情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●少しは良くなるの?
◇ブッシュ政権の誕生で日米関係はどうなるのだろう。読売と米ギャラップ社の日米共同世論調査によると、現在の日米関係について「非常に良い」「良い」と回答した人が日本47%、米国64%で、米国が日本を17ポイントも上回っていることが明らかになった。相手国に対する信頼度も米国(75%)が日本(45%)を大幅に上回った。
来日時にテレビ出演などで好印象を与えたクリントン大統領は、実は大の日本嫌い(筆者の印象です)。経済摩擦などで徹底的に日本を叩き(ジャパン・バッシング)、外交でも日本を無視する(ジャパン・パッシング)作戦をとり続けた。
新しく政権の座に就くブッシュ氏はどうか。まだよく分からないところがあるが、共和党政権の対日姿勢は民主党政権ほど過激ではない。ブッシュ氏の父親が大統領だった時、日米構造協議などで日米関係がガタガタしたが、ブッシュ・パパは穏健路線で日本から巧みに譲歩を引き出した。
ブッシュ・ジュニアもパパの路線を踏襲すれば、日本側の数値も米国並みに上昇していくはずだが・・・
◇そのブッシュ次期大統領の前任者、クリントン大統領が「最後の大仕事」と張り切って準備を進めてきた北朝鮮訪問が見送られることになった。毎日によれば、ミサイル開発問題の妥協点が見出せなかったためで、ブッシュ次期政権が米朝接近に慎重なことも影響しているという。
米朝頭越し外交に不安を抱いていた日本の外務省は、さぞかし安堵していることでしょうな。
◇官公庁や大半の企業は昨日で仕事納め。昨夜の歓楽街は、遅くまで酔客と空車のタクシーでごった返していた。
お陰で今日の1面トップはどの新聞も「これがトップ?」と首を傾げたくなるような代物。読売、毎日以外の紙面を紹介すると、
朝日<硫黄島基地を民間利用、東京都が検討>
産経<外国人参政権付与賛成決議の撤回要請、自民議連>
日経<超大型旅客機、三菱重工、開発に参加>
東京<期待のインフルエンザ新薬、保険適用なく病院「二の足」>
こんな具合である。
が、それでもなお新聞記者たちは、年末・年始のネタ探しに東奔西走。ドッグ・イヤーのこの時代に、未だに元日のトップを「お化け(強烈なスクープという意味)」で飾りたいという時代遅れの特ダネ志向から抜けきれないらしい。
そこで、本欄の読者諸兄だけにそっと耳打ち。31日か1日の某紙トップ記事はどでかい経済記事になりそうです。その解説は・・・、1月4日までお待ち下さい。
【トピック】
●再破綻の責任は?
北朝鮮系の信組では最大規模の朝銀近畿信用組合が事業継続を断念、今日、金融再生委員会に対し、金融再生法に基づく破綻処理を申し入れる。
朝銀近畿は、1997年に近畿地区の5信組が合併して発足。翌年には破綻した朝銀大阪信組の事業を約3,500億円の公的資金とともに受け継いでおり、「事実上の2次破綻」(朝日)ということになる。
この朝銀大阪の破綻処理スキームを在日日本朝鮮信用組合協会(朝信協)と一緒になってまとめあげたのが大蔵省。この処理策をまとめた際、「責任解明が不十分なまま公的資金を投入するとはけしからん」と批判の声が上がり、国会で追及を受けた経緯がある。
今回も公的資金の追加投入は必至の情勢で、国会でも再び追及を受ける可能性があるが、当の大蔵省(財務省)は「金融の企画部門は金融庁の所管になっていますので」と逃げ切ってしまうんでしょうな、きっと。
余談だが、このニュースを最初に報じたのは昨夜のTBS(東京放送)。関西興銀・東京商銀破綻をスクープしたフジテレビといい、このところ民放勢の健闘が目立つ。
【おまけ】
●超弩(ど)級のミレニアム・スクープは?
今年最も印象に残った新聞記事といえば、毎日が放った<旧石器発掘ねつ造>報道。11月5日朝刊トップを飾ったこの超弩級のスクープには、他社の特ダネを低く評価する性癖のあるライバル記者たちも脱帽、「凄い!」と拍手を送った。
正月の「お化け」がどんなに凄い内容でも、来年の新聞協会賞(特ダネ部門)はこの記事で決まり、である。
が、不肖メディア批評家として今年最後の問題提起。スクープ自体にイチャモンを付けるつもりはないので、毎日の方々も冷静に読んでいただきたい。
毎日は、遺跡発掘現場にビデオカメラと写真機材を備え付け、調査団長の“犯行現場”をカメラに収めた。日時は10月22日午前6時半過ぎ。
そのスクープの掲載が11月5日にずれ込んだのは、疑惑を確かなものにする、つまり本人に捏造の事実を認めさせる必要があったからだ。
慎重を期した丁寧な取材姿勢には頭下がる思いだが、その間の報道姿勢にはいささか疑問が残る。この調査団長が10月27日に「70万年以前や約60万年前の石器を発見した」と発表した際、発表内容通りの記事を紙面に掲載した点だ。
この時点では、本人からまだ確認が取れていなかった。だから、とりあえず記事にせざるを得なかったということなのだろうが、毎日は既に動かぬ証拠を押さえていた。にもかかわらず、捏造の疑いが極めて濃厚な発表をそのまま記事にするのはいかがなものか。
あえて「ボツ」にするなど、別の対応があってしかるべきではなかったか。もちろん、この報道が超弩級のスクープ自体の評価を低めることにはならないが、「画竜点睛を欠く」といわれても仕方あるまい。
筆者はこう思うが、読者の皆さんのご意見は?
[メディア批評家 増山広朗]
※好評の人気コラム「瓦版一気読み」の次回更新は1月4日です(編集部)
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/29
09:06
|