情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●「電子マネー」で合従連衡
新型の「電子マネー」の事業化を狙い、ソニー(6758)、NTTドコモ(9437)、さくら銀行(8314)、トヨタ自動車(7203)など11社が合弁会社を設立し、来年10月からサービス事業を共同で推進する。産経、東京が1面トップで掲載しているが、朝日、読売などは経済面での極めて地味な記事。とくに、読売は、産業情報の寄せ集めコーナーのベタ記事で、うっかり読み飛ばしてしまうほどの軽視ぶり。洒落ではないが、読み取り装置にかざすだけで決済できる非接触型ICカードを製造するソニーなど、日本を代表する企業が共同で取り組むというものだが、この新兵器、思うような成果が出てこない電子マネー事業の“切り札”となるのか、新聞各紙の扱いがバラバラのように、利用限度額や偽造、紛失した時のプライバシー問題など実用化までの課題も多い。
◇日経は、「新日本製鉄(5401)が、トヨタ自動車などの主要需要家と製造や販売、物流情報を共有するサプライチェーン・マネジメント・システムを構築する」と報じている。鋼材の生産・販売コストを大幅に削減するのが表向きの狙いだが、「取引に介在する総合商社の中抜き」が本音である。IT革命は日本的な商慣習を破壊すると言われているが、これで、総合商社は「冬の時代を」を飛び越えて、「消滅する時代」に突入することになる。
◇教育問題に熱心な読売は、「具体性に欠き、まるで寄せなべみたい」と批判の声もある「中央教育審議会」の提言を取り上げている。
◇朝日は、埼玉県庄和町にある精神病院の「朝倉病院」で、不必要な患者にまで診療報酬の高い輸液の投与を繰り返していたという社会部の独自ネタを掲載。医師による個別の指示ではなく、看護婦に患者を選ばせていたことを関係者の垂れ込みらしき情報で明らかになり、ずさんな治療ではないかと追求している。しかし、医療報酬の不正請求などが行われていたかどうかはこの記事からは分からない。
◇「検察庁は、歩行者が青信号で横断中に右左折車が横切らないようにする歩者分離式の信号機を増設する」(毎日)。「赤信号みんなで渡れば・・・」ではなく、歩行者優先は当然のことです。
【IT】
●NHKがネットでニュース
NHKがインターネットを使って、きょう26日午前11時から定時ニュース番組や全国の天気予報などの配信を開始する(朝日ほか各紙)。BSデジタル時代を迎えて「放送と通信の融合」を狙ったものだが、これまでシドニー五輪などの提供を除いて実施していなかったのは「受信料をとって民間のように何でもやられたらたまらない」という放送業界の声が強かったからだという。NHKにしてみれば、いかにも “国営”放送局らしい自粛だが、国民的な関心はこれで放送と通信の垣根が本当に無くなるのかどうかです。
【トピック】
●読売の “広告塔”は5億円
巨人の松井選手が5億円プレーヤーに。マリナーズに移籍が決まったイチロー選手、佐々木投手に次ぐプロ野球史上3人目。さすがに読売は“広告塔”の松井選手だけに、1面中央の囲みで大きく取り上げ、トップの中教審の記事より目立っていました。うらやましい限りですが、プロ野球選手の年俸はサラリーマンで言えば「退職金の前払い」と同じこと。読売新聞社長などを務めて、昨年12月に亡くなった小林与三次さんの「遺産総額が88億円」(朝日)と報じていたが、それに比べれば驚くほどの金額ではない。
◇「本田技研工業 (7267)が日産自動車(7201)を抜いて、国内の今年の年間販売台数で初めて2位に浮上することが確実になった」(毎日、産経ほか各紙)。11月までの台数でも本田が8000台近く上回っていたというが、カウント・ダウンはあと6日。ゴーン・マジックも販売台数までは及ばなかったようだ。
◇年の瀬になると,各紙が「今年の10大ニュース」を発表するが、朝日がホームページで募った結果、トップは「雪印乳業(2262)の食中毒事件」だった。その詳細をわざわざ1面のコラム「天声人語」で紹介しているのが面白い。なぜ、大きく紙面を割いて取り上げないのだろうか?
◇性的不能治療薬「バイアグラ」の処方を受けた国内の患者数が昨年3月の発売以来、約37万人に達したと発売元のファイザーが推計(毎日)。ちなみに、毎日の世論調査で2001年のイメージを漢字2文字で表現すると「混迷」がダントツ。次いで「停滞」「変革」「衰退」と続く。新世紀も元気でがんばろう!
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/26
09:05
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