【今週の主な政治日程】
▼19日(火)2001年度予算編成方針決定
▼20日(水)同大蔵原案内示
▼24日(日)同政府案決定
【政局の焦点】
●橋本氏は「トロイの木馬」
政局は、人事の季節も終わり、加藤紘一元幹事長の「反乱」が嘘だったかのように、例年と同じような予算編成の時期を迎えている。森喜朗首相もこれに安堵したのか、また大好きな料亭通いを再開した。しかし、亀井静香政調会長が「政局は超安定。気が遠くなるほど森政権は続く」というほど森政権が安定しているわけではない。第2次森改造内閣の目玉として入閣した橋本龍太郎元首相が内政・外交全般に渡って影響力を発揮、肝心の森首相の存在が日増しに希薄になっているからだ。森派会長の小泉純一郎氏は橋本氏の起用について当初、「大成功」と自画自賛していたが、橋本氏はどうやら森政権に入った「トロイの木馬」との見方が強まっている。
●3月に「橋本首相」誕生か
橋本氏が日頃常駐している総理府4階の沖縄開発庁長官室には、内外からの来客が引きもきらず、“橋本詣で”という状態が続いている。就任後早速、経済財政諮問会議のメンバーに注文を付けたほか、沖縄の米軍普天間飛行場の移転問題や北方領土問題にもインタビューなどで見解を表明するなど、「どちらが総理か分からない」との評判が日毎強まっている。各種世論調査で次期首相の期待度ナンバー1にもランクされ、3月の自民党大会で「橋本総裁(首相)」が誕生するとの見方も次第に有力視されつつある。
●悲哀をかこつ河野外相
逆に悲哀をかこっているのが河野洋平外相。「加藤の乱」終結直後は「ポスト森」の1番手とも目されたが、橋本氏の入閣でその座を奪われた感が強い。日ロ平和条約締結問題や沖縄の米軍基地問題をめぐる日米関係などの主要な担当分野でも橋本氏の介入を許すなど、存在感が「急速にかすんでいる」(野中広務前幹事長)。先日は自らの発案で刊行を計画した外務省文書「わが国の軍縮外交」について、同省に強い影響力を持つ鈴木宗男氏に一喝され、突然発刊中止に追い込まれた。また亀井政調会長の「ODA3割削減」要求にもほとんど反論できず、亀井氏に公然と噛み付いた鈴木氏に名をなさしめた。
●始まった亀井氏の凋落
その亀井氏も野中氏の「亀井降ろし」の画策発覚以来、影響力の低下が目立っている。公明党が要求した児童手当拡充に関する財源問題についても日替わりで言うことがくるくる変わり、発言の信頼性に疑問符がついた。ODA削減問題でも3%と言い値の1割に切り込まれ、「単に独断専行だったに過ぎない」との批判も出ている。野中氏の画策にも「愛のムチ」と平静を装っているが、橋本派や野中氏の強い影響下にある古賀誠幹事長が距離を置き始めていることで、亀井氏の凋落も始まったとの見方が支配的になりつつある。
●参院選後に加藤氏復帰の可能性
内閣不信任決議案に欠席するという「反乱」を起こし、「ポスト森」の有力候補の座から滑り落ちた加藤紘一氏だが、自民党党紀委員会でも野中氏の強い意向を反映し、不問に付された。以前この欄で指摘したように、やはり同氏の首は皮一枚つながった状況。同氏自身も「(自民党は)参院選後はどうなるか分からない」と周辺に再起を期す考えを強調しており、野中氏が自民党大敗後のカードの一枚として加藤氏起用の可能性を残していることは間違いない。古賀幹事長も野中氏の考えに同調しており、加藤氏が表舞台に復帰する場面も決してあり得ないことではないことを改めて強調しておきたい。
●参院選を控え民主党内に内紛
憲法問題をめぐって民主党内がぎくしゃくしている。横路孝弘副代表は16日、鳩山由紀夫代表が憲法改正に前向き発言を続けていることについて「今のような発言が続くようなら参院選は戦えない。代表を辞めてもらわなければならない」と発言、党の公式の場で同問題を取り上げる意向を示した。これに対し、鳩山氏も「重要な問題を避けるべきではない」と反論、今後もどう問題で発言していく考えを示すなど両氏の対立が高まっている。一方、鳩山氏と菅直人幹事長が提唱した民主、自由、社民3党による政権構想についても、自由、社民両党は「政権構想は参院選で勝ってから」(渕上貞男社民党幹事長)と気乗り薄で、選挙協力もほとんど進んでいない。この調子では、自民党内の混乱という政権獲りの絶好の機会を生かすことは難しい。
[政治アナリスト 北 光一]
2000/12/18
09:14
|