情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●病む先生、悩む女性?
21世紀まであと5日。年の瀬恒例のビッグイベント・予算編成後の解説記事も紙面から消えて、各紙のデスクはネタ不足で紙面づくりに悩む最悪の時期でもある。それだけに現場取材の敏腕記者は、特ダネを売り込むには絶好のタイミングなのだが・・・。
まず、発表記事から。読売は「大分県で起きた一家6人殺人事件で、15歳の容疑者が医療少年院に送致」という大分家裁で開かれた審判の記事。昨日は愛知県豊川の主婦刺殺事件でも17歳の少年が同じく医療少年院に送致されるという判決が下ったばかり。現行の少年法ではやむを得ない判断とはいえ、残虐過ぎる行為だけに「重症の行為障害認定」に矛盾を感じるのは筆者だけだろうか。
◇東京も「病む先生、悩む女性」と派手な見出しで、文部省と人事院の調査結果。文部省は激増する教師のわいせつ行為で懲戒処分が倍増していることを公表した。一方、人事院は、「国家公務員が職場で受けたセクハラ行為に関する調査で、女性で7割、男性で約4割が、1年余りの間に少なくとも1回以上、性的なからかいなどを受けた」というもの。この調査では、異性から受けたかどうかははっきりしないが、女性はともかく、男性が訴えた割合が多いのはびっくり。こう書くのもセクハラかも・・・。
◇毎日は、「働く女性に育児支援策」。森内閣が教育改革に続く重要政策テーマとして近く正式に表明するというもの。「少子化」傾向に歯止めをかけるためというが、女性票を獲得するための選挙対策の一環とも思える。それならば「育児」ではなく、子だくさん夫婦は税金不要とか「子づくり」支援を優先するべきではないですか。
◇日立製作所(6501)が確定拠出年金の日本版「401k」を5万7000人の全社員を対象に導入する、と産経が企業ネタをスクープ。「大手の企業がすべての社員を対象に導入に踏み切るのは初めて」というが、日立は、家電メーカーのなかでも「リストラ対策」などを真っ先に実施している。「なんでも初めて」はこの会社の伝統です。
◇企業ネタと言えば、日経だが、「三菱信託銀行(8420)と東洋信託銀行(8407)が年金など法人信託業務のうち主力の資産管理部門を統合する」と報じている。
◇朝日は、閉鎖的だったNTT(9432)の批判をかわす、方針転換の記事。NTT東日本とNTT西日本は、光ファイバー網を、「東京めたりっく通信」など、他の通信事業者にも有料で開放する方針を決めたという。「開放」によって通信料金がどこまで引き下げられるのか。きょうのトップは「社会部ネタ」(読売、東京、毎日)と「経済部ネタ」(産経、日経、朝日)とが見事に分かれた。
【IT】
●「インパク」の知名度は?
政府主催のインターネット博覧会が大晦日(31日)から始まるが、「開幕直前にもかかわらず、知名度は低く、盛り上がりを欠いている」と、読売が「デジタルトレンド」の欄で報じている。
そう言えば、最近テレビを見ていると、お茶を飲みながらぎごちない動作で、マウスを動かしているワイシャツ姿の森サンがよく登場する。あれ「おーい、お茶」という例のお茶園のコマーシャルだと勘違いしていたが、「インパク」とは知りませんでした。政府は「インターネット普及の起爆剤に」と期待しているようだが、「イット」総理のあのコマーシャルでは”インパクト“に欠けるのは無理もない。
◇きのう、この欄で伝えたとおり、NHKがインターネットを使って、定時ニュース番組や全国の天気予報などの配信を開始したが、民放連の氏家斎一郎会長は「受信料をとって民間のように何でもやられたらたまらない。NHKの肥大化につながる」という猛反発するコメントを発表した。このバトル、越年は必至です。
【トピック】
●孫社長、ネット株投資で強気発言
「ネットバブルの寵児」として話題の尽きないソフトバンク(9984)の孫正義社長が朝日のインタビューで「ネットバブル崩壊後の心境」を語っている。朝日によると、「成長期の産業に見られる過度期の現象で、長期的にはネット関連の株価は再び上昇する」と相変わらず強気の姿勢を崩さない。さらに、ソフトバンクの投資戦略に陰りも指摘されることについては「全体の株価が下がった今は、むしろ投資のチャンス」とも。株投資をまるで豆腐のように“イッチョウ”“ニチョウ”と数える孫さん、年初に5兆円もあった含み益が、今は1兆円ほどに減っても「太っ腹」は変わっていないようだ。
◇山形県立川町で雪崩にあって生き埋めになっていた東北電力(9505)の社員らが凍死(朝日ほか各紙)。山口県ではジョギング中にガソリンをかけられて、中国電力(9504)の社員が焼死した(朝日ほか各紙)。不幸に遭遇したのが電力会社の社員というのは偶然だが、痛ましい事故や事件が後を絶たない。ご冥福をお祈り致します。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/27
09:05
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