情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●箍(たが)が・・・
<「外交機密費」流用か>
元日の1面準トップを飾った読売のこのスクープは、警視庁による外務省幹部の事情聴取の結果、事実であることが確認された。当の読売が1面トップで“得意満面”に報じている。
読売によると、この幹部は外交機密費の一部を自分の銀行口座に入金していたことを認めたものの、「公金の内容や入金の目的、その使途については、詳細な供述を拒んでいる模様」という。が、ここまでうたえば(自白すれば)逮捕状の請求と執行は時間の問題。外務省も月内に独自の調査結果を公表する予定だ。
問題の外交機密費。正式名称は「外務省報償費」で、年間55億円前後もの巨費が予算計上されている。首相の外国訪問に伴うホテル代や土産、接待費用に支出されるが、相手国への配慮などから使途は公表されず、会計検査院の検査も及ばないようになっている。
が、箍(たが)が外れたとしか言いようのない不正流用疑惑の発覚で、機密費の“聖域”扱いを見直すよう求める声が強まっていくことが予想される。
◇箍(たが)が外れたバカ者たちは、酔いが醒め、反響の大きさにおののき、自ら警察に出頭した。
高松市の成人式で市長に向けてクラッカーを鳴らすなどして式を妨害したバカ者5人が11日、威力業務妨害容疑で逮捕された。産経によれば、5人は「面白半分で騒いだが、大きく報道され、大変なことをしたと反省している」と供述しているという。
高松市の「告訴」も、高松北署の「逮捕」も「一罰百戒」が狙いなので、こんこんと説教され、不起訴処分で終わる公算が強いが、遠慮することはない。ちゃんと起訴して「前科」を付けてあげたらどうか。「成人式で一升瓶をがぶ飲みし、市長にいたずらした」という恥ずかしい容疑事実とセットで。
◇仙台で起きた筋弛緩剤事件は、箍(たが)が外れたという表現すら当たらない凶悪犯罪である。
今日も毎日と東京が続報を1面トップに掲載。毎日は、厚生労働省が事件の再発を防止するため、全国の都道府県・政令市などに対し、病院などでの毒薬・劇薬の管理徹底を指導するよう通知した、と報じている。東京は、容疑者の犯罪に関連する新事実を報道。
◇こちらは、箍(たが)がゆるんでいたと言うべきか。米国子会社のリコール問題に揺れるブリジストンが社長交代を発表、朝日は「経営陣の刷新で事実上、ファイアストン問題にけじめをつけた」と論評している。
この「けじめ」は何を意味するのか。ちなみに他紙は、「『引責』が極めて濃厚」(読売)、「(ファイアストン問題で)責任をとったものとみられる」(毎日)、「事実上の引責辞任とみられる」(東京)などと報じているが、1面トップに持ってきたのは朝日のみ。
◇NTTや電力会社、鉄道会社に電柱や共同溝の通信業者への開放を事実上義務づける政府のガイドラインがまとまった、と日経が報じている。NTTなどが「向こう5年以内に設備のすべてを利用する予定がない限り、利用申し込みを拒絶できない」ようにするという。
【経済・IT】
●「億」が見えてきた
総務省の発表によると、昨年末時点の移動電話の加入契約件数は6,388万3,000台に達し、普及率(人口比)は50.3%と初めて50%を突破した。
急速な普及の主役は「iモード」に代表される、インターネットに接続できる端末。一時伸び悩んでいたPHSも、高速データ通信機能が見直され、「音楽のダウンロードや映像配信などの新しいサービスを乗せる端末として再評価されつつある」(朝日)という。
5月からは次世代携帯電話(IMT-2000)が登場。契約件数1億突破も視野に入ってきたようだ。
◇インターネット博覧会「楽網楽座(インパク)」の初日の閲覧者数は約25万人。世代別では40代が24.0%とトップで、40歳以上が全体の5割を超えた、と東京が報じている。オジサン、オバサンたちがインパクに群がったワケは?
◇ソフトバンク(9984)株式の時価総額が11日、遂に1兆円を割り込み、「企業価値が20分の1にまで下がった」(産経)。株価が上昇すれば含み益は再び膨らむが、低迷が長期化すれば・・・。「資金調達など経営面への影響も指摘」(産経)されており、IT革命の旗手を自任する強気の孫正義氏も心穏やかではない?
【トピック】
●「独立性」を放棄?
6日に開かれた経済財政諮問会議の初会合の議事要旨が11日、公表された。初回とあって、各委員が持論を披瀝し合う形式的な会合にとどまったが、そんな中で微妙な発言を行ったのが日銀の速水優総裁。「金融政策運営の考え方についてアドバイスを受けたい」と発言したのである。
日銀内には「金融政策を諮問会議で議論することについては、『日銀の独立性を脅かしかねない』と懸念する向き」(読売)もあり、日経(6日朝刊)によれば、同会議で総裁は「金融政策の話が出たら、私の発言は外してほしい」とも述べていたという。
にもかかわらず、「アドバイスを受けたい」と申し出た総裁の真意は?
たぶん、速水氏もご存知だと思うが、この会議の委員の大半は、ゼロ金利の解除は間違いだったとみている。今後の議論で「ゼロ金利に戻せ」というアドバイスが、速水氏を除く全委員の総意として示されたら・・・
株価の1万3,000円割れと支持率2桁割れが実現したら、森喜朗首相の首は危うくなる。日銀がゼロ金利復活に追い込まれたら、速水総裁のクビは飛ぶ。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2001/01/12
09:01
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