FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~夢のまた夢も夢

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●小手先改革に失望
  政府は24日の臨時閣議で2001度予算の政府案を閣議決定した。

  「赤字国債19兆5580億円、残高177兆、財政悪化一段と」(読売、東京)

  「省庁再編効果見えず、国債依存34%に財政危機続く」(朝日)

  毎日、産経、日経も1面ほかで予算関連の解説記事を大きく扱っている。とは言うものの、ここ数日間、復活折衝セレモニーの段階でも詳細に報道していた予算案の記事を焼き直して集大成しているだけのもの。

  いよいよ世紀末も押し詰まり、のんびり新聞を読む暇もない方には、毎日の「新世紀予算・私の採点」をはじめ、東京の「2001度予算案の通信簿・首相1年生森喜朗君」や産経「識者から見た13年度政府予算案」などで有識者が語っているコメントを読めばよく分かる。「夢がない」(西沢潤一・岩手県立大学長)、「ばらまき型」(翁百合・日本総合研究所主席研究員)などおおむね辛口批評だが、石原慎太郎・東京都知事に至っては「日本という国が何をやろうとしているのか分からないようだ」と相変わらず森内閣を手厳しく批判している。「小手先改革で展望がなく、森君がっかりだ」(東京)というのが予算案の総括。新世紀になっても夢も希望も持てないようでは、「一体どうすりゃいいのさ森サン」(庶民の声)・・・。

  ◇予算以外での1面トップは毎日が「宝くじ関連の財団法人に所管官庁の自治省から5年間で67人もの天下り」。次官並みの報酬を受け取っているケースもあって、流れが見えにくい「宝くじマネー」を追求している。

  この記事、その天下り役人の汚職でも発覚していれば、それこそ特ダネなのだが、「だからどうなんだ」と開き直られればそれまでのこと。見出しに「宝くじ」の活字が躍っているだけに、最初は2億円の夢をぶち壊すような記事と思ったが、ちなみに大晦日に当選番号が発表される「年末ジャンボ宝くじ」には何の影響もありません。念のため。

  ◇防衛庁が、日米間の枠組みにロシアや中国などを加えた多国間で日本近海における初の人道的共同訓練の実施を目指す方針を固めた、と産経が取り上げている。

  ◇日経は、石油業界最大手の日石三菱が、資本参加している帝国石油と新会社を設立してガス小売事業に乗り出すことを報じている。石油、電力を含めたガス業界の再編の予兆として今後の動きに注目したい。

  【IT】
  ●auのネット接続またトラブル
  きのう、携帯電話の「au」のインターネット接続サービスで、約4時間にわたりネット上のサイトに接続できない状態になって「23万人の利用者に影響が出た」(読売ほか各紙)という。

  KDDI(9431)の子会社では「中継施設のコンピュータトラブルが発生したため」と説明しているが、11月下旬のサービス開始直後にも接続トラブルが起こっているだけに、「au」の将来的な安否も気に掛かる。現在「au」の利用者は30万人ほどで、筆者もその1人。そろそろ広末涼子や藤原紀香チャンがコマーシャルしている別の機種に切り換えようと思っていた矢先です。

  ◇IT基本法が成立し、国を挙げてのIT革命が進むように見えるが、毎日は “論争論点”の欄で「IT革命」について、群馬大社会情報学部の下田博次教授にインタビュー。教授は「行政主導でIT革命が進むのか、インターネットの基本は市民にある」と警鐘を鳴らす。総額6,000億円ものIT関連の政府予算案の中身を比べながらこのインタビュー記事を読むのも興味深い。

  【トピック】
  ●オペラオーでも売上げダウン
  「勝ち組」や「負け組」がより鮮明になったのも今年の特徴。20世紀最後のGIレース有馬記念でも、人気どおり本命のテイエムオペラオーが優勝を飾った。しかも年間で重賞8連覇という無敵の「独り勝ち」。とかく競馬記事の扱いが地味な朝日までスポーツ、社会面で派手に掲載するほど。しかし、「不況に強いギャンブル神話は消えた」(毎日)と中央競馬会などの関係者は率直に喜べない。今回の有馬記念の売上げは前年比144億円もの大幅ダウン。年間売上げも4年連続で減少しているからだ。失業者数が一向に減らない限り、バブル絶頂期のような「あの夢をもう一度」とは夢のまた夢です。

  ◇もう少し明るい話題。コンビニ最大手のセブン~イレブン(8183)が、きょうから主力商品の「おにぎり」を10~20円程度値下げする(日経)。マックの65円半額バーカーで売上げが伸び悩んでいたからだが、日本マクドナルドの藤田田社長に聞いたら「それならうちは45円に値下げしてもいい」とコンビニいじめに余念がない。世知辛いがこれが現実です。

  ◇最後はもっと明るい話題をひとつ。クリスマスイブの昨夜、「東京・丸の内の夜のオフィス街が光のアーチで飾られた」と産経が1面カラーで取り上げている。「東京ミレナリオ」と呼ばれ、元旦までの新世紀到来をライトアップして祝うという。丸の内街と言えば中年族は“三菱村”だが、光のアーチをくぐり抜けながら、三菱重工(7011)爆破事件や石油ショックで東京の夜が真っ暗闇になったあの当時を思い浮かべるのはオヤジ世代だけなのか・・・。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm

2000/12/25 08:58