情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●誰も振り向いてくれない~森内閣改造
昨日のこの欄で「盛り上がらない内閣改造」と書いたように、やはり新鮮味、期待度ともに森首相内閣には興味も無ければ、期待値もほとんどゼロに近いようだ。内閣改造と組閣関連を1面トップにした朝刊はナシ。いずれも1面の柱扱いが目いっぱい頑張って、といった趣である。もっと面白かったのは、産経は「大相撲決まり手増えます」(都内最終版、以下同)、朝日「ビデオ店で爆発高2逮捕」、東京「最古の類人化石発見」読売「冬の彩り満開・シクラメン出荷」、毎日「病棟にメリークリスマス・デンマーク人サンタクロースが都内の難病と闘う子供たちにプレゼント」・・・の各写真にすべて食われてしまっていることか。
加藤元幹事長のシラケ騒動も加わって、国民はすっかり嫌気が差している日本の政治。ま、もともと興味は薄く、何を今さらではあるのだが、一両日中にも決まる新内閣に対してこの有り様なのだからあとは推して知るべし。恐らくは内閣が正式に決まっても、ほとんど騒がれないと思われる。今の大臣って誰だっけ?みたいな会話が日常的に飛び交いそうだ。
◇毎日がトップで「信書配達・民間の部分参入容認」の記事。すでに予定通りの内容とはいえ、「2002年に法案提出、2003年から実施へ」と決め打ちしているのが注目されるべき点か。ただし、この報道によれば「一定重量以上の信書に限って参入を自由化」にとどまる見通しで、真の自由化ではまったくない。信書に限らず、郵政省が行っている各種サービスの不便さは多くの人が感じている。今や大激戦の場でもある宅配便も、1度、配達に来て留守だとこちらからその日に郵便局に取りに行っても夜遅くにならなければ受け取ることは出来ない。荷物を持ったまま配達車両が局に戻ってきていないからだ。民間業者だとドライバーのほとんどは携帯電話を持っている。ちょっと留守したときに配達されて不在だったら、すぐに連絡すればまもなく配達されるケースも多い。融通が利かず、消費者本位の立場にまるで立っていない郵政事業の一端が垣間見える。
◇朝日と東京はどちらも「600万年前の猿人化石・ケニア・人類祖先で最古」のトップ記事。ケニア地域博物館とフランス高等教育研究機関コレージュ・ド・フランスの合同調査隊が発見したとするもの。これまで最古とされていた化石よりさらに160万年は古い、という。気になったのは毎日や東京に掲載された大学教授のコメントで、「発見は野外調査では一流の人なので、大きな間違いはないだろう」といった趣旨のもの。えっ!と思いませんか。ついこの間の日本の一件だって“God's Hand(神の手)”と言われた人による偽装だったんだぜ。実績やらキャリアがすべて――の世界を象徴するような言葉でありました。
【IT】
●遅きに失した半導体改革
◇日経が「半導体情報の総合サイト・東芝など5社が取引市場」の記事を中面で報じている。「セミコンポータル」の名称で、来春には事業会社を設立、情報交換や取引も行う。この1年で急速に“業界の共同化”が進むセミコンダクター業界。競合企業同士の合従連衡はもちろん、今回のようなe-ビジネス化も当然進めていくべきではあろうが、なんとなく遅きに失した印象を受けるのは筆者だけか。だからこそ日経のこの記事も1面には掲載されなかったのではないか。
【トピック】
●ちょっと出しのジャブ・・・発泡酒税見送り
◇「発泡酒税見送り」は各紙で掲載。安価で気軽に購入できる発泡酒だが、そこに目を付けて税金取ろうとしたら、「製造販売するビールメーカーの反発に配慮」(産経)して見送るんだと。ついでに同時に俎(そ)上に上がったワインや清酒への税も見送り。なんなんでしょ。ま、こっちは課税されなくてホッと一息だけどね。相変わらずポリシーの無い政府自民党やら大蔵省に呆れてしまう人も多いことだろう。でもね、これまでの“慣例”から言えば、1度まな板に上がれば、遅かれ早かれ絶対に税金は掛かってしまうのが常。要は1回話を出しておいて、ジャブを打ち、国民に慣れさせておき、ほとぼりが冷めてから本格的な話を持ち出すと言うパターン、ね。確信犯です、早い話が。数年後には課税されると思っても間違いありません。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/12/05
09:07
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