情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●加藤派分裂
僅差で現職破る。今夜の内閣不信任案の採決の帰趨ではない。19日行われた栃木県知事選で、前今市市長の福田昭夫氏が5選を目指した現職の渡辺文雄氏を875票の差で下したという開票結果だ。朝日は、日経を含む5紙が内閣不信任の政局をトップにもってくるなか、意表を突く形で地方首長選をトップにぶつけた(20日付最終版)。現職は共産党を除く自民、民主、公明、自由、保守、自由連合が推薦したいわば「オール与党」の体制で臨んだが、「組織型選挙がうまく機能せず、支持が広がらなかった」。
この結果に対して朝日は、対立が頂点に達している自民党の野中広務幹事長と、加藤紘一元幹事長のコメントをそれぞれ紹介している。「多選とか、年齢問題(渡辺氏は71歳)とかが響いたのではないか」(野中氏)。「自民党の体制だっていうだけでやられてしまった」(加藤氏)と、“倒閣”をめぐって守る方と、攻める方の立場がそれぞれ我田引水している。地方では既存の政治勢力への批判が大きな潮流になっているよ―と言わんばかりの、朝日のこの扱い。でも、中央の政治が正面衝突するこの日に、やっぱり違和感がある。
◇さて、土日も自民党内で不信任案採決への激しい切り崩し工作が演じられた政局は、今日午後6時前には野党4党による不信任案が提出され、午後11時前後に採決、その20分後に結果判明というスケジュールになる。
その帰趨は、混沌としており各紙とも「票固め伯仲」(毎日)、「可否 予断許さぬ情勢」(産経)、「可否は伯仲」(日経)――といった具合だ。土曜(18日)まで可決は「100%大丈夫」といっていた加藤氏も、昨日にはトーンダウン。その加藤派(宏池会)は、主流派からの激しい巻き返しもあって「事実上の分裂」(毎日)となっている。宮沢喜一蔵相や池田行彦元外相ら12人の加藤派衆院議員が19日夜に集まり「池田(派)グループを結成する動き」に(読売など)。個々の政治家の行動は、打算と利害に突き動かされるまさに人間ドラマ。観客席側としては、誰がどんな行動をしたか、せめて後日しっかりチェックしたいものだ。
【IT】
●新ビジネスモデル
ソニー(6758)が、また日本企業で初めてのことをやる――と、日経が1面準トップで報じている。米国では普通になっている「トラッキング・ストック(TS)」を発行するというものだ。これは「特定の事業部門や子会社の業績を対象にした株式」で、ソニーはまず、インターネット事業の「so-net」を運営する子会社、ソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)を対象にTSを発行する見込みという。
ソニー発行の株だが、株価はSCNの業績などによって決まる。こんな回りくどいことをするなら、SCN株を上場すればよいということになるが、経営権を手放さずに事実上株式を公開して資金調達するのがTSのメリットとなる。商法で規定する「種類株」として発行することで、当局も了解することになったようだ。
執行役員制度という人事制度を日本に定着させたソニーが、またひとつ新しいビジネスモデルを構築することになりそうだ。
【トピック】
●ニホンオオカミ発見?
九州の山中で、95年前に絶滅したとされる「ニホンオオカミ」を発見? 読売が、鮮やかな写真とともに、ニホンオオカミに「きわめてよく似た動物」の写真を掲載。撮影したのは福岡県の高校の校長先生。
専門家は「ほぼ間違いない」との見方ともいう。ただ、例の古墳の1件があっただけに、「シェパードと類似」との異論もあると別の意見も掲げている。
一方で、事実なら「世紀の発見」とも。先生は10枚撮影しており、結果はともあれ、ロマンを提供してくれた。ご関心の向きは読売1面を。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/11/20
09:10
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