経営統合を決めた直後から「うまくいくはずがない」と揶揄されていたみずほフィナンシャルグループ(富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行)に対するライバルグループの評価が、最近「もしかしたらうまくいくかもしれない」という警戒感に変わりつつある。そのきっかけとなったのが、持ち株会社「みずほホールディングス(8305)」の設立。3行にとって、いわば“共通の敵”となる持ち株会社の出現で、「3行の交渉当事者の結束が急に固くなった」との見方が出始めている。
●ギクシャクした実務者協議
みずほグループは、経営統合の発表後に始まった3行の実務者レベル協議で、様々な対立が表面化、一時は「いずれ空中分解するのでは」との憶測まで流れた。
最初にグループ内から漏れてきたのが、「興銀のエリート意識」への都銀2行の反発。「興銀の連中は『リテールなどやってられるか』といった態度。いったい何様のつもりだ」というものだった。
次に漏れてきたのが、第一勧銀の意思決定の遅さ。合併銀行の悲しさか、交渉担当者が些細なことまで「持ち帰らないと決められない」と言って逃げるため、「一度の協議では何も決まらない」といった興銀や富士銀の担当者たちの不満が伝わってきた。
また、西洋環境開発や間組(1837)、そごうなどの巨額の不良債権処理問題がしきりに報道されたころは、こうした巨額案件にメインバンクとして関与していない富士銀が「いい気になっている」といったやっかみの声が興銀や第一勧銀サイドから漏れてきた。
●持ち株会社の“エリート意識”
ところが、「みずほホールディングス」が設立されたあたりからグループ内の雰囲気がガラリと変わる。持ち株会社への移籍組が「急にエリート風を吹かせ始めた」(3行関係者)ことが、既存の3行に取り残された形の行員たちの結束を強める結果になったというのだ。
持ち株会社という立場上、ある程度大所高所にたった発言もやむを得ないが、店舗閉鎖や人員削減などのリストラに今後耐えなくてはならない既存3行の行員としては、持ち株会社の「ちょっとした発言に神経質にならざるを得ない」のが実情のようだ。
みずほは今後、ホールセールやリテール、信託、証券などの子会社に再編成され、3行の出身者はバラバラになって、それぞれの子会社へ送り込まれる運命。こうした本格再編後には、現在の「持ち株会社VS.既存3行」という対立軸に加え、「ホールセールVS.リテール」、「間接金融VS.直接金融」といった新たな対立の構図も予想され、むしろ「子会社の内部で出身行別に対立している余裕などないはず」といった指摘も聞かれる。
●警戒強めるライバルグループ
「3行統合という複雑な形を採用したため、逆にグループ内の競争が激しくなって、トータルとしては強力な金融集団になる可能性がある」。こうしたライバルグループの警戒感が現実のものとなるかどうかは、皮肉にも、持ち株会社への移籍組がどこまでエリート風を吹かせることができるかにかかっているのかもしれない。
■URL
・再編マップ(みずほフィナンシャルグループ)
http://www.watch.impress.co.jp/finance/map/bank/note/mizuho.htm
・みずほグループが発足~世界最大の金融グループに
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/09/29/doc560.htm
(舩橋桂馬)
2000/11/24
09:35
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