1998年6月に日興証券(8603)が米トラベラーズ(現シティグループ)と資本提携を決断して以来、同社とメインバンクの東京三菱銀行(8315)の冷戦が続いている。今年初めには「関係修復」との観測が浮上したが、結果的に“21世紀”に持ち越しとなった。そこには、「黒い目の宇宙人」の異名を取る金子昌資・日興社長が三木繁光・東京三菱頭取を翻弄する構図が透けて見えてくる。
●交渉凍結を指示?
兜町では、国際畑一筋の氏家純一・野村証券社長が「黒い目をした外国人」と呼ばれる。一方、金子社長は自らテレビCMの主役を演じるなどユニークな施策を連発することから、「黒い目の宇宙人」の渾名が付いた。
関係者によると、金子社長は2000年1月の証券担当記者との懇親会で、「東京三菱との関係修復が最重要課題」と言い切った。これを受け、日興が保有する日興アセットマネジメント株式の東京三菱への売却が修復の第1弾になるとの予測が強まった。水面下での交渉は断続的に続いているが、東京三菱の出資比率や投資信託の銀行窓販比率など細部を詰めると、金子社長が首を縦に振らないという。今月に入ると、兜町には「三木頭取が交渉凍結を指示した」との憶測も出始めていた。
●黙殺された朝日報道
こうした中、17日付朝刊で朝日新聞が「東京三菱、日興と投信で提携」「子会社(=日興アセット)株買い増し」「関係修復図る」と報じたから、兜町は騒然となった。朝日が何を根拠に報道したのは定かではないが、金子社長が怒り心頭に達したのは言うまでもない。社内外に「まったくの誤報」と触れ回ったから、大手各紙は朝日の報道を黙殺した。逆に、毎日新聞は「東京三菱・日興、関係修復なお遠く」(23日付朝刊)との記事を掲載するなど、両社をめぐってはマスコミも混乱に陥っている。
金融界には、「ワイル会長が退任した後は、シティは日興を切る可能性が強まる。そのときは、日興は東京三菱に泣きつくしかない」(みずほフィナンシャルグループ幹部)との見方も根強い。しかし、金子社長の言動や行動からすると、東京三菱とは一線を画すというポリシーは微動だにしない。日興は2001年10月をめどに持ち株会社制に移行、金子社長は事業持ち株会社の最高経営責任者(CEO)として君臨することになりそうだ。そうなると、東京三菱にとって、「黒い目の宇宙人」はますます手強い存在になるのではないか。
■URL
・日興証券
http://www.nikko.co.jp/
・東京三菱銀行
http://www.btm.co.jp/
・三菱東京フィナンシャル・グループ
http://www.watch.impress.co.jp/finance/map/bank/note/mitsubishi.htm
(兜太郎)
2000/12/28
10:50
|