FINANCE Watch
WTO再開は2001年に~APEC“黄昏族”主導で合意

  アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合は、最大の焦点だったWTO(世界貿易機関)の次期貿易自由化交渉(新ラウンド)の開始時期を「2001年」と明記する首脳宣言を採択し、閉幕した。7月末の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)では、「年内開始が望ましい」との認識でG8各国が一致した新ラウンドだが、既にその目は完全になくなっている。そんな窮状から目を逸らさせるため、日米が中心になって新たな努力目標を拵えた格好だ。

  ●あっけない転換
  APEC首脳宣言に「2001年」という新ラウンド開始時期を盛り込むことには、それほどの造作はなかった。マレーシアやインドネシアなど一部の途上国は時期の明記に消極的だったが、日米や主催国、ブルネイの懐柔に合い、あっけなく方向転換。先立って行われた閣僚会議が終わった段階で既に、「首脳宣言には2001年が盛り込まれることが予測できた」と平沼赳夫通産相は言う。

  もっとも、来年1月に任期切れを迎えるクリントン米大統領。違法賭博疑惑で弾劾裁判を受けることが決まっているエストラーダ・フィリピン大統領。そして退陣論が強まる森喜朗首相。そんな多くの“黄昏族”が集まって、最後の思い出として作ったような首脳宣言なのだから、その中に「2001年」という表現が入ったとしても、それでAPEC各国の新ラウンドに対する取り組みが拘束されるわけではない。だからこそ、途上国も日米などの主張に“おつきあい”したとも言えるだろう。

  ●早くても2001年末
  昨年12月に米シアトルで開かれたWTO閣僚会議は、新ラウンドの交渉対象分野を巡り各国の調整が付かず、結局、立ち上げに失敗した。この交渉分野については依然、WTO加盟各国の思惑が異なる。APEC首脳宣言はこれに関し、「バランスがとれ、十分に広範な交渉分野を2001年のできるだけ早い時期に策定する」という文言を盛り込んだが、もちろんAPEC(21カ国・地域加盟)はWTO加盟国の一部に過ぎず、全体の流れもそうなるとは限らない。

  例えば、米国が乱発する反ダンピング(不当廉売)措置を交渉の場に引きずり出し、乱用防止策に米国が本当に納得するのかなど、山積する問題の多くがいまだ片付いていない。新たな努力目標は掲げられたものの、「実際には早くても2001年末。翌年にズレ込むことも十分にある」(政府筋)との見方が妥当なのだろう。

■URL
・通産省
http://www.miti.go.jp/

(野崎英二)
2000/11/17 15:23