京都きもの友禅
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☆☆☆
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ビジネスモデルの優位がもたらす長期的な成長持続
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業界で唯一「振袖」を主力とする呉服チェーン店。呉服業界は、1993年のピークから60%程度まで市場が縮小し、信用不安が蔓延している。そのなかで一時的な特殊要因を除けば増収増益を続け、経常利益率14%超(2000年3月期)の高収益・健全な財務体質を誇る。
振袖は、成人式対象女性の減少とともに総需要の逓減が見込まれるうえに、成人式のスタイルが変化する可能性もある。さらに、初めて購入する呉服である場合が大半であることや他の呉服と比較してファッション性や鮮度が問われることから、高度な仕入れ・販売ノウハウが不可欠な難しい商材。このように、環境や商材としての特徴から、当社の「振袖特化」の戦略は一見すると著しく優位性に欠ける。しかし、それでも敢えて「振袖」に注力して圧倒的なシェアを確保しようとする戦略は、環境的な逆風が参入障壁となることも見越した、戦略的なパラドックスアプローチといえる。ただし、ハイリスクな戦略であるだけに、完成度の高いビジネスモデルが欠かせない。
駅ビルや百貨店への出店が常識とされるなか、安価なオフィスビルに出店。対象女性へのダイレクトメールのみによる販売促進活動で来店を促し、十分な接客を通じて高い成約率を実現している。長期手形が慣習の業界にあって、メーカーからの「直接・現金・買取」仕入れに移行。スケールメリットとともにこうした取引条件が決め手となって仕入価格の引き下げを実現し、市場価格の半額で販売している。
さらに、主に振袖購入者の母親が加入する「友の会」制度に基づく振袖以外の販促、振袖購入者の将来の婚礼需要も取り込んでいく、という展開もある。このように、ビジネスモデルはあらゆる角度からハイリスクな戦略を支える完成度の高いものである。完成度が高く安定的なビジネスモデルの優位がもたらす長期的成長持続への信頼から、株価は一段と評価を高めよう。
岡三証券企業調査部アナリスト
渡辺 勇仁
☆印は筆者あるいは筆者が所属する会社の判断を、☆の数に置き換えたものです。
証券会社等によって基準の違いはありますが、おおむね「☆☆☆」は「強気買い」、
「☆☆」は「買い」、「☆」は「保留」に相当します。
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