FINANCE Watch
コラム 瓦版一気読み~電車も引き際を誤ると大暴走

  情報は時とともに劣化する・・・

  【1面トップ】
  ●電鉄同士が正面衝突
  福井県を走る京福電鉄で上り電車が暴走して下り電車と正面衝突。運転手1人が死亡、乗客ら25人が重軽傷を負った。

  「心からお詫び申し上げます」。今年ほど企業のトップが深々と頭を下げるシーンを見たことはなかった。鉄道関係では地下鉄・日比谷線の脱線事故が記憶に新しいが、またしても、あってはならない事故が発生した。京福電鉄の社長らが謝罪の記者会見を行ったが、「定められた通りの定期点検を行っていたので・・・」と開き直るような発言が飛び出したのはびっくり。

  電車の耐用年数がどの程度なのかは別として、事故を起こした車両は70年以上も前に製造されたものという。しかも「老朽化によるブレーキ故障が事故の原因?」と東京はじめ各紙が報じている。電車も引き際のタイミングを誤るととんでもない暴走をするものだ。

  ◇70歳以上の高齢者に対し、来年からスタートする高額医療費支給制度で同世帯の複数の高齢者が入院した場合、それぞれの自己負担額が月3万円を超えたケースに限って、世帯合計の負担上限額を月3万7,200円に緩和する、と読売が取り上げている。ただ、夫婦どちらかが3万円を超えない場合は適応されないなど制度上の問題も指摘されている。

  ◇朝日は建設相の諮問機関である河川審議会の提言。「河川は氾濫するということを前提に治水対策をするべきだ」という答申内容。河川を甘く見てはいけないのは当たり前のことなのだが・・・。

  ◇毎日は日本国籍を保有することを正式に決めたペルー・フジモリ前大統領に対して「今でも英雄、早く帰ってこいよ」と初当選のときから支援し続けてきた地元・リマの貧民街の声を伝えている。読売もフジモリ氏の話題を9面で取り上げているが、「リマの日本大使館前で日本国旗を焼くなどの批判の声が強まっている」と毎日の報道とは正反対の囲み記事。

  ◇ブッシュ米次期大統領の国務長官に黒人として初めてパウエル元統合参謀本部議長を指名すると、産経が取り上げている。各紙も1面ほかで関連記事を掲載。

  ◇日経は企業の資金調達・返済の収支を示す財務キャッシュフローが今9月中間期で7割以上の企業が赤字(返済超過)となったことを報じている。企業が格付けや株価を意識して、グループ全体で有利子負債の返済を進めているためというのがその理由だが、厚化粧をしてもすぐに株価に反映するほど甘くはない。

  【IT】
  ●BSデジタルの「光と影」
  本格的に放送が開始されてから半月余り。読売がBSデジタルの手応えなどを3面で特集している。気にかかるのは量販店の「入荷のめども立たず、予約さえ受け付けられない状態」(フロア責任者)というコメント。BS放送を「見る」だけではなく「使う」ためには専用チューナーが必要になるが、今なおその在庫不足が続いているというのだ。番組などを配信するテレビ局と電機メーカーが信頼関係を築けなかったと記事では指摘しているが、本音は10万円程度の専用チューナーよりも1台50万円近くもするチューナー内蔵型テレビを買わせようとする家電メーカーの陰謀としか思えないのだが・・・。

  【トピック】
  ●省庁再編、看板より中身が問題
  来年1月からスタートする省庁再編を前に、各省庁とも看板の書き換えなど名称変更作業に追われていると読売がリポートしている。例えば建設、運輸など4省庁が統合する「国土交通省」は“書道の達人”といわれている扇大臣自ら毛筆で看板の文字を書くという。予算編成を目前に控えてご苦労なことだが、名前の下に「看板に偽りなし」とでも記してもらったほうが国民にはもっとわかり易いと思うのだが・・・。

  ◇彼や夫からのクリスマスプレゼントで、「期待する金額は平均3万996円、昨年よりも2万円以上も安くなった」と百貨店のプランタン銀座の調査結果で明らかになった(読売)。景気回復の遅れが影響しているとみられるが、「ユニクロ」ならばお釣りがくる。時節柄、心のこもった贈り物を探すのは難しい。

  [メディア批評家 増山広朗]

■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm

2000/12/18 09:04