥取の幼児略取事件は一件落着。犯行を認めた鴨田容疑者は「付き合っている男性との間の子供がほしかった」と供述しているという。それが事実ならば単なる身代金目的の誘拐事件ではなさそうだが、現段階での動機は不明。ともかく赤ちゃんが何事もなく無事に両親のもとに無事帰ってきて何よりである。

　 ◇自民党の小山孝雄参院議員のKSD(中小企業経営者福祉事業団)政界工作疑惑の解明は大詰め段階を迎えている。「東京地検が1両日中に取り調べへ」（東京）、「受託収賄立件へ、週内取り調べ」（読売）、「収賄疑惑解明で、小山議員徴取へ」（毎日）、各紙が続報を取り上げている。東京地検は今月末から始まる通常国会前に立件にこぎ着けたいので猛ハッスル・・・。

　 ◇日経は日本経済にとってショッキングな分析報告。欧米を中心とする先進国とアジアの主要国のなかで、日本経済の潜在競争力が大幅に低下していることが、日本経済研究センターの調べでわかった。潜在競争力とは将来、経済成長を実現する素地がどれぐらいそろっているかを示すものだが、教育面で韓国や香港などに抜かれ後退していることやIT化の遅れなどが原因と分析している。しかも、1990年には、31カ国中3位だった日本が、今回の調査で16位に順位を下げた。“失われた10年”は、潜在競争力低下を鮮明に裏付けた嘆かわしい結果である。

　 【経済・IT】
　 ●自立回復では株価は？
　 神戸市で開かれていたアジア欧州会議(ASEM)財務相会議が閉幕（日経ほか各紙）。アメリカ経済の減速が鮮明になる中で、アジアと欧州への悪影響の波及をいかに最小限に食い止めるかという「危機管理」が問われたが、この会議には当事者のアメリカは不参加。しかも、先進国から発展途上国まで幅広い国が多数参加しているために、実効性のある共通の対策を探し出すのは至難の業。結局、具体策が打ち出せないまま、議長役の宮沢財務相は「自立回復が重要」と極めて常識的な声明を採択した。これでは、株価が低迷するのも・・・。（日経ほか各紙）

　 ◇政府は3月をめどに策定するIT化促進の重点計画に「情報バリアフリー計画」を加え、身障者がパソコンを購入する際に一定額を補助するほか、身障者用の機器の開発などを促進する（読売）。情報格差の解消を図るのが狙いだが、同じ読売が、きのう14日・朝刊で「マイクロソフト社の学校向けに限定したソフトは、新たに契約しなければ一般のパソコン講習の教材への使用を認めないため、主催側の自治体が苦慮している」と報じている。こんなところにも国家戦略の思わぬほころびを露呈しているが。身障者対策も万全な体制で臨んでほしいものです。

　 ◇キリンビール（2503）の次期社長に荒時康一郎専務が昇格へ。日経がスクープしている。新社長に就任予定の荒時氏はキリンの医薬カンパニーの社長を務めている技術畑。バイオ事業に力を傾斜するのはよくわかるが、本業のビールのシェアがじり貧状態で推移しているだけに、不可解な起用でもある。

　 【トピック】
　 ●備えがなければ・・・
　 6432人の犠牲者を出した阪神大震災から明日17日で、6周年を迎えるが、産経は「約80%の人が近い将来、国内で大地震が起こると思っている一方で、その半数は自分が被災するとは思っておらず、非常食などの準備もしていない」と、全国の工務店などが加盟する組合団体の調査結果を報じている。東京版だからなのか、発生から6年も過ぎると阪神大震災を取り扱った記事は少ない。昔から「天災は忘れたころに・・・」と言われているが、記憶の風化だけでも防がなければならない。

　 ◇モンゴルで寒波の中を飛び立った大型ヘリコプターが墜落、NHK記者らが死傷するという惨事が起こった(朝日ほか各紙)。国連関係の寒波と雪害の調査だけに、痛恨の極みである。

　 ◇ この冬一番の寒気に襲われた日本列島でも「軽ワゴン車が山形新幹線に追突」（毎日）するなど、各地で雪の被害も続出した。一方で、ウインタースポーツも花盛り。アイスホッケー・全日本選手権（Aグループ）で西武鉄道(9002)が優勝、スキージャンプ・STV杯では、雪印乳業(2262)の原田雅彦選手が逆転優勝を果たした。雪印と言えば昨年の食中毒事件ですっかりブランドイメージを失っていたが、原田選手の孤軍奮闘は久々のホットな話題である。

　 ［メディア批評家　増山広朗］