情報は時とともに劣化する・・・
【1面トップ】
●焦点の人・加藤紘一氏より面白い森首相
朝日、読売、毎日が加藤紘一自民党元幹事長の森首相退陣要求で1面トップを飾っている。「自民主流派 話し合い打開めざす」(読売、都内最終版、以下同)、「内閣不信任発言 加藤派、結束で一致」(毎日)と内容にはそれほど大きな変化はない。ただ、読売は独自のインタビューで「加藤氏、近く財政・経済構造改革を柱とした政権構想を発表、構造改革では民主党などと連携する考え」と、わずかばかりの新しいネタを盛り込んだ。
◇一方、朝日は「激突自民 分岐点」と大見出しを打って「分裂・再編か 党内抗争で収束か」の脇見出しをつけて賑々しい作り。「内閣不信任決議案への衆院の各党・派閥の予想される対応」と題してカラーの棒グラフも添付。本文の内容は終始、これまでの経緯とまとめに徹しているが、パッと新聞を開いたときの見易さは他を圧倒する。気難しく堅苦しい政治ネタではあっても、作り方次第では変化が出る、のサンプルケースといえるかもしれない。
◇加藤元幹事長の動きは日を追ってエスカレートしている。最初は「森首相ではやってられない。国民の立場に立つなら新しい首相と内閣が必要」として内閣不信任決議には欠席するはず――だったのに、わっと騒がれ始めたら(内閣不信任決議に)出席、賛成に変わり、昨日の時点では離党はしないが民主党との連携まで示唆した。しかし、自民党から離れずに野党と連携・・・とは一体、どうやってやるのだろう。
◇こういった本題とはまったく別の次元でウケまくりなのは森首相のコメント。「こんな内紛やらゴタゴタがあるから内閣支持率が下がるんだ」、「今は内紛なんかやっているときじゃないだろ」。皆さんの代弁する言葉を地下鉄車内での会話からピックアップ――「内紛やらゴタゴタするような原因を作る首相だから支持率が下がるんだろ」、「森が首相やっているときじゃないよな」、「森ってさ、やっぱりただの厚顔無恥だよね」・・・う~む、森首相を弁護する言葉も見つからなければ、そうする気も起きません。
◇東京新聞はオーストリアのケーブルカー火災事故の続報。トンネルという密室に近い中での火災は、乗車していた日本人10人を含む159人はほぼ絶望的、とみられている。
トンネル内での火災といえば猛煙による犠牲者と思いがちだが、どうやら猛炎だった可能性が高い。46人が収容された遺体は損傷があまりに激しく、身元の判断も困難な状況だという。異国の地の果てで我が子、妻、夫、愛する人を亡くした人たちが現地に到着。死はいつも身近にある。とはいえ、旅情あふれ美しい連峰のかの地での事故を、遠く離れた日本で誰が予想し得ただろうか。
【IT】
●ベタ原稿集めりゃトップ記事
日経が1面トップで「NTT、相次ぎ値下げ」と報道。NTTドコモが来週に最大21%引き下げるのを皮切りに、東西地域会社は来年1月に市内電話料金を3分10円から9円前後に、またNTTコミュニケーションズも値下げの検討に入った、としている。なんだか日常的に分かる範囲内の推測やら予定調和的な話を上手くまとめただけに過ぎないような内容ではあるのだが、「ベタ原稿集めりゃトップ記事」の典型的な例かも。ただ、本文中には「各社が同時期に大幅値上げに踏み切るのは異例で、背景には電通審で進んでいる同社グループの再々編論議をけん制することも大きな狙いがある」と理由付けしている。
ん?ちょっと待て。11月、1月、来年それぞれの値下げなら3カ月から半年以上かけてのもの。こういうのなら過去にもあったはず。物事の取りようでどんなふうにでも記事は書ける。
【トピック】
●それ、取得してどーすんの?
「自社ドメイン獲得できず」。今月10日から始まった日本語ドメイン名の受付が混乱していると読売が報じている。受付直後から申し込みが殺到し、「日本生命.com」や「資生堂.com」は取得できなかったというもの。当事者ではない第三者が取得したとみられ、米国などで問題になっている“有名ブランドドメイン先取り・売りつけ”につながるかも、と警告を発している。
う~む。米国で話題になった先取りだが、もはやこんなことする輩はいないだろうと思っていたら、やっぱりいたのね、そういう人。あ、いや、別に問題にしようと思って有名企業のドメインを先取りしたかどうかなんて分からないけど、「資生堂.com」なんて一般庶民には必要ないよね。疑われてもしょうがないってば。
[メディア批評家 増山広朗]
■URL
・瓦版一気読み バックナンバー
http://www.watch.impress.co.jp/finance/kawaraban/index.htm
2000/11/14
08:54
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