急成長中のオンライン証券各社と、対面型営業を主体とする“守旧派”の証券業界が、激しい攻めぎあいを繰り広げている。東証の夜間取引計画を巡っては、「時期尚早」とする守旧派が勝利を収め、さらに「新型手数料」を武器に新興勢力への反攻を強めている。
インターネットの爆発的な普及に伴い、従来型の証券会社から大量の顧客が格安手数料のオンライン証券各社に流出。ネット取引最大手の松井証券には2000年4~9月の半年間に、大手3社から実質ベースで1,000万株の株式が流入したとされる。
そこで、従来型証券側は新型手数料で反攻を開始。証券保管振替機構(略称・保振)に目を付け、顧客が保振を通じて株券を他社に預け換える場合、1,000~6,000円程度の「預け換え手数料」を徴収し始めた。
●流出防止狙って
表向きは、「ネット取引の急増で預け換えの請求が増え、事務負担が重くなった」と説明するが、その目的が顧客の流出防止にあることは明らか。「人件費を除くと、実際の経費は数百円」(関係者)というから、“暴利”といわれても仕方あるまい。
先行したのは大和証券。手数料自由化直後の昨年11月、日本証券業協会に預け換え手数料の導入は問題ないかと打診した。従来、日証協は他社への口座振替の際の手数料について「当面徴収しない」(1991年12月の会員通知)としていた。しかし、大和の照会に対し、「(手数料自由化に伴い)91年12月の通知は既に失効している。(預け換え手数料の徴収は)差し支えない」(99年11月の会員通知)との新解釈を示した。
●保険で対抗
日証協のお墨付きを得て、大和は今年1月、預け換え手数料を新たに設けた。料金体系は(1)1銘柄1単位=1,000円(2)2~10単位=1,000円+1単位ごとに500円(3)10単位超=一律6,000円―とした。大和に追随する形で、日興証券(8603)や準大手証券各社がほぼ同様の体系の手数料を相次いで導入した。
一方、オンライン証券側は、保振から株券を引き出すだけなら、預け換え手数料が徴収されない盲点に着目し、反撃に出た。顧客が保振から株券を返してもらい、それを書留郵便で自社に送らせるのだ。郵送中の株券紛失などのリスクがあるため、松井は住友海上火災保険(8753)の書留保険に加入し、10億円までの事故を補償する態勢を整えた。新興勢力と守旧派の仁義なき戦いは、頭脳戦の色彩を濃くしている。
■URL
・証券保管振替機構
http://www.jasdec.or.jp/
・松井道夫・松井証券社長に聞く
http://www.watch.impress.co.jp/finance/report/articles/001013-1.htm
・夜間市場開設を断念~東証、“守旧派”に敗れる
http://www.watch.impress.co.jp/finance/news/2000/11/20/doc1086.htm
(兜太郎)
2000/11/21
11:48
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