情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●トヨタ、フォードが提携?
末尾に広報のコメント。「会ったのは事実だが、表敬訪問が目的。具体的なことは何も決まっていない」という。
会ったのは、トヨタ自動車(7203)の奥田碩会長と、米フォード・モーターのジャック・ナッサー社長。この会談で両者は「幅広い交流、協力を検討していくことで合意した」と、東京(中日)が報じている。ここから何を読み取るか。
記事を読むと、ハッキリしているのはフォード車の日本国内での販売協力だけだが、環境や高度道路交通システム(ITS)など幅広い分野での提携も模索されているらしい。既に右手でGM(ゼネラル・モーターズ)と握っているトヨタが、左手でフォードとどこまで握るか。続報が待たれる。奥田・ナッサー両氏は旧知の間柄だけに、意外な進展も?
このニュース、東京のほかに日経も1面のど真ん中で報じている。
◇その日経、トップ記事はこれまたクルマ。売れ筋車の不足に悩む日産自動車(7201)がスズキ(7269)から軽自動車のOEM供給を受け、軽自動車市場に参入する見通しになったという。
自動車市場占める軽自動車の販売比率は、3割を超え、今後も成長が見込まれている。日産が軽自動車の調達に走るのはごく自然な流れだが、たかがOEM。1面トップで扱うのはいかがなものか。
◇クルマの話題をもう1つ。保険会社が自賠責保険について、加害者の過失責任を甘く見積もったり、被害者の怪我や後遺症を軽く認定して適正な保険金額を支払わず、運輸省からの指摘で追加払いしたケースが過去10年間で57億円にも上った。こんな「払い渋り」の実態を毎日が報じている。
◇アル・ゴア氏の「敗北宣言」とジョージ・ブッシュ氏の「勝利宣言」で次期米大統領が確定、第43代大統領に就任するブッシュ氏が新政権発足に向けた準備作業に着手した。朝日、読売、産経がトップで報じている。
【IT】
●先送りされたNTT改革
通信市場の公平な競争の在り方について検討を進めてきた電機通信審議会のIT部会が14日、答申案を公表した。2001年中に実施すべき競争促進策として、NTT(9432)の光ファイバー網の開放や卸通信料金制度の導入などを挙げ、2003年までに成果が得られない場合、NTTの完全分離を検討すべきだとしている。
しかし、朝日によれば「競争の進み具合を判断する基準は明確ではなく、NTTにとって逃げ道を残した形」。政治力のあるNTTと、天下り先をNTTグループに依存する郵政省では最初から勝負にならなかった、ということか。
【トピック】
●デジタルと温(ぬく)もり
「寄せるデジタル・返すは人の底力」。毎年恒例の電通「2000年の話題商品・ヒット商品」のキーワードだそうで、「急速に進むデジタル化と、見直されつつある人間らしさが共存する時代」(毎日)と解釈するらしい。
「寄せるデジタル」は・・・、今さら解説の必要もないだろう。
では、「人の底力」とは。「生身の人間からわき出るパワー」のことで、シドニー五輪や無党派知事などのほか、パラパラやゴスペル、TBSドラマの「ビューティフル・ライフ」などがランクされている。
分かったようで分からない今年の話題・ヒット商品である。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/15
09:04
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