与党がまとめた2001年度税制改正大綱は、住宅ローン減税の延長や株式譲渡益課税の源泉分離課税方式存続など、景気配慮の政策減税ばかりが目立ち、財政再建をにらんだ抜本的な改正に期待を寄せた向きには物足りない内容となった。「来年の参院選を意識した底の浅い税制改正大綱」など、マスメディアの論調も手厳しい。しかし、注目すべき点が全くなかったわけではない。大きな目玉のない内容の中で、近い将来の消費税改革に向けた道筋をおぼろげながらも敷いたという点は見逃せないだろう。
●退けられた外形標準
税制改正大綱は、自治省が導入を強く求めた外形標準課税について、「すべての法人がその事業活動規模に応じて薄く広くかつ公平に地方自治体の行政サービスの対価を負担するものであり、地方税として望ましい方向の改革」との基本認識を示した上で、「検討を深め、景気の状況等も勘案しつつ早期の導入を図る」と明記した。旗振り役である自治省の二橋正弘事務次官は大綱決定後の記者会見で、この文言を指して、「外形標準課税早期導入への筋道を付けることができた」と無邪気に喜びを表現したが、この受け止め方は的外れだろう。筋道が付いたのは、外形標準課税ではなく、地方消費税と考えるべきだ。
なぜなら、報酬給与額、受け取り分を除いた支払い利子など合算した「収益配分額」に、単年度損益を加えた「事業規模額」を課税ベースとして赤字法人からも徴税するという自治省の外形標準課税案を、与党の税制調査会は「課税ベースに問題あり」として明確に退けている。
●地方消費税を拡充
「この課税ベースでは業種間で不公平が生じる」とする各方面からの批判を踏まえ、自治省は今後、課税ベースの見直しを進めていかねばならないが、公平性の観点からそれを突き詰めると、課税ベースは自ずと企業の売り上げに限定することになる。それはつまり地方消費税なのだ。
「外形標準課税を広く議論した結果、望ましい方向性はやはり地方消費税の拡充であることが浮き彫りになったということだ。税制大綱はそれをにじませている」(政府筋)との声は強い。他方、税制改正大綱は消費税に関し、「消費者の便宜を図る観点から総額明示の普及に取り組む」と明記し、本体価格と消費税額を合算した金額を商品に記す総額明示方式への一本化などを促した。消費税改革までの時間は確実に縮まっているようだ。
■URL
・平成13年度税制改正大綱・予算編成大綱 (自民党)
http://www.jimin.or.jp/jimin/title.html
(野崎英二)
2000/12/18
10:25
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