郵政省が2001年度予算で要求していた「民間銀行と郵便貯金の資金決済の効率化」の内容が固まりつつある。同省は当初、日銀に郵貯専用の当座預金を開設するなどして、民間金融機関の資金を決済する日銀ネットと直接接続することも検討したが、見送られる公算が出てきた。それに代わり、郵政省と日銀の間に資金決済の情報をやり取りする専用回線を設置。これまで、小切手を運搬して決済している「原始的な仕組み」(日銀筋)を改善することで決着する案が浮上している。
●反目と裏腹の提携加速
郵貯に対しては、全国銀行協会が「民間の補完に徹すべき公的金融が巨大化を続けて民業を圧迫し、自由化の阻害要因にもなっている」と一貫して反目している。今回の問題についても、「日銀ネットは民間金融機関のための決済システムであり、郵貯に利便を提供するのは筋違い」と反対してきた。
しかし、個別行の戦略では、キャッシュカードを使ってショッピング代金を預貯金口座から即時決済する「Jデビット」などの共同プロジェクトのほか、現金自動預け払い機(ATM)の相互開放などを推進。地方の隅々まで店舗網を張り巡らせた郵貯との連携で先陣を争っているのが現実。表向きの対立と裏腹に、膨らむ一方の民間―郵貯間決済を効率化することは喫緊の課題で、日銀は「国民の決済の利便性を高めるという観点から、日銀ネットとの接続も真剣にに考たほうがいい」との姿勢を取りはじめていた。
●原始的「小切手運搬」から前進
ただ、法令で定められた「国庫統一の原則」により、あらゆる政府資金から郵貯だけを分別し、日銀当座預金を開設したり民間と資金決済することは、現状では困難。法律や制度の改正が必要になるのだが、行政改革で、2003年をめどに郵政3事業の公社化が決まっている以上、「いまの段階で根本的な手直しをするのは無駄ではないか」(郵政省筋)という方向に傾いている。
代案として浮上したのが「郵政省―日銀」の専用回線設置により、従来の「小切手運搬」を「電子化」する案。IT時代にはるか後れを取った国庫事務の近代化が、わずかに一歩前進しそうだ。
■URL
・日銀
http://www.boj.or.jp
・郵政省
http://www.mpt.go.jp/
(小倉豊)
2000/11/20
10:27
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