FINANCE Watch
景気配慮型予算編成の限界露呈~2001年度政府案

  政府は24日、2001年度の一般会計82兆6,524億円という6年ぶりの減額予算案を決めた。減額予算とはいえ、政策的経費の一般歳出は過去最大の48兆6,524億円を確保し、IT関連には6,000億円の重点投資をする景気配慮型予算になった。政府は新規の国債発行額を抑制したのも売り物のひとつにするが、来年度末の国債残高は389兆円に膨らむ。平成不況下で繰り返してきた財源なき景気刺激策の行詰りが深刻になってきたのは明らかだ。

  宮沢喜一蔵相は、来年度予算案の力点を(1)景気を自律回復軌道に乗せること(2)21世紀の発展基盤のための投資(3)新規財源債(国債)の抑制―の3点に置いたことを、繰り返し強調した。だが、現実には、こうした理屈が後づけされたのに過ぎない感も否めない。小渕前内閣発足以来の政策総動員体制で、景気を必死に支える政府の経済運営を改めて予算面で示した。

  ●抑制には程遠い
  過去2年間と異なるのは、これ以上の国債増発はわずかでも避けたいという政治的な意図がにじみ出ていることだ。国債発行額は今年度当初比4兆2,920億円減額の28兆3,180億円。このうち赤字国債は19兆5,580億円と3年ぶりに20兆円を下回った。国債発行を抑制したことは事実だが、今年度は金融安定化対策の財源として4兆5,000億円を交付国債として国債費に計上してた。この分が来年度予算で不要になるわけで、正確にいうと「国債発行を抑制した」のではなく、「国債発行を増やさずに済んだ」ということだろう。

  「景気配慮」とはいえ、すでに公共投資が経済成長に及ぼす影響(乗数効果)は低下の一途をたどっている。そうした中、公共事業関係費で2000年度とほぼ同額の9兆3,625億円を配分。このうち、「21世紀の発展基盤の構築」のための日本新生プランの重点分野であるIT、都市基盤、環境、高齢化対応の4分野に3兆6,000億円の配分を決めた。さらに不測の事態に備え公共事業等予備費3,000億円を3年連続で計上している。

  前年度当初並みとはいえ、今年度補正予算での社会資本整備2兆5,000億円を織り込めば、明らかに来年度下期は公共事業の支援が薄れていく。しかも、国の一般会計予算と同時に発表した地方財政計画では、地方単独事業を今年度当初予算比で1兆円削減し、17兆5,000億円に減額している。

  ●個人消費に楽観シナリオ
  自民党の亀井静香政調会長が、「国の景気対策と地方財政は、(実際は)財政再建に向っている」と財政首脳会議で不満をぶちまけたが、それがますます深刻になっている。「公需で景気を下支えする」路線を政府は1990年代に入って一貫して取り続けているが、現実には地方自治体の公共事業が景気を支えてきたといってよい。

  “我田引鉄”の整備新幹線に事業費750億円が計上されたが、所詮、地方の補助事業や裏負担があってこそ、公共事業は最大限に稼動するものだ。米国景気の失速懸念など海外要因に不透明感が漂うなか、宮沢蔵相は「日本への影響は少ない。個人消費は直接に海外要因の影響を受けない。補正は想定していない」と明言した。

  蔵相発言の真意を咀嚼(そしゃく)すれば、次のようになるのだろう・・・。「公共事業は今年度補正後に比べて少ないが、十分に用意する。事業が途切れる年度後半までに個人消費が復活し、日本の景気は自律回復軌道に復帰するので、米国経済の調整が進んでも日本経済の足取りは確かさを増す」―。しかし、株価の不調が示すように、財政再建のあてもない楽観的とも言えるシナリオに、投資家、国民が納得いくのだろうか。

■URL
・平成13年度(2001年度)予算政府案
http://www.mof.go.jp/seifuan13/yosan.htm
・一般会計はマイナス2.7%~大蔵、来年度予算案を内示
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/12/20/doc1474.htm
・野に入ってきた消費税改革~税制改正の“読み方”
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/12/18/doc1433.htm

(北見優)
2000/12/25 11:09