【1面トップ】
　 ●“ノミの心臓”の鼓動が聞こえてくる？
　 朝日＜総裁選前倒し論浮上、自民主流派、不信任阻止狙う、加藤氏、
　　　　　　野党幹部と会談＞
　 毎日＜「国会後に総裁選」も浮上、自民主流派内、不信任案否決、
　　　　　　前提に＞
　 産経＜首相退陣、与党内で加速、総裁選前倒し論浮上＞
　 東京＜「不信任」採決前に決着、進退問題、自民主流派内で浮上、
　　　　　　首相なお続投意欲＞

　 肝心の森喜朗首相は、自身の問題なのに「蚊帳の外」。APEC首脳会議のためブルネイに滞在、日露首脳会談など外交日程を精力的にこなしているが、その胸中は・・・『天声人語』が指摘しているように「うわの空」に違いない。“ノミの心臓”も、当然のことながらドキドキ、破裂しかねないほど高鳴っているはずである。

　 さて、各紙の記事を読み比べると、事態の収拾を巡って様々な憶測が流れていることが分かる。問題はどの報道が正確かだが、永田町政治の「一寸先は闇」。紙・・・もとい「神のみぞ知る」である。

　 現時点では、新聞社の社長や政治部デスクの希望的観測で味付けされている可能性のあるトップ記事を読むよりも、朝日や読売などの3面に掲載されているサイド記事で頭の体操を楽しんだ方がいい。事態が急展開を見せるのは週が明けてからだ。

　 ということで、ほんの少し雑談に付き合っていただきたい。たぶん辞めることになるであろう森首相の後継候補として名前が挙がっているのは、クーデターの張本人である加藤紘一氏のほかに「3K」。つまり、小泉純一郎元厚相、河野洋平外相、そして高村正彦前外相の3人、と新聞各紙は報じている。

　 だが、森、加藤両氏以外の“第3の候補”は本当にこの3氏だけだろうか。最大派閥の橋本派には候補がいないとされているが、小渕政権末期あたりから“冬眠”から目を覚まし、復権の機会をうかがっている橋本龍太郎元首相の再登板もあり得るのでは？

　 「ねえ、紘ちゃん、ボクとキミはともに改革の旗印を掲げているのだから、1期だけボクにやらせてよ。改革の地ならしをしてから必ずキミに譲るから」

　 「どうせ、直ぐに（首相に）はなれないのだから、それでいいよ」

　 橋本、加藤両氏の間でこんなやり取りが行われてもおかしくはない。

　 それからもう1人、早大卒で、政策の話はとんと耳にしたことがないが、「座談の達人」。森サンとの共通項がありながら、なぜか絶大な人気を誇るアノ田中真紀子元科技庁長官の名前も忘れてはなるまい。

　 雑談が長すぎました、ご免なさい。

　 ◇前述したように、政局記事をトップから外した読売は、＜地方空港21港の利用者、大幅に予測下回る、昨年度、19団体が赤字、検査院調査＞と1面トップで報道。日経のトップ記事は、＜公的年金積立金、国内株に12％配分、10年で10兆円超、自主運用、厚生省案＞。

　 【IT】
　 ●IT頼みの成長シナリオの“落とし穴”
　 野村総合研究所と大和総研が15日、2001年度以降の中期経済予測を発表。それによると、実質成長率はIT関連の活発な設備投資などを背景に野村総研が05年度まで平均2.4％、大和総研が06年度まで同2.7％と予想している（読売など）。

　 ITを頼みの綱に明るい未来が描かれてるように見えるが、“落とし穴”も。朝日は、日本経済が抱える「負の資産」、財政赤字を放置しておけば06年度以降、財政は破綻するとする野村の「財政再建先送り」シナリオを前段に持ってきた。同じ発表文でも順序を並べ替えるだけで記事の展開はこんなに違う。

　 ◇三和銀行系のイー・ウイング証券と、伊藤忠などが出資する日本オンライン証券が、来年3月をめどに対等合併することになった。新聞各紙が一斉に報じているが、実はこれ、日経の特ダネ（15日夕刊）です。

　 【トピック】
　 ●内閣支持率3％！！
　 インターネットの選挙情報専門サイト「Election（http://www.election.co.jp/）」が実施している世論調査の中間集計（4,100人回答）で、森内閣の支持率が遂に3.1％にまで落ち込んだ。不支持率も85.4％に上昇。東京は皮肉タップリに「ITを内閣の看板にする森喜朗首相だが、ネット社会からも不信任を突き付けられ」た、と報じている。

　 ネットの話題をもう1つ。これも東京の報道で、「森降ろし政局」を仕掛けた加藤紘一氏のHPへのアクセス数が急増。1日平均で2万5,000件を超えることもあり、11日にはダウンという事態に見舞われたとか。加藤氏のHPのURLは、http://www.katokoichi.org/

　 [メディア批評家　増山広朗]