FINANCE Watch
首を縦に振らない税制の“ドン”~株譲渡益の源泉分離存続危うし?

  株式譲渡益(キャピタルゲイン)の源泉分離課税の存続をめぐり、来年度の税制改正審議がヤマ場を迎えた。新聞各紙は「2年延長」で決着したかのように書き飛ばしているが、証券業界は「まったく予断を許さない状況」(日証協関係者)と引き締めに躍起になっている。関係者によると、税制の“首領”を自他共に認める自民党税制調査会の山中定則最高顧問(元会長)がなかなか首を縦に振らないようだ。

  ●延長論を一喝
  日証協は預貯金など他の金融商品も含め、総合金融税制が確立するまでの間、源泉分離の存続を要望。過去最高の130万人を超える署名を集め、自民党や大蔵省などにロビー活動を展開してきた。しかし、2001年3月末の源泉分離廃止は有価証券取引税の撤廃と引き替えに法律で既に決定した事項だけに、大蔵省は猛烈に反発した。原理原則を重視する山中氏も「昔に戻すことはまかりならん」と源泉分離の無期限延長論を一喝したという。

  山中氏の意を汲む形で、金融庁は先月、独自案を策定し、自民党に提出した。それによると、源泉分離を選択できる制度を維持した上で、申告分離課税の際の(1)税率引下げ(26%→20%)(2)翌年以降への譲渡損の繰り越し(3)長期保有株式の特別控除(4)源泉分離との年間選択制―を打ち出した。

  現行税制では個別取引ごとの事後選択が認められており、年間選択制の導入は証券各社にとっては面白くない話。しかし、日証協は金融庁案の全面支持に回り、両者はがっちりとスクラムを組んだ。

  ●大量の失望売りも
  一方、大蔵省も軟化姿勢をみせたが、1年間延長の容認までしか譲らない。悲願の酒税引き上げの断念に追い込まれるなど、今回は「負け」が目立つ同省主税局だけに、金融庁・日証協「連合軍」との間のミゾは容易には埋まらない。連合軍側は山中氏への接触を試みたが、「好感触はまったく得られていない」(関係者)という。

  5日に米ナスダック市場が過去最高の上げ幅を記録したのを受け、注目された6日の東京市場は小幅反発にとどまった。一時は414円高まで上伸したが、市場関係者が本格反転に自信を持てる地合いにはなく、結局194円高の1万4889円で終了。しかも、市場は源泉分離の2年間延長を織り込み済みのため、仮に実現しなかった場合には大量の失望売りも予想される。

  首相経験者を2人も起用した「重量」級の第2次森改造内閣には、株式市場は無反応だった。税制改正の政治力に限っては、閣僚など「十両」にすぎない。市場が注目しているのは、「永世横綱」の山中氏なのだ。キャピタルゲイン課税問題は今週末に最大の攻防を迎える。

■URL
・ウイークリー自民
http://www.jimin.or.jp/jimin/index.html
・株譲渡益の源泉分離課税は当面存続へ
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/17/doc724.htm
・アっと驚く?「源泉分離課税」存続
http://www.watch.impress.co.jp/finance/wadai/articles/001018-1.htm
・源泉分離の存続、2度おいしい兜町~クロス推奨で“ミニ特需”
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/10/18/doc731.htm

(兜太郎)
2000/12/06 17:04