FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~含み益が吹っ飛んだ!

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●頼りにならない郵政省
  NTT東日本のDSL(デジタル加入者線)事業者イジメに公正取引委員会のメスが入った。

  朝日と毎日がトップで報道。新規参入を妨害した上に、都合の良い基準を設けて「円滑な事業活動を困難にさせていた」疑いが認められたとして、公取委が警告に踏み切った。法的措置を伴う排除勧告については「証拠不十分」のため見送られたが、任意聴取からわずか2カ月半で結論を出す「異例の早期処理」は評価されていい(褒めすぎかな?)。

  これまで市場を独占し超過利潤を貪ってきたNTT(9432)グループの優越的地位に風穴を開けるのは、「内外の改革圧力」と公取委の鋭角なメス。NTTの政治力に及び腰の郵政省は・・・やっぱりアテになりませんな。

  ◇その郵政省の外郭団体である「郵便貯金振興会」が、5年間で1億2,000万円もの所得を誤魔化していたことが分かり、追徴課税処分を受けた、と東京が報じている。同振興会は郵政省の有力な天下り先。脱税の“決済”をしていた振興会首脳の中には郵政省OBも当然いたはずだ。嗚呼(ああ)、情けなや。

  ◇生保トップの日本生命保険と証券トップの野村証券(8604)が、野村の窓口での保険販売で提携する。産経がトップで、朝日、読売、日経、東京も1面や経済面で報じている。野村が来秋にも変額年金保険など証券類似型商品の窓販を開始、日生がこれを全面支援するという。

  ◇中央省庁の再編に伴い、国の行政機関が行っている施策や事業の必要性・有効性・効率性を自己採点するための「政策評価制度」が新たに導入されることになったが、その法案の原案を読売が“スクープ”している。

  巨費を投じる大規模事業などについて「実施前の企画立案段階で事前評価を行うよう義務づけているのが特徴」というが、評価の客観性を確保できるかがポイント。仏をつくっても魂を入れなければ・・・

  ◇トヨタ自動車が今後3年間で部品調達を約3割(最大1兆円)削減する計画をまとめた、と日経が報じている。「高収益の続くトヨタが一段の原価低減に踏み切ることで、国内製造業のコスト削減競争が激化するのは必至」というが、競争は既に激化している。

  トヨタなら当たり前の「3割削減」記事を、あえてトップに持ってきた日経の狙いは・・・

  【IT】
  ●寄せ集め
  朝日によると、2001年度予算の大蔵原案に盛り込まれたIT関連予算は「予算総額の0.7%にあたる6,000億円超」。港湾予算(3,500億円)や空港予算(1,600億円)を上回り、IT革命の推進を唱える森喜朗首相の面目を保った。

  が、その内容は、朝日が指摘しているように「寄せ集め」の域を出ていない。なぜか。ITの国家戦略(これにも問題はあるのだが・・・)は、省庁の垣根を飛び越え官邸主導でまとめられたのに、予算要求が従来通り縦割りで行われたからだ。竜頭蛇尾の結末は、IT戦略自体に「戦略」がないことに起因する。

  【トピック】
  ●歯止めかからぬ株安
  20日の東京株式市場で東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価(225種)が今年最安値を更新した。株価が1万3,000円台のまま低迷を続ければ、大手16銀行中11行の含み益が消え、不良債権処理が遅れるどころか、大型の企業破綻続出という最悪の事態も懸念される。

  株安の背景にあるのが、米国経済の減速と、国内景気の回復の遅れに対する懸念。持ち合い株の解消売りはとまらず、外国投信も売り攻勢を強めている。「景気刺激策の続行や、経済の構造改革の促進などを積極化すれば、景気回復への足取りも、よりしっかりしたものになり、投資家の不安心理も解消する」(読売)との見方もあるが、「株価を押し上げる『特効薬』が見当たらない」(日経)ことも事実。さらなるマイナス要因が加われば・・・。日本経済を破綻に導く「パンドラの箱」は、開いてしまったのだろうか。

  ◇来年度予算の復活折衝が始まった。課長折衝(20日)、局長折衝(21日)、大臣折衝(22日)と順を追ってランクが上がり、天皇誕生日(23日)を挟んで24日に政府案が決定される。

  ところで、課長折衝というと<各省庁の課長vs.大蔵省の主計官>の丁々発止のやり取りを連想しがちだが、要求官庁の課長と応対する大蔵省の担当者は課長補佐(主査)。局長折衝でも、大蔵省は課長(主計官)が応対、同格の折衝は大臣折衝だけなのだ。「何年も後輩の主計官にペコペコ頭を下げ、情けないったらありゃしない」

  要求官庁の局長のボヤキが聞こえてくる。

  裏話をもうひとつ。今日の朝刊には「科学技術庁(文部科学省)が要求していた超高速インターネット衛星の開発費92億円が復活した」(読売)ことが報じられているが、課長、局長、大臣の各レベルでの復活内容は大蔵原案を内示する前に決まっている。

  じゃあ、復活折衝は何のためにやるの? 要求官庁と政治家に花を持たせるためのセレモニーに過ぎないのです。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm

2000/12/21 09:13