情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●辟易する「歴史的混乱」報道
まだ「奥の手」が残っているらしい。
次期大統領を選ぶ選挙人の数は538人。18日投票、来年1月5日開票という手順を経て米国の次期正副大統領が決まる。選挙人の内訳は、ブッシュ派271、ゴア派267。ジョージ・ブッシュ氏が僅差で勝つことが確定している。が、朝日によれば、選挙人の投票行動に規則で縛りをかけているのは全米51地域のうち26。残る25については、そう、切り崩しが可能なのである。
しかし、ゴア氏がそういうことはしないと言明しているので、「開けてビックリ!」とはならないようだ。投開票から36日間にわたった米大統領選を巡る混乱がようやく収束した。ゴア氏の「敗北宣言」でブッシュ氏の勝利が確定、2001年1月26日に第43代大統領に就任。8年ぶりに共和党政権が誕生する。
実際の選挙ではゴア氏が約30万票(この数字も疑わしいけれど・・・)も勝っていたのに、選挙人の数ではブッシュ氏が上回った。政権の正統性に「?」が付いたままの船出は、日本の現首相とよく似ているが、その辺の話は米国のメディアに任せておけばいい。
日本の読者の関心事は、民主党から共和党に移行すると、いったい何が変わるのか。あるいは何が変わらないのか。たとえば、在日駐留米軍や沖縄基地の問題、半島情勢への対応、米・EUがガチンコ状態にある環境問題への取り組み、さらには日米経済摩擦への対応等々、知りたいことが山ほどある。
まあ、あしたの朝刊には掲載されるのでしょうが・・・。
余談だが、連邦最高裁の決定が下された頃、第42代大統領のビル・クリントンは・・・、自ら強力に支援した北アイルランド和平合意の“その後”をその目で確かめようとベルファスト(北アイルランド)を訪問中だった。クリントン大統領の「最後の外遊」は、「過去を想う旅」と読売。
◇来年末にもスタート予定の次期CSデジタル放送に参入する放送事業者は18社。日経は、「ブッシュ大統領」を押し退けてこのニュースを1面トップに持ってきた。ついでに、CSとBSの違いやサービス内容なども紹介。18社の内訳を記載した表も付けてトップ記事に相応しい?ボリュームに仕立て上げているが、ちなみに“ニュース”は「18社」だけである。
【IT】
●期待と不安が交錯
あなたはIT革命に対し、「期待」と「不安」のどちらを強く感じてますか?
読売の世論調査によると、「期待」が45%、「不安」は42%で、「国民の意識がほぼ二分されていることが分かった」という。年齢が上に行くほど「不安」が強いというが、至極当然。こうした方々に、アノ商売上手な堺屋太一前経企庁長官が前回の経済対策で実現を訴えた「IT講習券」を配っても焦るだけである。
パソコンやネットに慣れてもらう前に、まずインフラを整備する。5年で米国並みになどと悠長なことを言ってないで、誰でも、しかも安くインターネットにアクセスできるようインフラを整えておけば、不安に想っている人たちは自らの意思でネット社会の扉を叩くはずである。
先日、10年も前に現役を引退した元団体役員と出会った。「インターネットというヤツに興味があって、パソコン教室に通っているんだよ」という。御年87。元気ですなあ。
【トピック】
●どっち向いてるの?
日銀が13日発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)で、企業が景気の先行きに慎重な見方を示していることが分かった。
現在の景気を支えているのは企業の設備投資。公共投資と個人消費の落ち込みをIT関連の設備投資がカバーしているわけだが、半導体市況は既に下落、IT関連業種には陰りが出始めている。
「12月短観で景況感が一服した背景にあるのが、IT分野の踊り場感」(産経)となると、踊り場の次は・・・。主要シンクタンクの2001年度成長率予測は、プラス成長では一致しているものの、「2000年度の伸び率の見通しより高くなる『加速派』と、伸び率が落ちる『減速派』が12機関の中でちょうど6対6に分かれた」と読売が報じている。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/14
09:06
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